破綻寸前ギルドを追放冒険者のゴミ拾い能力が救います~第10ゴミ拾い 流星~

ゴミ拾い

 薄暗い部屋の中では密談が行われていた。

「寂静村がおかしい?」

 暗がりの中なので顔は良く見えないが、声質からしてやや年老いた男性だろう。

 正面に座っているのはその部下だろうと思われる。

 何しろきちんと正座をしているのだから。

「あそこは我々ギルドの玄関口だ。あそこが落とされると一気に崩れるぞ」

 最初の男が立て続けに言うと、正座をしていた男が初めて口を開いた。

「提案があります」

 この男が提案とは珍しい。と言わんばかりに、老男はほぅ? と呟いた。

「寂静村を無くしてしまってはどうでしょうか?」

「他のギルドの冒険者から他の都市はどうやって守る?」

 男の提案に老男は慎重に問う。

「楽火街と冒険者が活由市を最前線の防衛都市とすれば問題ないかと」

「寂静村と楽火街や冒険者が集まる町の間の都市は捨てるというのか?」

 老男が活由市を通称で言う。

「我々のギルドは大きくなりすぎてしまいました。正直管理できる規模を超えています。いっそのこと一度整理してみるのも悪くないかと」

 正座をしていた男が言うと、老男は少し考えてから再び口を開いた。

「確かに、魅力的な都市はそこらにはないな……ダンジョンが1つ減るがそれも大した問題ではない……か」

「えぇ。むしろ、これから冒険者同士の戦争が始まった時に、重要都市をしっかりと守れるように今から準備しておくことが大事です」

 正座をしていた男が深く頭を下げる。

 どうかこの提案を受け入れて欲しい。と言わんばかりだ。

「どこの都市が大事かを確認するいい機会にもなるか……よかろう。捨てる都市にいる冒険者を楽火街と活由市へ集め、捨てる都市の管理は適当にするがよい。この際だ、捨てる都市の税を上げて絞れるだけしぼるのじゃ」

 老男の最後の言葉に、正座をしていた男はにやりとほくそ笑んだ。

 ●

「そろそろ事が起こる」

 先ほどまで薄暗い部屋で正座をしていた男、ガローが仲間に言う。

「寂静村に人が集まるのは面白くないってことよね?」

 仲間の1人、能花が言うとガローは頷いて答えた。

「人が集まれば自然と冒険者も集まる……」

「冒険者とはそういう生き物だ」

 別の男がボソリと言うと、またまたガローが頷いた。

「参が言う通り冒険者を止めることはできない。しかし事が起こる時に寂静村にたくさんの冒険者がいることは好ましくない。何しろ我々は寂静村を切り捨てようとしているのだからな……」

「つまりよぉー。寂静村はメリダのギルドじゃなくなるっつーことだろぉー? んならよぉー、今からあんな寂れた村ぶっ壊しちまえばいーじゃねーか」

 筋骨隆々の大男が、大剣を掲げる。

「ブロ。それは無理だ」

 ガローが大男をブロと呼んで窘める。

「あん?」

「我々が攻撃をすれば我々が悪者になる。それは避けたい」

 不満そうなブロに参がぼそぼそと答える。

「ありがとう参。つまりだ、まずは寂静村に人が集まらないように工作をしなければならないんだが、とりあえず寂静村で何が起こっているのかこの目で確かめてみようと思うわけだ」

 ガローの提案にブロは、めんどくせぇーなー。と頭の後ろで手を組んで椅子の背もたれにもたれかかった。

「まぁまぁ。原因が分かればブロくんお待ちかねの大暴れができるんだから我慢我慢」

 にこにこと。少年のような笑みでブロをなだめているのは、タニだ。

「まとめると、寂静村に冒険者が集まるのは嬉しくないけど、まずは調査をするってことだね。んで、場合によっては妨害工作を仕掛ける。ひとまず冒険者同士のトラブルは避ける方向で」

 副リーダーの陽がまとめた。

 この6人が、メリダのギルドでも有名なA級冒険者パーティー、流星だ。

 どうやら寂静村に人が集まるのを妨害したいようだ。

 冒険者は人が集まる場所に集まる。

 寂静村を切り離してメリダのギルドの管理外にしたいのだが、寂静村に人が集まり冒険者が多くいるならば管理外にするにはおしい村となってしまう。

 今まで通り管理ができるのであれば問題はないのだが、こういった場合は得てして今まで通り管理できないことが多い。

 それならば、冒険者が集まらない今までの寂れた村のままギルドの管理から外してしまうのが一番ベストである。

 更には今後起こりうるであろう事――冒険者同士の争い――は、ギルド間の縄張り争いに冒険者が巻き込まれる形になる。

 ギルドに所属している冒険者が多ければ多い程、強ければ強い程そのギルドは有利になり、自分の縄張り――すなわち領土――を広げられるということになる。

 少しでも自分たちのギルドを有利にするために、流星はメリダのギルドに所属する冒険者を他のギルドに行かせないようにしているのだ。

 そんな中、メリダのギルドから切り離そうとしている寂静村に冒険者が集まれば厄介でしかないというわけだ。

「今まで通り管理できれば一番いいんだがな……」

 ガローの呟きが全てを物語っていた。

 ●

 アドは全てが順調に行っていると思っていた。

 シャラとの連携も問題なく、シャラはアイギルドに所属することを快く受け入れてくれて、穏風のダンジョンで入手したアイテムやそれを変換したアイテムを売ることで商売もうまくいき、村長からも慕われ、寂静村はもはや半分以上アイギルドに所属していると言っても過言はなかった。

 しかし、外では既にギルド同士の小競り合いがあちらこちらで起こり、いつギルド同士の戦争に発展するか分からない不穏な空気が世界を包んでいる。

 そして、その戦いの火蓋を切るのは流星でありその原因がアドたちにあることをまだ、本人は知る由もなかった……

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