いちばん近くて、いちばん遠い~プロローグ~

いちばん近くて、いちばん遠い

 私と彼は、いちばん近くにいて、同時に告白を断った。

 放課後、放送室の前の廊下で。
 相手はもちろん違うけど、断った理由は同じだった。

「ごめん。好きとか、そういうのじゃない」

 私はよく「男っぽい」と言われる。
 比喩でも何でもなく、実際に力仕事を任されることもあった。
 男友達は多いけど、誰かの“彼女”になったことは一度もない。

 彼はよく「女の子みたい」と笑われる。
 比喩でも何でもなく、気が利いて、空気を読むのがうまい。
 女友達は多いけど、誰かの“彼氏”になったことは一度もない。

「また断った?」

 幼なじみの彼が苦笑いをする。
 私は肩をすくめる。

「そっちこそ」

「うん。なんか、違うんだよね」

 私たちの会話はいつもここで止まる。
 意図的に止めているわけではない。
 自然と会話が止まるんだ。
 理由を言葉にすると何かが壊れてしまいそうで。

 周りから見れば、私たちは恵まれている。
 モテて、友達が多くて、問題なんてないはずだ。

 それでも――
 放課後の教室で二人きりになると、
 正しいはずの世界から、少しだけ外れている気がした。

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