shiyu

どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第11娯楽~

その女性は城門前で立ち止まっていた。 白を基調とした法衣。 柔らかく結われた金髪。 背筋の伸びた立ち姿。 見る者が思わず息を呑むほど整った存在感。 誰が見ても分かる。 ――聖女だ。「……ここが、噂の魔王城……」 声は静かで、澄んでいて、柔ら...
フラ壊

『クラス最底辺の俺、触れたヒロインの死亡フラグが見えるんだが助けたら世界が壊れそう』 ――助けたいだけなのに、選択肢が残酷すぎる~第13花 見てはいけない文字~

教室は、昨日までとはまるで別の場所になっていた。 空気が重い。 笑い声がない。 誰もが、どこか余所行きの顔をしている。 ヒヤシンスの席は、空いたままだった。 担任は「しばらく入院になる」とだけ告げた。 命に別状はないらしい。 ――それでも。...
フラ壊

『クラス最底辺の俺、触れたヒロインの死亡フラグが見えるんだが助けたら世界が壊れそう』 ――助けたいだけなのに、選択肢が残酷すぎる~第12花 それでも、手を伸ばさなかった~

朝から、ノートのページが重かった。 開いていなくても、わかる。 書いてある。 もう、書かれてしまっている。 アスターは机に頬杖をつきながら、クラスを見渡した。 いつも通りの教室。 いつも通りの笑い声。 いつも通りの空気。 ――その中に、ひと...
フラ壊

『クラス最底辺の俺、触れたヒロインの死亡フラグが見えるんだが助けたら世界が壊れそう』 ――助けたいだけなのに、選択肢が残酷すぎる~第11花 それは、ほとんど成功だった~

屋上は、放課後になると静かだった。 風が強く、金網がかすかに鳴っている。 夕焼けが、すべてを赤く染めていた。「……来ると思ってた」 アスターは、振り返らずに言った。 背後で、扉が閉まる音がする。「だって、あの顔だったもの」 軽い声。 楽しげ...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第10娯楽~

勇者はもう地図を見なくなっていた。 どの通路を曲がればどこに出るか。 どの階段を降りればあの休憩室に着くか。 どの扉の先にあの魔族がいるか。 全部身体が覚えている。「……慣れって怖いよな」 独り言のつもりだった。「何が、でしょうか」 すぐ後...