デビルブレイブ城~第3勇者 VS!水色の牛~

デビルブレイブ城

 助けた女性の名はアイナという名前だった。

 水色の牛が何度も突進してくるのを、3人は辛うじて避ける。

 アイナは特に体力も力も無いようだった。

「アイナはどんなことができるの?」

 何度目かの突進を避けた後に少女勇者が聞く。

「道具を・・・・・・調剤して、薬を・・・・・・作ることです……」

 何度も避けたからか、途中で息切れしつつアイナが答える。

「それって今は無理なんすか?」

 水色の牛の注意を引きつけながらラッカーが喘ぐ。

「い、今ですか?」

 アイナが辺りをキョロキョロ見渡す。

 あ、と声を漏らして付近に生えていた草を摘み始めた。

「?」

 その様子を少女勇者は不思議そうに見る。

「気をつけてください!」

 水色の牛がアイナへ向かって鼻息を荒げるのを見てラッカーが叫ぶ。

「守ってあげて!」

 少女勇者がラッカーへ無茶な注文をする。

「くっそぉー!」

 そう叫びながらラッカーが水色の牛の目の前に躍り出た。

 この時、ラッカーは騎士の誇りというアビリティを発現していた。物理防御力が上がる単純なアビリティだが、物理攻撃ばかりしてくる水色の牛には有効だ。

 そのまま盾を掲げて突進を防ぐ。

「くらえぇー!」

 突進を防いで水色の牛が動きを止めた瞬間に、騎士剣で牛の角を切った。

 ナイトブレードと呼ばれる通常よりも強力な斬撃攻撃だ。

 ラッカーは感情が高ぶった時にだけ、スキル、ナイトブレードとアビリティ、騎士の誇りを発現できるようだ。

 しかし水色の牛もそう簡単にはやられない。

 2本ある角の1本はラッカーに切られたが、そのことが更なる怒りを買ってしまったようだ。

「あ、あら~。どうやらお怒りのようっすね」

 ラッカーの額から冷や汗が流れ落ちる。

 ●

 水色の牛の突進攻撃のスピードが上がった。

 さっきまで辛うじて避けていたラッカーだが、運動神経がいいからなのか、水色の牛の攻撃のスピードが上がっても受けずに避けれていた。

 角を切られた水色の牛は、攻撃対象を完璧にラッカーに絞っていた。

 最も、このスピードで動かれるとアイナも少女勇者も手も足も出せれなかった。

「勇者殿~。何とかしてくださいよ~」

 ひぃー。と突進攻撃を避けながらラッカーが情けない声を出す。

「そいつのことまた止めてくれれば何とかなるかも!」

 再び少女勇者から無茶な注文が飛ぶ。

「もう無理っすよ。さすがにこのスピードを止めようとしたら俺死んじゃうっす!」

 首をぶんぶん左右に降ってラッカーが拒否する。

 それもそうだろう。走っている車を生身で止めろと言われているようなものだ。

「できました」

 そんな2人のやり取りを耳の端で聞きながらアイナが薬を完成させた。

 見たところ、小さな小瓶に入った緑色の液体だ。

「それは?」

「飲ませることで、体に痺れを起こす薬です」

 少女勇者の問にアイナが答える。

 しかし、このスピードで走る水色の牛に薬品を飲ませることは不可能に近いだろう。

 そもそも飲んでくれるかすら不明だ。

「それは大丈夫です」

 疑問に思う少女勇者の表情を読んでアイナが付け足す。

「飲めば神経に作用して体に痺れを起こしますけど、体表にかけることでもそれなりの効果があります」

「そ、それなりの効果ってどんな効果なんすか?」

 水色の牛に追われながらラッカーが聞く。

「動きが鈍ります」

 即答だった。

 動きが鈍るくらいでどれ程の役に立つのか少女勇者には分からなかった。むしろ、正直それが役に立つとは思えなかった。

 しかしラッカーは違ったようだ。

「じゃあそれをさっさとこいつにかけてくださいっすー!」

