デビルブレイブ城~第2解放 2次選考~

デビルブレイブ城

 砂利エリアの罠は単純に落とし穴のみだった。

 そのため、カズヤでも比較的容易に罠を避けることができた。

 更にカズヤは田舎育ちで、ほとんどの道が舗装されていない村出身。

 砂利道はむしろ慣れているため、他の人よりもスイスイ進んでいた。

「足の裏全体で石ころ1粒1粒を感じるんだ。そうするとバランスを崩さないで進むことができるから」

 カズヤが他の5人にそう言うと、スケ・ヤシチ・カクの男性3人はすんなりとそれに順応できた。

 しかしサクラとギンはなかなか上手くいっていなかった。

「オイラはよくこうやってるよ」

 カズヤが普段の歩き方をサクラとギンに教えるが、普通の歩き方との違いが分からなかった。

 とはいえ、落とし穴と砂利道だけの比較的楽なエリアだったので、6人は各自のペースで難関手前まで進むことができた。

「あんなのあったべか?」

 スケが目の前の巨大な壁を見て言う。

「ありませんでしたね」

 この壁を登るのかと憂鬱になりながら、ギンが答える。

「僕が先に登って、上からロープを垂らすよ」

 そう言ってカクはみんなを休ませて、自分だけおよそ5メートルはあるであろう、砂利の壁を登って行った。その姿はまるで、ロッククライミングだ。

さすがは力自慢。そのまま手や足がかかりそうな場所を見つけてどんどん上へ登って行き、上からロープを垂らして他のメンバーを引っ張り上げた。

 砂利エリアは林エリアに比べると、比較的楽なエリアだった。強いて言えば、砂利エリアは上り坂なので走る場合は大変だが、今回はゆっくりなのでそれも問題なかった。

 6人はぬかるみの下りエリアへと突入したが、このエリアも砂利エリア同様に、走りにくいエリアなだけで、ゆっくり進めるのであれば大変さはそこまでなかった。

 ぬかるみエリアの罠は、足元に張り巡らされた透明の糸と周囲からタイスケが投げてくる投石だった。

 ゆっくりと進めばどちらも問題なく対処できる。

 林エリアでは足を引っ張っていたカズヤも、ここにきてしっかりと対応できるようになっていた。

 最後の難関も落とし穴だったので、地面の不自然さを見つければ問題なく避けられた。

 ぬかるみエリアを抜けると6人は、再び小休止をして砂浜エリアへと突入した。

「ここも走りにくかったけどゆっくり進むならなんの問題もないね」

 呑気にカズヤが言う。

 それもそのはず。罠は相変わらず落とし穴だし最後の難関に至っては、魚を釣ることだった。

 田舎育ちのカズヤが魚釣りのコツをみんなに伝授して難なくこれもクリアした。

 階段コースは罠も難関もなかった。

 ただし、走った時もそうだが長い距離の階段なので、単純にしんどい。

 一本橋へと入った。

 罠は左右から振り子のように動いている大きな丸太。林の中にあったのと同じだ。

 違うのは、丸太に当たれば橋から下に真っ逆さまに落ちるということ。

「罠にぶつからないでよ?」

 サクラがカズヤに注意する。

「もう大丈夫だよ」

 へらへらとカズヤが笑うが、目と鼻の先を丸太が通り過ぎた。

「多分……」

 冷や汗をかきながら言うカズヤを見て、他のメンバーが大きくため息をつく。

 6人が注意深く進み、難関の巨大な丸太を避けたら再び何の罠も難関もない下り階段を降りたら見事ゴールにたどり着いた。

「本日の選考会は終了だ。明日、2次選考会を開始する」

 タイスケはそう宣言すると、6人は男女別々にテントへと向かった。

 ●

 翌朝早朝に1次選考のコースを6人は走らせた。今回は訓練の時の罠と難関がそのまま残っている。更に、最初の5時間よりも1分でも遅かったら選考はそこで終了というルール付き。

