勇者は発情中~第二十九エロ 蠢く洞窟~

勇者は発情中

後から分かったことだが、ちあは男に触れると妊娠すると思い込んでいたようだ。

「ま。勘違いって分かって良かったじゃない?」

くすくす笑うが、その間違った知識を教えた張本人がティーパンだ。

男に触れても妊娠しないと分かったちあは、助態にひっついて離れない。

「お子ちゃまに嫉妬する程私は子供じみてないわよ?」

くびちはそう言って、オホホホホーと高笑いをする。

助態の片腕はちあが占領し、逆の手はくびちの胸が押し当てられている。

「むー。おっぱいぱんちなのじゃ!」

ちあが下からくびちの胸をぱんちした。

「オホホホホー。あなたにこんなことができて?」

くびちがちあをからかうためだけに、助態の腕を胸で挟んだ。

「むー。いけ!ルブマ!」

貧乳同盟のルブマをご指名だ。

「ふぇ?私ですか?」

いつもなら、胸がないのはアーチャーの宿命だと言っているルブマも、ちあの積極性に多少のヤキモチを覚えているようだ。

「わ、私は…くびちさんのような胸が羨ましいので…」

尻すぼみではあるが、貧乳同盟は受け入れていないようだ。

「なぬ!ルブマの裏切り者~!」

助態たちが歩く草原にちあの叫び声が響く。

「相変わらず緊張感ないわね。」

ふ。とティーパンが言うが、どうやら悪いとは思っていないようだ。

今メンバーはガイラの町の東方面にある草原を進んでいる。

前回まで歩いていた森とは違い、視界は広い。

「まぁ、アタイたちはいつもこんなんだけどね。」

時と場合を選ばない。ともふともが正直に言う。

「いいんじゃない?普通はモンスターに警戒して進むからこんな賑やかなことはないんだけどね。きっと勇者のおかげなんだろうね。」

ちらりと助態を見ながらティーパンが言うと、隣を歩くもふともも頷いた。

「確かに、アタイらが助態を迎えにカローンに行った時は、モンスターに警戒しながら歩いてたっけ。」

「ま、それが勇者の仕事ってことなんだろうね。」

ふふふ。とティーパンが珍しく笑顔を見せる。

「メンバーを賑やかにすることが仕事なのかい?」

よくわかんないねぇ。ともふともが考え込むと、その内わかるわよ。と言われた。

目的地である箱の庭園の場所は、ガイラの町でも分からなかった。

「このまま東に進んでいて合ってるのかしら?」

ふとした疑問をティーパンが投げかける。

「合ってるんじゃないのかい?」

もふともの返事は適当だ。

フォレストの村を東と言われたのだから合っているのだろう。という単純な考えからきている。

「私の記憶が正しければ、この先は船の墓場って場所にたどり着くはずよ。」

「アンタ、こっちには来たことがないんじゃないのかい?」

さっきティーパンは、ガイラの町の東側には来たことがないと発言していたことを、もふともは言っているのだろう。

「えぇ。ないわよ。船の墓場って危険度C以上のモンスターがうじゃうじゃいるのよ?いくら私とちあがいても、モンスターの数が多ければ負けるからね?」

ティーパンが忠告をする。

「うげ。モンスターがうじゃうじゃは勘弁してほしいなー。どうする?」

ピタリと歩を止めてもふともが後ろでちあと遊んでいる助態に訊く。

「わざわざ危険な道を通る必要はないんじゃないか?迂回できるなら迂回した方がいいと思うけど?」

なーなー助態ー。とちあに絡まれながら助態が言い、進路を北に変更した。

このままある程度歩いてから再び東に進路を取れば、船の墓場を通らずに通過できるだろうということだ。

しかし、この選択が完全に裏目にでてしまうのだった。

「誰だよ迂回しようなんて言ったのは。」

もふともが暗闇の中で悪態をつく。

「悪かったな!みんなだって賛成しただろ?」

同じく助態が暗闇の中で反論する。

口の中がやや酸っぱいのは今しがたもふともの太ももの上に戻したからだ。

「痛っ!誰かちあの足を踏んだのじゃ。」

「ちあちゃんごめんなさい。」

ちあに純純が謝る。

助態たちは順調に草原を北上していた。

あまりにも順調すぎた。

目の前の洞窟を通り抜けたら進路を再び東に取ろう。そうみんなで話して洞窟に侵入した瞬間、それはきた。

洞窟が揺れたのだ。

縦に横に斜めに垂直に揺れた。

絶叫系が苦手な助態がリバースした場所はなんと、もふともの太ももだった。

それでさっき怒られていたのだ。

とにかく真っ暗闇で何がなんだか分からなかった。

更に今いる場所が密封されている場所ならば、火を点けるわけにもいかなかった。

火を点けると、中の酸素がなくなる可能性があるからだ。

「それより何で洞窟が動くんですかね?」

ルブマが目をグルグルさせながら言う。

「そんなのアタイに言われても知らないよ!」

洞窟内を縦横無尽に転がりながらもふともが言う。

「もうダメだぁー。」

助態が2回目のリバースをし、今度はぱいおの胸にぶちまけた。

「何やってんすかキングコブラさん!」

ぱいおが助態のことを自ら名付けた助態の股間の名で呼ぶが、助態はそれどころではない。

「悪いが今ぱいおに突っ込んでいる余裕はない…」

おえ。と助態が口元を抑える。

ぱいおは純純に汚されたっすー。と言い、純純は大丈夫ですか?と助態とぱいお2人の心配をしている。

