物心ついた頃から、暗い部屋に幽閉されていた。
周りの人間は自分のことを、化け物でも見るかのように見ていた。
みんなびくびく怯え、自分に逆らわないようにしているのが明白だった。
幼い頃からそんな扱いを受けていたからだろう。
自分は何か特別な存在なんだと思うようになった。
何でも許される存在。そう思っていた。
しかしそれとは別に、どこか物足りなさを感じていた。
近くには誰もおらず、いるのは監視役であろう兵士のみ。
「ねぇ」
いくら話しかけても応えてくれない。
次第に自分は1人なんだと理解し始めた。
そんなある日、国王に呼び出された。
「忌まわしき能力を所有し者よ」
国王の言葉を理解できる程の教育を受けていなかった。
それでもいい言葉ではないことは理解できた。
「我が国のために心血を注げ。その忌まわしき能力で世界を蹂躙せよ。さすればその命助けてやろう」
「……何言ってんの?」
正直な気持ちが口から出ていた。
「やはり呪われておるか」
軽蔑したような目つきで見られ、そのまま元いた真っ暗な部屋へと戻された。
自分はずっと1人だ――
暗闇の中で1人でいると、心が壊れるのは簡単だった。
全てのものを破壊したくなった。
その衝動が抑えられなくなって、無意識に外の兵士を殺していた。
しかし自分では殺した記憶はないしどうやったのかも分からない。
それでも、人を殺すとすっきりした。
何人の兵士が殺されても、監視がいなくなることはなかった。
だから思った。
自分が死ぬまでずっと人を殺し続けられるんだと。
暇つぶしのつもりで作ったクマのぬいぐるみが突然話し出すまでは――
●
「お前の名前はなんだ?」
「知らないよそんなの」
「名前がないのは不便だろ。俺がつけてやる。お前の名前はザクロだ」
「ふーん。キミの名前は?」
「そうだな……ケイタと呼んでもらおうか」
「けいちゃんか。なんか可愛い名前だね」
「おい。誰がけいちゃんだ。ケイタと敬意を込めて呼べ」
●
「これがボクとけいちゃんの出会いだよ。ま、その後色々あってけいちゃんを奪われちゃったんだけど。この村を壊滅させればけいちゃんを返してくれるんだってさ」
ザクロはそう締めくくった。
「疑うわけじゃないですけど」
言いにくそうにシャラが言う。
「それって村を壊滅させても返してもらえないんじゃないですか?」
「俺もそう思うな」
隣でアドも頷く。
「どうして?」
キョトンとした顔でザクロが訊く。
「聞く限りじゃ、国王はザクロの能力を脅威だと感じているわけだろ? んでザクロが作ったぬいぐるみにはザクロの力が宿っていると考えている。俺が国王ならそんな脅威能力は排除したいと考えるな。本当に忠誠心がある者に、ザクロの力をトレースさせたりするな」
「そうですね。私もその意見に賛成です」
アドの後にイリが頷く。
「そんな! それじゃあボクはどうしたらいいのさ!」
ザクロが我を忘れて能力を解放しようとするのを、アドが制止する。
「俺たちと一緒に来ないか?」
片手を差し出す。
村を壊滅させないための方便であり、能力を行使するのをやめさせようとした言葉だったが、アドにはザクロを見捨てることはできなかった。
「俺たちがけいちゃんの代わりじゃダメか?」
「ボクが怖くないの?」
「怖いけど」
「平気です」
アドの言葉を遮ってイリが言う。
「ザクロさんが私たちの仲間になってくれるならば私たちにとっては心強い味方です。それに、メリダのギルドが私たちを目の仇にしていることは分かりました。私たちは、対モンスターではなく対冒険者の準備をする必要があります」
イリの表情は少しこわばっている。
それもそうだろう。
今までは、モンスターを相手にしていればよかったのに、急に同じ仲間になるかもしれない冒険者を相手にしなければならなくなったのだから。
「もうギルドの復興とか言ってられないのかな?」
ポツリとアドが言うと、イリが不思議そうにアドを見る。
「何?」
「いえ。こんな世界情勢なのに、ギルドの復興を目指してくれるんですか?」
「俺はこの村に、このギルドに救われた。絶望から抜け出せたんだ。恩がある。何よりもこのギルドを復興させたい」
「私もアドくんと同じ気持ちです」
シャラが立ち上がった。
「世界がどうとかよりも、このギルドを復興させてもっともっとたくさんの人を笑顔にしたいです! それが最終的には世界の平和にも繋がるような気がしてます」
ザクロは、シャラとアドを交互に見て、心の中がなんだか今まで感じたことない気持ちが沸きあがっているのを感じていた。
「ボクも……」
ポツリと言う。
3人がザクロを見る。
「一緒にお手伝いしてもいい? ふっこー」
「「「もちろん!」」」
アド、イリ、シャラが同時に微笑む。
こうして、アドのパーティ―に新たにザクロが加わった。
