どうせ勝てない魔王

どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第11娯楽~

その女性は城門前で立ち止まっていた。 白を基調とした法衣。 柔らかく結われた金髪。 背筋の伸びた立ち姿。 見る者が思わず息を呑むほど整った存在感。 誰が見ても分かる。 ――聖女だ。「……ここが、噂の魔王城……」 声は静かで、澄んでいて、柔ら...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第10娯楽~

勇者はもう地図を見なくなっていた。 どの通路を曲がればどこに出るか。 どの階段を降りればあの休憩室に着くか。 どの扉の先にあの魔族がいるか。 全部身体が覚えている。「……慣れって怖いよな」 独り言のつもりだった。「何が、でしょうか」 すぐ後...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第9娯楽~

次に現れたのは、勇者ではなかった。 鎧ではなく、軽装。 剣でもなく、杖でもない。 腰に下げているのは、小さな道具袋とノート。「……ここが、本当に魔王城?」 入口の前で、少女は首を傾げていた。 名はルノ。 職業――調査士。 魔物を倒す者ではな...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第8娯楽~

その勇者は、最初から不機嫌だった。「……で? ここが例の魔王城?」 ダンジョン入口で腕を組み、壁にもたれたまま動こうとしない。 見ただけで不機嫌だと分かる。 装備は一級品。 立ち姿に隙がなく、視線だけで周囲を測っている。 ――手練れだ。「噂...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第7娯楽~

勇者たちが集まる街の酒場は、今日も騒がしかった。「なあ、聞いたか?」 酒をあおった冒険者が、声を潜める。「この前来た勇者がさ……魔王城から、帰らなかったらしい」「は? 死んだんじゃなくて?」「いや、生きてる。 剣も折れてないし、呪いも受けて...