私と彼は、いちばん近くにいて、同時に告白を断った。
放課後、放送室の前の廊下で。
相手はもちろん違うけど、断った理由は同じだった。
「ごめん。好きとか、そういうのじゃない」
私はよく「男っぽい」と言われる。
比喩でも何でもなく、実際に力仕事を任されることもあった。
男友達は多いけど、誰かの“彼女”になったことは一度もない。
彼はよく「女の子みたい」と笑われる。
比喩でも何でもなく、気が利いて、空気を読むのがうまい。
女友達は多いけど、誰かの“彼氏”になったことは一度もない。
「また断った?」
幼なじみの彼が苦笑いをする。
私は肩をすくめる。
「そっちこそ」
「うん。なんか、違うんだよね」
私たちの会話はいつもここで止まる。
意図的に止めているわけではない。
自然と会話が止まるんだ。
理由を言葉にすると何かが壊れてしまいそうで。
周りから見れば、私たちは恵まれている。
モテて、友達が多くて、問題なんてないはずだ。
それでも――
放課後の教室で二人きりになると、
正しいはずの世界から、少しだけ外れている気がした。
