どうせ勝てない魔王

どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第16娯楽~

夜明け前の空気は冷たかった。 討伐部隊の仮営地にはほとんど音がなかった。 眠っている者もいる。 眠れずただ目を閉じている者もいる。 そして――眠ることを諦めた者もいた。 若い兵士は、焚き火の前に一人座っていた。 ――レイ――だ。 見た目は若...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第15娯楽~

その日、城門前は異様な空気に包まれていた。 風の匂いが重い。 いつもなら感じない、鉄の気配が混じっている。「……来ました」 城壁の上に立つ見張りの魔族が静かに告げた。 俺はゆっくりと城門の方へ視線を向ける。 遠くに砂煙が上がっている。 砂煙...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第14娯楽~

異変 異変は、いつも静かに始まる。 それは雷鳴でもなければ、宣戦布告でもなかった。 ただの報告書の束だった。 だが、その重さは紙の量だけの話ではなかった。 目の前に積まれた書類の山を1枚ずつめくりながらポツリと言う。「……減っているな」 そ...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第13娯楽~

その青年は剣を持っていなかった。 防具もない。 魔導具もない。 あるのはくたびれた外套と、底の擦り切れた靴だけ。 城門の前に立った青年は、しばらく動かなかった。「……ここが魔王城……」 声はひどく乾いていた。 青年の名はセイン。 元・勇者候...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第12娯楽~

休憩スペースの空気はいつも通り静かだった。 リシェリアは窓際の席に座り、ぼんやりと外を見ていた。 カップはすでに空だ。「……今日も何もしてないな、私」 自嘲気味に笑ったその時。 入口の扉が静かに開いた。「……あ」 聞き覚えのある足音だった。...