『動きが少し鈍くなるくらいで何とかなるって思ってるのかなぁ?』

 そんな疑問を抱きつつも少女勇者はアイナから薬品を受け取る。

「すきを見つけて私がこの薬品をかけるから、アイナは別の薬を作ってみて」

「別の……ですか?」

 アイナがキョトンとして聞き返す。

「うん。例えばあの長くて硬い指を溶かす薬とか、何だったらかけたら倒せるようなやつとかさ!」

「それは無理ですね」

 笑顔で言う少女勇者にアイナが即答した。

「かけただけで倒せるとなると毒物が考えられますが、触れただけで皮膚の下にまで浸透する、そんな強力な毒物あり得ません。溶かすくらいなら何とかなりますが、そこらに生えている草木だけではなく化学薬品が必要になります」

「そ、そうなんだ……」

 そもそもあれだけの巨体を溶かすとなると……などとブツブツアイナが言い出したので、とりあえず何か役立ちそうなもの調剤よろしく!

 と言い置いて少女勇者は走り出した。

 ●

 ラッカーが水色の牛の注意を引き付けている間に、少女勇者は近くの草むらに背たけを低くして何とか隠れた。

 視界の端にそれを捉えたラッカーが、徐々に水色の牛を少女勇者が隠れた草むらの近くに誘導する。

 ここで注意しなければならないのが、水色の牛が突進で草むらに突っ込まないようにすること。

 つまり、草むらから一直線上にラッカーが立たないように立ち回らないといけない。

『ベストなのは、勇者殿が潜んでいる草むらのほぼ真横でこいつが方向転換をすることか……』

 ラッカーがそう考えるように、方向転換の時はさすがの水色の牛も動きが止まる。

 そこを狙えば薬品を容易に浴びせることができる。

 じりじりと草むらとの距離を縮める。

 ギロリと何度目かの水色の牛の睨みがあった後の突進で、草むらの真横に水色の牛が付けた。

 ――今だ!

 少女勇者とラッカーが同時にそう思い、少女勇者はアイナが調剤した薬品を水色の牛に小瓶ごと叩きつけた。

「バリンッ!」

 巨体の水色の牛に対して薬品はあまりにも少量に見える。

 少女勇者が薬品をかけた箇所は、水色の牛の右前足。

 それが功を奏したのか、水色の牛の動きはみるみるうちに鈍くなった。

 しかし動きは鈍くなっても、力は相変わらずな上にそれなりの速さもある。加えて指の硬さは健在だ。

「こっちに!」

 アイナが別の薬品を完成させ、自分の足元で割った。

 アイナに呼ばれた少女勇者とラッカーは、急いでアイナの元へ向かう。

「これは?」

 強烈な刺激臭に顔をしかめながら少女勇者が問う。

「モンスターが嫌がる香りの薬品です。これで水色の牛が私たちから逃げてくれると思って」

「なるほどっす。今の俺たちじゃあの水色の牛には勝てないから向こうに逃げてもらうってことっすね?」

 ぽん。と手をラッカーが手を叩くと、はい。とアイナがにこりと微笑んだ。

 アイナの見込み通り、水色の牛は少女勇者たちから逃げて行き、湧き水の中へと潜って行った。

「やれやれっすね」

 ふぅ。と息を吐きながらラッカーが言う。

 先ほど切り落とした水色の牛の片方の角を拾い上げた。

「一応、討伐の証になるっすかね?」

「え?まだ討伐してないじゃん」

 ちゃっかり討伐報酬を貰おうとするラッカーに少女勇者が鋭いツッコミを入れる。

「あいつ絶対脅威度高いっすよ? 討伐報酬貰いましょうよー」

「だーめ。嘘はダメです」

 ぴしゃりと少女勇者に言われて、ラッカーはそんな~。と泣きまねをした。

 アイナはそんな2人を見て微笑んだ。

 この2人となら冒険をしてもいい。そう思えた――

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