【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる~第四章 ラベンダー山の探索~

【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる

レモグラライオンとレモグラスパイダーを倒したワイら、へなちょこでヘンテコなパーティー一行は、レモングラスの森を抜けてすいかシティへと戻っていた。

まずはギルド受付に向かい、りんご市で預かった書類を受付のおっさんに渡して、報酬を得た。

全員で装備を整えつつ、レモグラライオンとレモグラスパイダーの素材を換金してもらった。

ちゃっかりビッグラットも倒していたらしい。

ついでにすいかシティには、レモグラライオンとレモグラスパイダー討伐の依頼もあったようで、それらもこなしたことになった。

おかげでワイらの懐はかなり潤った。

みんながそれぞれに見合う装備を新調して、再びりんご市へ向かった。

さっきと違って、主だった敵には遭遇せずにりんご市へたどり着いた。

みんなの装備といはいえ、ダリアは相変わらずショーパンにティーシャツというラフな格好で、武器いらずだから、何も変わってない。

ワイも剣を入手したけど重くて扱える気がしない。一応ナイフもある。

装備は鎧とか盾とか無理!持てない。だから普段着のまま。一応皮の鎧ってやつもあったんだけど、動き辛かったからやめた。

カルドンも出会った頃と変わらない。シーフみたいな恰好で、忍者に見えなくもない。口元まで布で覆っていてますます中二病っぽくなってる。

あと、右腕を包帯でグルグル巻きにして指先の空いた手袋をしていた。マントも羽織っている。突っ込まずに放っておこう。

グラジオラスは黒いローブに、カルドンから与えられた眼帯を右目にしている。

「フッフッフ。いいかグラジオラスよ。これは魔力の眼帯と言ってな、君がピンチの時この眼帯を外すことで真の力が開放されるようになっている。普段は普通の人間のように接するのだ。」

「分かりましたマスター。」

分かっちゃったよ!

ローゼルは狩人みたいな身軽そうな恰好だ。サバイバルの知識が豊富だからか、長袖長ズボンに両腕にサポータの代わりに鎧みたいのを付けている。足の脛にも同じ様なのがつけてあり、仕込みナイフが入っているようだ。

肝心の武器だが、<弓矢魔法>という特殊な魔法で出し入れ自由になっているようだ。

恐らくたくさんの弓矢を購入して、この魔法で今は消しているのだろう。

「弓矢魔法を覚えていないと、アーチャーは大変だよ!武器を持ち歩かないといけないからね!」

と言っていた。

ヒゴタイちゃんは可愛い!真っ白のワンピースにフリルがついている。

正にワイの天使!

アヤメは、騎士のくせに露出度の高い服装をしていた。大きな剣と大きな盾を持ち、鎧は身に纏っていない。

ミニスカに胸元とへそと肩を出したシャツを着ている。

こうしてあんまり装備が変わってないように見えるワイらへなちょこでヘンテコなパーティー一行は、りんご市で新しい依頼を引き受けた。

オネェ受付からの依頼は、ちょっと特殊だった。

〔依頼内容〕

・すいかシティから書類をりんご市まで届ける 完了

・りんご市から荷物を預りすいかシティまで届ける 完了

・ビッグラットの討伐 完了

・ミント洞窟3階層の生態調査とラベンダー山麓の生態調査 … オネェ受付からの依頼

ラベンダー山にはりんご市最大の依頼対象となっている、ブルードラゴンが住んでいるらしい。

すいかシティのレッドドラゴンと同じ難易度なので、当然今のワイらでは討伐不可能。

麓の生態調査は、ブルードラゴンが活発に活動するかどうかを見極めるのに必要不可欠らしい。

というわけで、ワイらへなちょこでヘンテコなパーティー一行は、りんご市を南に進んでラベンダー山へとやって来たわけだ。

「まぁまぁの高さの山だな。」

カルドンが言うが、まぁまぁか?てっぺんが見えないぞ?

知らないけど、富士山レベルなんじゃない?

