「えぇー! そんなバカな!」
遊園地でのできごとを、次の日のうがっこでれんとともやとまさやとみずほに話した。
何事もなかったことに、れんが驚き、みずほはほっとした顔をしていた。
みんな心配してくれていたんだな。
やはり俺のパーティ―は最高だ。
最近は俺のパーティ―にまさやも入っている。
まさやとみずほは、土日に社交ダンスの練習をしていたらしい。
そのことでみずほがバツの悪そうな顔をしたが、俺は別に気にしていない。
そっちが大事なのも理解できるしな。
それにまさやは、みずほと二人きりになりたかっただろうし。
「でもお金を払わされるとかなくて良かったね」
ともやは本気で心配してくれていたようだ。
それは本当にそう。お金を取られると思っていたので、騙されていたわけではないことに心底ほっとした。
すると、教室のドアが空いてみゆうが入ってきた。
それだけで、心臓が飛び跳ねた。
「おう」
それだけ言ってみゆうは通り過ぎて行った。
みゆうとのことは言っていない。
理由はよく分からないからだ。
だが、手を繋いでしまった。そのことを思い出すとドキドキする。
俺は、みゆうのことが好きなのか?
いやいや。俺はミサキと付き合ってるんだから浮気はしないぞ!
プルプルっと顔を左右に振って、顔を上げるとれんとともやが驚いた顔をしていた。
「本当なんだな」
れんが言う。
ん? 何が?
「ごめん」
ともやが謝ってくる。
ん? 何が?
困惑していると、まさやが教えてくれた。
「正直、勇者君の言うことを半分信じられていなかったんだよ。だってさ、ほら。系統が違うじゃん?」
少し言いにくそうに正直に教えてくれた。ありがたい。
確かにそうだ。よく考えれば、俺が強がって何もなかった。と言っている可能性だってあるわけだ。
しかも彼女の存在も内緒にしているしな。
それが、さっきのみゆうの挨拶だけで確信できたということなのだろうか?
「みゆうちゃんって、本当に仲のいい人としか喋らないので有名だもんね」
みずほも驚いている。
そうだったのか。確かに仲良し以外と話しているところを見たことがないな。
つまり俺は、みゆうと仲良し認定されたわけだ。そんでもってパーティ―のみんなからもそういう目で見られたということか。
「でも本当に何もされてなくてよかった」
心底安心したようにみずほが言う。
半獣のくせに優しいところあるじゃないか。
しかしみずほに心配される必要はない。お前はまさやと踊っていればいいのだ。
「み。みんな心配してくれてありがとう……」
俺はパーティ―みんなに素直にお礼を言った。
●
「はぁー? ガチぃー?」
うちがある宣言をすると、さくらが驚いた。
まぁ案の定の反応だけどね。
うちは、自称勇者のことを、もう少し様子を見ると言ったのだ。
「何? 情でも移った?」
ミズナも心配している。
「いやー。普通にあいついい奴なんよ。だから社交ダンスは普通に踊るし、何も問題なければネタバラシもしない」
「ちょっとみゆう。よく考えなよ? あんなのだよ?」
ミズナはホントにあいつのことが嫌いなんだね。ま、気持ちは分かるよ。
「んまぁ本気ってか。好きってわけじゃないんだけどね。いい奴だからある程度は仲良ししようかなーって」
「何があったの?」
さくらが目を丸くする。
「んー。あいつさ。遊園地に誘ってくれてありがとう。ってお礼言ってきたんだよね。真面目すぎてさ、しかも優しいところあるし」
「あいつがいい奴なのは俺も認めるわ」
ゆーただ。意外とゆーたは自称勇者のことを気に入ってるんだよね。
「俺の話しも黙って聞いてくれるしな」
「それはゆーたの話しについていけないだけでしょ」
「それにお礼だって、単純すぎるだけでしょ? 普通からかわれてるって思おうでしょ?」
「しかも本当に付いてくるしマジキモいよ」
「私なんておはよう。とか声かけられたからね」
「もごもごしてて何言ってるかよく分かんないし、ほんと全てがキモいよね?」
さくらとミズナがギャーギャー言ってるけど、うちの気持ちは変わらない。
ゲームでうちのことを庇ってくれたし、うちが一人でつまらなそうにしていると傍でどうでもいい話しをしてくれたしね。
眼中にすらなかったけど、そういうことをされたならお礼はすべきでしょ。
付き合うとかじゃないけど、少しは仲良くしてあげないとね。
●
自称勇者は休み時間にみゆうと話しをしていた。