「こんな洞窟。さすがの私でも見たことも聞いたこともないね。」

ティーパンが眉をひそめる。

「さっさと進みましょう。」

リバースしたことで元気を取り戻した助態がスタスタと先を歩くと、再び洞窟が揺れて蠢いた。

そして助態は3度目のリバースを今度はルブマの股間に見事にぶちまけた。

「アンタは何でいちいち人にぶっかるんだい!」

「そうっすよ!ぶっかけるのは助態さんのキングコブラから発射される液体だけで十分っすよ!」

もふともとぱいおがルブマの股間を拭きながら怒る。

どうやらこの2人はもう、この蠢く洞窟に慣れたようだ。

一方のルブマは、助態にぶちまけられてきゃっ。と驚きもふともとぱいおに股間を拭かれて再度きゃっ。と驚いていた。

「どちらにしろ、早くこの洞窟を抜けたいね。私たちが歩くたびにこう動かれたんじゃ平衡感覚を失う…」

かと言って下手に召喚獣を出せないジレンマがティーパンを襲う。

ちあも同様にこの有り得ない状況にうろたえている。

それでも気持ちを引き締め、魔力を温存している点はさすがだった。

洞窟が止まっているタイミングを見計らって助態たちは進むしかなかった。

「アンタもっとそっと歩けないのかい?!」

もふともが後ろを歩く助態を叱責する。

「だってこの洞窟かなり歩きにくいんだぜ?」

言い訳がましく助態が言うが、確かにこの洞窟は変だった。

何度かの洞窟の揺れでようやくこの洞窟の仕組みが分かってきた。

どういう仕組みかは分からないが、この洞窟は中を通っている人を感知して蠢くようだ。

だからみんなは、感知されないようにそっと歩くことにしたのだが、何しろ普通の洞窟内と違って地面が柔らかい。

その柔らかさは本当に地面なのか疑うレベルだ。

歩を進めるたびに、

「ぐにょ。ぶに。」

という実に気持ち悪い感触が足に伝わる。

「これ、本当に地面なんですかね?」

気持ち悪い感触に純純が疑問を持つ。

「確かにめっちゃ歩きにくいっすよね。――うわっ!」

そう言って地面を触ったぱいおが呻いた。

「どうしたんだい!?」

もふともが驚き聞き返す。

瞬間、目の前に謎の液体に濡れたぱいおの手が現れた。

「なっ…んだいこれは?」

目の前に差し出されたぱいおの手は、ただ濡れているわけではなく、その液体は粘性を持っていた。

ベタベタぬめぬめヌルヌルテカテカしていて実に気味が悪かった。

「ちょっと見せて。」

先頭を歩いていたティーパンが歩みを止める。

ぱいおの手を持ってまじまじと見たティーパンが呟く。

「これは…」

「どうしたのじゃ?」

ちあが小首を傾げ、ティーパンがそれに応えようと口を開くと、洞窟の外から別の声がした。

「あんらぁ~?人食いねぇー。」

言葉遣いは女性だが、明らかに声は男のものだった。

ちあとはまた違った形で喋り方に特徴のある者が洞窟の外にいるようだ。

「誰かいるのか?」

外に向かって助態が叫ぶが反応はない。

「…空耳だったのか?」

助態が他のメンバーを見るが、どうやら全員があのおかま声を聞いたらしい。

「私は外から声が聞こえた気がしましたけど、もしかして同じ洞窟の中にいるんですかね?」

ルブマがキョロキョロ見渡しながら言う。

「私も外から聞こえたわよ?」

くびちもルブマと同意見だった。

助態も確かに外から聞こえた。

「もしかして、外には声が聞こえにくいのかしら?」

少し考えながらアンアンが言うが、結論は出なかった。

そんなことよりもとちあがティーパンに声をかける。

「先ほどぱいおの手を見て何か言おうとしておらんかったかの?」

ちびっ子のちあがティーパンを見上げる。

「え?あぁ。そうね…考えにくいことなんだけど」

ティーパンが続きを話そうとしたら、再び洞窟が揺れた。

「いい加減にして欲しいね!」

揺れが収まった時にもふともが悪態をつく。

後頭部を擦っているところを見るとどうやら頭をぶつけたようだ。

「この人食いはなかなかにでかいわねぇ~。」

再び先ほどのおかま声が外から聞こえる。

「!やっぱり外から聞こえる!」

助態がみんなに言う。

全員が顔を見合わせて頷く。

「早くここから出るのじゃ。」

良くは分からない。

理由を挙げるならただ何となく、勘としか言えないが何となく早く洞窟から出た方がいいような。そんな予感が全員にはしていた。

外から聞こえるおかま声も、何となく自分たちをこの洞窟から助け出そうとしているように感じたのだ。

更に――

目の前にやや黄色がかった池が現れる。

池はポコポコと泡が立ち、何やら不気味な雰囲気を出している。

「気をつけろ!その池、酸かもしれないぞ!」

先を歩くもふともにティーパンが鋭く注意する。

「酸?」

立ち止まってもふともが振り返る。

「あぁ。まさかとは思ったが、この池で確信した。この洞窟はどうやらモンスターの腹の中のようだ。さっきぱいおの手が濡れていただろ?あれは食道辺りのぬめりや唾液だろう。」

「ってことはこの池は?」

聞かなくても助態はその答えが分かっているような気がした。

「胃酸だろう。」

重苦しくティーパンが助態に答えた。

生暖かい風が洞窟内を吹き抜けたような気がした。

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