 もちろんみんなで一緒にゴールする条件は変わらない。

 それでもギリギリでゴールした。

「これは毎日するからなー」

 容赦ないタイスケの一言だ。

「続いて2次選考を開始する」

 特に1次選考を通過したという感じではない。むしろ1次選考は訓練のような感じだった。

「2次選考も選考って名前だけど訓練に近いものだったりして」

 だからサクラがこう考えるのも無理はない。

 2次選考は確かにサクラが言ったように訓練に近いものだった。

 しかしその内容は1次選考とは全く違っていた。

「そっち行っただ!」

 スケが言う。

「はっやすぎ!」

 その言葉にサクラが毒づく。

 選考の内容はこうだ。

 1次選考で使用した林エリア内のみで、タイスケが逃げ回るからそれを捕まえるというもの。

 一見何でもなさそうな選考だが、タイスケは想像以上に運動神経が良かった。

 それだけではなく、木から木へと縦横無尽に移動した。

 捕まえるにはそれなりの力量が必要だった。

 田舎育ちのカズヤは木登りも得意だが、それ以外のメンバーは、身体能力の高いヤシチ以外木登りが苦手なようだ。

 ロッククライミングみたいに登れればカクでも登れるが、木登りは腕力よりもバランス力の方がむしろ大事だったりする。

 特にカクは筋肉がある分、体幹がしっかりとしていない。これは木登りにおいてマイナスの要因になる。

 とはいえ、タイスケを捕まえるのに木登りの才能はそこまで役に立たない。

 それもそのはず。逃げ回るタイスケに対して、木を登るスピードはゆっくり。

 素早くサクサクと木を登れれば問題もないだろうが、カズヤもヤシチもそんなに早く木を登れない。

「くそ……タイスケさん早すぎだろ」

 ヤシチが近くの木を殴る。

「俺が見てた感じだと、木は隣にしか移れないみたいだべ」

 観察しながらみんなに指示を飛ばしていたスケが言う。

「タイスケさんが木に居るなら、隣の木を封鎖すればいいということですね?」

 スケの言葉を受けてギンが言うと、更に続けた。

「いくつかの木に罠を仕掛けましょう」

 木を切り倒すのはルール違反になるので、罠で木を使えなくする作戦を立てた。

 罠は簡単なもので、木に棘のついた蔦を巻き付けた。

「痛みを我慢すれば飛び移れますけど、とりあえずこれで何とかなりそうですね」

 いくつかの木に蔦を巻き付けながらカクがヤシチに言う。

「自分は、命に危険がないならわざわざこんな棘のある場所に逃げたくないけどな」

 そう言いながらヤシチがこくりと頷いた。

 2次選考第2ラウンドが始まった。

 ●

「木を制限して俺の動ける範囲を狭くするか……」

 タイスケが、面白い。と呟いて素早く走り出す。

「またあのスピード!」

 カズヤがうんざりして言う。

 そう。タイスケを捕まえるのに厄介なのは何も木から木へと容易に飛び移ることだけではない。タイスケの身体能力の高さは、足の速さも含まれている。

 その速さはオリンピック選手顔負けだ。

「あの速さを捉えないとですね……」

 ギンが小さなセンスを取り出す。

 そのセンスをタイスケに向かって投げつける。

「その程度では足止めにもならんぞ!」

 タイスケが笑ってセンスを弾き飛ばそうとすると、センスには先ほどの棘の生えた蔦が絡めてあった。

 そのままタイスケの腕に蔦が絡みつく。

「なるほど」

 タイスケが足を止める。

 その周りに6人が集まった。

「捕まえたってことなのかな?」

 カズヤが言うと、タイスケが頷いた。

「2次選考の前半は合格だ。問題はこれからだな」

 コトン。と小さな小瓶を懐から取り出して地面に置いた。

 中には透明の液体が入っている。

「これは我々人民解放軍が独自に開発した秘薬、聖気薬と呼ばれる物だ。ある程度成熟した精神と肉体の持ち主がこれを飲むことで、不思議な力を得ることができる。しかし、未熟な物が口にすると体の内側から腐り果てる」

 そう言い終えるとタイスケは小瓶を懐にしまった。

「今ので、お前たちがある程度肉体も精神も成熟していることが分かった。しかし俺がこれをお前たちに与えることはない。最終選考でこれを飲まされる。俺たちの役目はお前たちをそれまでにしっかりと成熟させ、これを飲むに値するかをチェックすることだ」

「俺は、以前に聖気薬を飲むに値すると思って最終選考へ送り出した者を死なせてしまっている。それ以来一度も最終選考へと新人を送り出したことはない。だが、お前たちのことは送り出してもいいと少し考えている。1次選考を通過しただけでなく1次選考よりも早いタイムでゴールをし、俺を捕まえた。実際申し分ないだろう」

 何か言いたそうな言葉を飲み込んでタイスケは歩き出した。

「俺の力を披露しよう」

 林エリアの難関に指定されていたトラをタイスケが指さす。

「来い」

 タイスケが声を掛けると、トラは頷いてゆっくりと歩き出した。

「動物を操れる力ですか?」

 ギンが驚きの声を出す。

「そうじゃない。動物と話せる動物語という能力だ。聖気薬を飲めばこんな力を手に入れられる可能性がある。しかし命を失うリスクもある。お前たちはそれでもこの薬を飲みたいか?」

 6人は顔を見合わせる。

 全員の気持ちは決まっていた。

 ――もちろんです!

 6人の声が林の中にこだまする。

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