まぁ今回は麓の探索だし、山を登らなくて済むからいいか。

ワイ・ダリア・ローゼルが街に一番近い場所を探索。

グラジオラスとカルドンが街に向かって右側を、ヒゴタイとアヤメが向かって左側を探索することにした。

山の向こう側は、ラベンダー湿原という強力なモンスターの住処があるらしいので、そこは探索しないことにした。

「とりあえず1日探索したら例の酒場で落ち合おう。」

カルドンの指示で、各人探索を開始した。

ワイ・ダリア・ローゼルサイド――

「いつもタローと一緒でダリアは嬉しいのだ!」

ダリアが腕にひっつく。無い胸が悲しい。

「ウチも結構勇者と一緒だよな?嬉しいわー。」

ローゼルも反対側にひっつく。胸の感触が気持ちいい。

「生態調査って植物とか虫とかの調査もするのかな?」

何をすればいいのかイマイチピンときていないワイがローゼルに聞いてみた。

ダリアに聞いても無駄だし。

「すると思おうよ。それらの生態系が活発に活動してたらブルードラゴンは静かにしてる証拠ってことじゃない?」

うわぁー。虫の生態調査とかやりたくないなー。

とりあえず目に見えるものから調査してメモするか。

なぞの花、咲いている。なぞの虫、這っている。なぞの木の実、笑っている。

ん?笑っている?