その間にれんとともやとまさやが、ひそひそ話をした。
「どう思う?」
れんが単刀直入に聞く。
どう。とは自称勇者のことだ。
たどたどしい話し方をしているのに、ゆーた達と仲がいいのが不思議で仕方ないのだ。
「特にあの子と仲良いと思わない?」
ともやが、あの子と言ってみゆうを顎でしゃくる。
あの子。と表現したのは特に深い意味があるわけではないが、名前を呼んだら仲間に怒られそうだから名前を呼ばなかったのだ。
「みずほさんはどう思うんだろう?」
まさやのこの言葉の通り、れん、ともや、まさやはみずほの気持ちに気づいている。
「みずほちゃんはいい子だから、きっと勇者の気持ちを優先するんじゃないかな?」
ともやはよく人を見ている。
「俺もそう思う」
慌てるようにれんが同意する。
れんは、悪い奴ではないのだが、こういう調子がいいところがある。
「とゆーよりも」
とれんは続けてまさやを見る。
「まさやくんはどうするの?」
れんとともやは、まさやの気持ちにも気づいていた。
「正直、勝ち目があるかどうか……」
少し照れ臭そうにまさやが言う。
「この前一緒に過ごしたけど、彼女の気持ちは僕にはないから」
「やっぱりか……」
れんが、そうなの? と聞こうとしたら、ともやがそう言った。
「みずほちゃんは、ずっと勇者一筋だもんな」
他の男に見向きもしないと。
その言葉を聞くが、れんはまだ納得できずに、聞いた。
「でもさ。全くなびかないの?」
一緒に過ごして、気持ちが全く動かないことが不思議で仕方ないのだ。
「みずほさんにとって社交ダンスの練習は、あくまでも学校行事でしかないんだ。一緒に買い物行ったりもしたけど、話すのは勇者君のことばかりだよ」
それじゃあ勝ち目は全くない。諦めるしかない。れんもともやもそう思ったが口にはしない。
「それでも僕は諦めないけどね」
まさやの言葉にれんもともやも驚いて、目を丸くした。
まさやにそこまでの情熱があるとは知らなかったからだ。
いつも優等生で、真面目くんで、恋愛など興味がないと思っていた。
それが一度火が点いてしまうと、ここまで真っすぐになってしまうようだ。
まさやとともやは、自称勇者の方を見た。
自称勇者の隣にはみゆうがいて、仲が良さそうにも見える。
●
「ふーん。異世界ねぇー」
俺の話しを聞いてみゆうが不思議そうな声を出す。
不思議に思いたいのは俺の方だよ。
突然、勇者って何? なんて聞いてくるものだから、詳しく説明してしまった。
「で、こーゆー本にそういう異世界転生ってやつが出てくるんだ?」
こーゆー本と言いながら、俺が貸したラノベを持つ。
「そ。そうなんだよ。異世界転生ってのは、主人公がげ、現実世界でし、死んだ場合で。死んでない場合は、い異世界転移って言うんだ」
「はーん。詳しいね。うちにはさっぱりわかんないわ」
考えるつもりもないんじゃないか?
でも話しを聞いてくれるし、今日は一度もキモいと言われていないぞ?
本当にみゆうは、俺と付き合っているつもりなのかもしれない。
俺にはみさきがいるけれども……
ちらりとミサキの方へ目をやると、ミサキとダイキが口げんかをしていた。
ギルドのみんなからも注目を浴びている。
「あー。最近あの2人多いねー」
俺の視線の先をみゆうも見ながら言う。
そうなのか? あの2人は最近けんかしまくっているのか?
「そろそろ別れんじゃね? ダイキが浮気性だし」
思わぬ情報だ。
どうやらみゆうもあの2人は付き合っていると思っているようだが、そこは置いといて。
そうかそうか。ダイキは浮気性なのか。
そうならば、俺がようやくダイキの魔の手からミサキを救えるな。
「んでさ」
みゆうが話しを戻す。
「うちのスッピンどうだった? 結構自信あったんだけど」
「きれいだった」
正直に答えた。
「え?」
みゆうの顔を見ると頬を赤らめた。
ん? 聞かれたから答えただけだぞ?
それにみゆうは、こんな恥じらうようなキャラじゃないだろ?
俺の目を真っすぐ見つめてくる。
これは、俺に何か続きの言葉を求めてるのか?
「えっと……し。失礼かもしれないけど。他の人は化粧を落とすと、だ。誰だか分からなくなったけど、み。みゆうさんはスッピンでも変わらない程きれいだったから、正直、け。化粧は必要ないかな……と思います……」
みゆうは満面の笑顔を俺に見せてくれた。
「みゆうでいいよ」
ボソリとそんな言葉が聞こえた気がした。
