君だけが俺をユイと呼ぶ~第28話 吐露~

君だけが俺をユイと呼ぶ

「ゆかりちゃ~ん! どうしたらいいと思うー?」
「待って待ってかおるちゃん。最近ちょっとキャラが違うと思ってたけど、こっちが本当のかおるちゃん?」
「そんなことどうでもいいよー」
「いやいやいやいや! 良くないからね?」
「いいから聞いて! こんなこと今までになかったの!」
「んもー。好きな人の話しでしょ?」
「うー。ユイが他の女子と話してるだけで気になっちゃうよ~」
「そのユイってのが誰なのか知らないけど、そんなに好きならもっとアタックすればいいじゃん」
「できないよー。ゆかりちゃんだってアタックしてないじゃんー」
「う。私の場合は遠距離だし好きだけど憧れに近いから」
「一途だよね。好きになってもう1年以上じゃない?」
「中学の時に好きになった人だからねー」
「夢を追いかけてる人だっけ?」
「たまにしか連絡取ってないし、返事は返って来ないから脈なしなんだけど、それでも諦められないんだよね」
「こんなにも一途なんだから実って貰わないと!」
「お互い頑張ろうね! あ。うるさいのが来たよ」

 ●

「おはよーさん! 何話してたんだ?」

「おはよう落合。何でもないよ。ほら、あそこにさくいるでしょ? 今日もさくは可愛いねって話してたのよ」
「塩田? 何で白石と佐々木の会話で塩田が? まぁ確かに最近雰囲気変わったけども」

「……へー。やっぱり落合ってちゃんと見てるんだねー」
「なんのこっちゃ」

「さくみが可愛くなったの、ゆかりちゃんの影響な気がするんだよねー」
「何で?」
「なんかさくみ、ゆかりちゃんのことよく見てる気がするから」
「いや。それは2人のことを見てるだろ」
「「え?」」

「何でもねー。朝倉来たから行くわ」

 ●

 学校が憂鬱だと思うのは久しぶりだ。

 ずっと夏休みだったら良かったのに。
 なんてありきたりな気持ちが溢れてくるな。

「何ダルそうな顔してるんだ?」
 落合が話しかけてきた。
 休み明けの朝だというのに、元気だな。

「休み明けって憂鬱にならん?」
「俺はむしろ、みんなに会えるから楽しみだな」
「見解の相違だな」
「何を難しい言葉を使ってんだよ」
 笑いながら背中を叩かれた。

「いやだってこれから休み明けテストがあったり、宿題回収されたりするんだぜ?」
「んなもんみんなで終わらせただろ?」
 確かに落合の言う通り、宿題は同好会のみんなで集まって終わらせたが、テスト勉強をした記憶はない。

「テストなんて、授業聞いてれば問題ないだろ」
「いやそれは特殊なやつじゃねーの?」
「え? 朝倉って授業聞いててもテスト勉強しないと点数取れないタイプ?」
「明らかにバカにしたよな?」
 俺の言葉を聞くと落合が爆笑した。

「それで?」
 唐突に落合が聞いてくる。

「あぁ。どうやら俺は佐々木のことが気になっているようだ」
「だろうな」
「だろうなって。気づいてたのかよ」
「分かりやすすぎだろ」
 笑いながら落合が言うが、それって佐々木にもバレてるってことじゃないのか?

「ま。安心しろよ。俺くらいしか気づいてないから」
 落合のこの言葉は、俺の顔色を見ての言葉だろうな。

「今度、デートに誘おうと思ってるんだけど、どう思う?」
「どうって。まぁ誘うのはいいと思うぞ?」
 そう言って落合は言葉を区切った。
「ただ。今までの話しを聞く限り普通に誘ってもダメなんじゃないか?」
「だよなー」
 俺が頭を抱えると、落合は笑ってその悩みを払拭した。
「相談すりゃいいじゃねーか」
「相談?」
「自分の過去のことで悩んでるんだろ? そのことを素直に相談してみ? それだけでデートになるしうまくいけば、朝倉と佐々木の仲が深まるかもしれないだろ?」

 落合は時折、こういう突拍子もない計画を打ち立てる。
 ホントにすごい。
 こんなにいいやつが彼女すらいないなんて考えられない。

「そういう落合はどうなんだよ」
「何が?」
 これだよ。
 いつも落合はとぼける。

「好きな人の1人や2人いるだろ?」
 その言葉を聞いた落合は一瞬目を伏せた。
「さぁな」
 その言葉だけで、もうこれ以上この会話を広げてはいけないのは分かる。

 だが……

「これだけ俺のことを分かってるんだ。自分のことだって分かるだろ?」

「分かってるからだよ」
 いつもよりも暗い言い方だ。

「落合?」
「何でもねーよ」

 頭の後ろで手を組んで自分の席に戻る落合を見て俺は思った。

 ――落合って、周りの人のことを気遣ってばかりなんじゃないか?

 ●

 久しぶりにあの頭痛がした。

「どうした?」
 落合はいつも俺の変化にすぐ気づく。
 もう隠しておく訳にはいかないだろう……

「実はな。最近落合といると頭が痛くなるんだ」
「なるほどな。アレルギーだったか」
「真面目な話しだぞ?」
「悪い悪い。んで?」

 今度こそ落合は真剣に話しを聞いてくれた。

「あぁ。俺は小学生くらいの頃の記憶がないんだ。っつても丸っきりないわけじゃなくて、一部だけ抜け落ちてるような感じだ」
「あぁ。時折朝倉が遠くを見てる感じになるのはそのせいか」
「佐々木にも言われたけど。たぶん昔を思い出してるからだ」
「それと頭痛と俺にどんな関係があるんだ?」
「わからないんだ」

 気まずい沈黙が流れた。

「考えられるのは」
 落合が口を開く。
「思い出したくない記憶だな。俺に似た知り合いが居て、例えばそいつにいじめられてたとか」

「逆にいじめてたとか?」

 思わず口にしていた。
 今まで抑え込んでいた気持ちだ。

「なんだそれ? いじめていたのが思い出したくない記憶?」
 落合が困惑する。
 もう――
 心に嘘はつけなかった。
 本当は気づいていた。
 思い出そうとすると、頭が痛くなる。そしてそれは思い出したくない記憶ならば……

「俺がその子を殺している。とか……」

 空気が凍った。
 落合も何て言っていいのか分からないようだ。

「ねぇよそんなこと」
「なんでそんなこと分かるんだよ!」
 きっぱりと言われて腹が立った。
「朝倉に人を殺せるとは思えん」
「そんなのわかんねぇだろ?」
「分かるよ」

 そう言って落合が俺の目を真っすぐ見てきた。

「親友だからな」

 幼い頃。
 言われた言葉だ。

 俺たちは親友だぜ!

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