「タロー!」

ダリアの声で間一髪、その攻撃をかわすことができた。

あと一歩遅ければ、木の枝に串刺しにされているところだった。

ワイが見た笑っている木の実は、同じく笑っている木になっていた。

「<笑う木>と<笑う実>だね。地面から根っこで攻撃してくるから気をつけな。それと、<ジャイアントビー>って蜂が巣を作ってたらウチらだけで対処するのは困難だよ。」

真面目なトーンでローゼルが言う。

ワイらは何も戦闘が目的ではない。生態系が分かればいいのだから、この戦いをスルーすることもできる。

モンスターがスルーしてくれればであるが。

「やっぱり見逃してくれないか。」

厄介な。と言いながらローゼルは弓を構えた。

「ダリア!木の実と蜂は無視して本体の木を叩くよ!」

不思議な光景だった。

いつもなら使い物にならないはずのローゼルが、こういう時には凄く頼りになる。

「分かったのだ!」

いつもは反発しているダリアも素直に従っている。

やっぱりワイが思った通り、このパーティーは型にはまると凄く強いんだ。

こっちが戦闘態勢に入ったのに気づいたのか、<笑う木>がザワザワっと体であろう幹を震わせた。

それが恐ろしい攻撃だとも知らずに、ダリアとローゼルは攻撃しに<笑う木>に向かって行ったのである。

グラジオラス・カルドンサイド――

街に向かって右側、つまりりんご市を背中にした場合に山の左側(東方面)を担当している。

ダリア達が<笑う木>と戦闘を開始した頃、ここでも戦闘が行なわれていた。

<グルッポフォルミーカ>と呼ばれる集団で敵を襲う蟻の一種だ。

「魔力は温存せよ!」

集団とはいえ所詮は蟻。体格の違いでさほど苦戦はしない。

「分かりましたマスター!」

グラジオラスは手に持つ杖で蟻に攻撃する。

カルドンも小型のナイフで攻撃している。

『どこかに巣があるはずだ。そこを叩けば我々の勝ちのはずだ。』

そう考えたカルドンは正しい。

巣から無数と思える数の<グルッポフォルミーカ>が出てきているならば、巣を叩けば数が増えることはない。

蟻の集団の列を見つけ、その先をカルドンが見据える。

「あっちの方に巣がある!いくぞ。」

カルドンがグラジオラスに指示を飛ばし、目の前の敵を放棄した。

ここまでのカルドンの思考は正しい。

間違いがあるとすれば――

ヒゴタイ・アヤメサイド――

「何にもないね。」

ヒゴタイがアヤメに言う。

「何もないのが逆に不気味です。」

りんご市に向かって左側、つまりりんご市を背にした場合山の右側(西側)を彼女ら2人は探索している。

自然豊富で知られるラベンダー山だが、こちら方面には生物の生気を感じられなかった。

動物も虫もモンスターでさえも見当たらない。

それどころか、地面には草木の1本も生えていなかった。

そこは荒れ果てた大地のように思えた。

「聞いていた話と大分違うように思うのですが…」

おどおどとアヤメが言う。その声は小さく、今にもこの場から逃げ出したいという気持ちがにじみ出ていた。

「どうしようか?一度みんなと合流する?」

ちらりと後ろを振り返る。

みんなと別れて数分も歩かない内に徐々に草木が無くなり、荒地に変わり果てていた。

何やら嫌な予感がする。今戻らなければならない気がする。

そんな本能とも言える予感が2人の脳裏に過っている。

「戻りましょう。ここはなんだか不気味です。嫌な気がします。」

ピタリと足をとめ、アヤメの言う通り2人はその場を後にして急ぎ足で戻った。

程なくして荒れた大地から自然豊かな土地に戻れた。

足を止めて荒地の方へ目をやると、禍々しい霧のようなものがかかっている。

「何か絶対にいるね。まずは太郎ちゃんたちに合流しよう。」

ヒゴタイがアヤメの手を握って歩き出す。

その先には、<笑う木>と戦うダリア達がいる。

カルドンは正しい選択をしたつもりでいた。

無数に湧き出る<グルッポフォルミーカ>を相手にするよりも、巣を叩く方が効率的なはずであると。

<グルッポフォルミーカ>の列を進んだ先には必ず巣がある。

間違いは、その巣がどこにあるかを予想していなかったことだ。

「マスター!あれ!」

グラジオラスが指し示す先には、ダリアとローゼルがいた。

木に向かって走っている?

その更に奥からは何故かヒゴタイとアヤメが来ている。

「何が起きているんだ?」

いつも的確で素早い判断を下せるカルドンの思考が一時的に停止している。

それが致命傷になった。

木が体を震わせた――

ワイは、走馬灯でも見ているのだろうか?

全ての物事がゆっくりに見える。

<笑う木>へ向かったダリアとローゼルに対して木が体を震わせた。

上から無数の<笑う実>が落ちてきて爆発した。

ダリアとローゼルがワイの傍まで吹き飛んできた。

<笑う木>の攻撃はこれで終わりではなかった。

生い茂る葉で見えなかったが、ローゼルの忠告通り<ジャイアントビー>が巣を作っていた。

無数の<ジャイアントビー>がこちらに飛んでくる。

さっきまであんなに和気あいあいとしていたのに――

「まだ息があります!」

背後からのヒゴタイの声に我に返る。

「マスター!」

グラジオラスに声をかけられてカルドンも我に返った。

「気を付けろ!<ジャイアントビー>だけじゃなく地面に<グルッポフォルミーカ>もいるぞ!」

カルドンが鋭く叫ぶ。

ふと地面を見ると蟻の大軍がワイの体やダリアとローゼルの体を這っていた。

ゾワゾワゾワっと身震いする。

「傷は治しましたが2人の意識はまだ戻りません。」

「ヒゴタイ!離れろ!」

2人を介抱していたヒゴタイをドンッと後ろに押す。

蟻に毒があるのか分からないが、回復担当のヒゴタイをやられるわけにはいかない。

「私が盾になります。」

アヤメが言ってくれる。

「ありがたい。とりあえずヒゴタイとこの2人を遠くにやってくれ。いてっ!」

蟻に噛まれた。いや、尾の針で刺された。いや両方だ。無数の蟻によってワイは攻撃されまくっていた。

グラジオラスがカルドンの詠唱を待たずに<ファイア>を唱えてくれた。

蜂と蟻の増援を防げたけど、刺された箇所が熱を持っていた。少しだが毒を持っていたようだ。

「治します。」

ヒゴタイが近づくが、それをカルドンが制す。

「待て!近づくのは危険だ。君たちは街へ戻って助けを呼んできてくれ。こいつらは俺たちでは手に余る。」

カルドンの言う通りだった。頼みの綱のダリアも一撃でやられ、2番手のローゼルも倒されてしまった。命があるだけ奇跡と言える。

ヒゴタイがりんご市へ走る。そこへ無数の蜂が襲い掛かる。

「回復士さん!」

自ら体を盾にアヤメがヒゴタイを守る。大量の<ジャイアントビー>にアヤメが刺される。

「まずいぞ!1匹1匹の毒は強くなくてもあれだけ刺されるのは危険だ。」

いつもは遠くから見守って指示を出すだけのカルドンが走って、小型のナイフで蜂を追い払う。

「マスター!」

魔力が底を尽き、フラフラ状態のグラジオラスも力弱く杖を投げて応戦する。

アヤメ・ヒゴタイ・カルドンは蜂に囲まれ全身を刺された。

ワイはさっきから蟻に刺された毒で意識が朦朧としている。

ダリアとローゼルの意識も戻らない。

グラジオラスは魔力が尽き、蟻に蝕まれている。

ワイが勇者として転生して、手に入れたパーティーは、ワイの目の前でやられていく。

<笑う木>がニヤニヤしながら鋭い木の枝をワイに向けてくる。

あぁ死ぬ――

ワイを貫くであろう木の枝が猛スピードでワイに迫ってきた。

タイトルとURLをコピーしました