どうせ勝てない魔王

どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第21娯楽

最初に変わったのは、空気だった。 誰かが大声を出したわけでもない。 喧嘩が起きたわけでもない。 それでも、人々の声は以前より少しだけ小さくなっていた。「……最近、変じゃない?」「うん……なんとなく……」 言葉は曖昧で、理由もはっきりしない。...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第20娯楽~

それは、最初は些細なことだった。「……また食糧庫の鍵が合わない?」「昨日までは普通に使えてたのに……」 管理を任されている女性が首をかしげる。 鍵穴が微妙に歪められている。だが、力任せに壊された形跡はない。 “偶然”にしては、出来すぎていた...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第19娯楽~

魔王城は今日も穏やかだった。 廊下では人間の子どもが魔族の子に文字を教え、 中庭では元兵士が鍬を振るい、 厨房では誰が決めたわけでもなく、当たり前のように「皆の食事」が作られている。 争いはない。 怒号もない。 命令もない。 ただ、人がいて...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第18娯楽~

王都はやけに明るかった。 白い石の建物。 整えられた道。 掲げられた無数の旗。 それは「平和の象徴」であるはずだった。 だが、その中央を歩く勇者の足取りは重かった。 両手は拘束されていない。 鎖も檻もない。 それでも、どこにも逃げ場がないと...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第17娯楽~

城の中は朝の匂いで充満していた。 焼きたてのパンの匂い。 湯を沸かす音。 誰かの笑い声。 ほんの数日前まで、ここが戦場になる寸前だったとは思えないほど、穏やかな空気だった。「……今日は静かだね」 長い廊下を歩きながら、誰かがぽつりと呟いた。...