「この世界には全部で9種類の生き物がいる」
コロニー西方第2支部の人たちは、この世界の成り立ちやシステムを知らない。
ただ、コロニーの外に出ると、異種族に攻撃されるということだけを知っている。
リヒトは、たいやアスカなどの戦力になりそうな者を集めてこの世界について簡単に説明をした。
「9種類とは、我々人類とこの世界の食物連鎖の頂点に位置する感染者。そしてありとあらゆる機械類を操る機器類、五感が優れている獣類、存在そのものが災害の龍類、怪しげな魔法を使う魔類に怪しげな呪術を使う闇類。影のある場所ならどこでも生きられる影類、そしてあらゆる自然の形を形成する自然類だ」
「人類以外の全てが感染者に対応できているのよね?」
話を聞いてアスカが不思議そうに言う。
「全ての種族が、感染者に対応できるように進化した。一方の我々人類は技術力でそれをカバーするようになった」
「それが、このコロニー生活と能力と武具ってわけだ」
リヒトの言葉を引き取ってバクが言う。
日本刀を肩に担いでいつも偉そうにしている。
「この日本刀も対感染者用の武器だ」
たいが自分の日本刀を見ているのに気づいてバクが付け加えた。
「君の力は<文字(フォント)>だね?」
リヒトがたいに問う。
自分の能力のことは、このコロニーの中でも一部の人しか知らないはずだった。
それをコロニー外の人間に知られていることに驚きながらも、たいは頷いた。
「驚くのも無理はない」
たいの表情を見てリヒトが穏やかに笑った。
それを見てたいも安心する。
自分の情報が外部に漏れているのではと心配していたのだ。
「君の力は特別なんだ。感染者対策に大いに役立つということで、政府の中枢にまで情報があげられているんだ」
「こんな子供だなんて知らなかったけどね」
リヒトの後に西が続けてそう言った。
「今や我ら人類は君たちのような子供にまで頼らなければならないほど人手不足だ。感染者は統率されつつあり、さっきのレベル1も恐らくは単独行動ではないだろう」
とリヒトは分析した。
「確かに単独でこのコロニーの場所を探しあてるなんて難しいもんねー。しかもレベル1で」
リヒトの隣ですくも頷く。
「まず君たちには感染者の基本情報を知ってもらう」
そうリヒトが言って、基本的な感染者のことを話しだした。
●
感染者の生体については分かっていない部分が多い。
ただ、生き物を殺すことで感染者が進化していることは分かっており、人類はこれを便宜上レベルと呼んでいた。
感染者が生き物を殺す理由については、捕食以外にもあると言われているが、その理由は分かっていなかった。
人類は、感染者になると異様な殺戮衝動に駆られるのではないかと分析している。
感染者はレベルが上がることで姿形が変わり、レベル1は人間と姿が同じため見分けがつかない。レベル2からは、その感染者の望む姿形になると言われており、個性的な姿が多数報告されていた。
レベル2に上がると感染者は自我を得て言語を習得する。身体能力もレベル1とは比べ物にならないくらい上昇する。
レベル3に上がると感染者は名前を得て体が硬くなる。人類は便宜上攻撃力と防御力が上がると称している。
そして現在見つかっている最大レベルの4に上がると、特殊な能力を得る。
レベル5以降の感染者は見つかっていないが、政府は絶対にいると考えている。
また、中にはあえて自分のレベルを偽っている感染者がいることも報告されている。その理由としては、バスターに討伐されないためだったり、捕食対象を油断させるためだと考えられる。
つまり、感染者はただの殺戮者ではなく、知能が高い個体が複数存在することになっている。
そして一部の感染者は組織化されていることも報告されていた。
●
「とまぁこんな感じか。人類のコロニーを見つける感染者は基本的に組織化されている感染者だと言われている。まぁ、知能が高くて自我を持ったレベル2以降の感染者なら単独行動でも見つけることができるらしいけどね」
とリヒトが締めくくった。
「どのみち、さっきのはレベル1だから単独でこのコロニーを見つけるのは普通不可能ってことですね?」
アスカが話しを理解して言うと、リヒトが頷いた。
徘徊中に偶然見つけることはできるが、あまりにも運要素が強すぎるということだ。
「最後に1つだけ。感染者にはフィールの一族と呼ばれる軍団がいる。フィールの一族は死なない上にその能力も反則レベルだ。遭遇したら戦わずに逃げること。一応政府はレベル4と認定しているけど、その強さは他のレベル4とは次元が違う」
リヒトは自分の右腕をみんなに見せた。
一部が真っ黒に焼け焦げていた。
「サルンガと呼ばれるフィールの一族と戦ってこうなった。奴の力は雷だ。憎しみの感情を司ると言っていた」
「憎しみを司るって?」
聞きなれない言葉にたいが聞き返す。
「あぁ。フィールの一族はそれぞれ感情を司るらしいんだ。一応はその感情に合う能力を持っているらしい」
「そのフィールの一族ってどのくらいいるんですか?」
今度はアスカが質問した。
「具体的な数は分かっていない。それと噂だがフィールの一族には束ねるリーダー的な存在がいるらしい。今わかっているのは怒りと悲しみ、憎しみに興味だ。感情を司るということだから喜びとかもいるだろうとは予測している」
アスカの質問に答えたのはバクだ。
「興味? 感情を司るのに感情ないものも司るんですね」
「ま、感情を司るってのも私たち人類が便宜上言ってるだけだからね。司るものに関係性があるのか分からないのよ」
たいの質問にすくが肩をすくめて答える。
結局のところ、感染者について分かることはほとんどなかった。
●
レベル1の感染者が襲撃してきたコロニー西方第2支部では、どこから感染者が侵入したのかを調べる作業が続いていた。
「私たちはね。各コロニーを救援する役目と共に未だに不明な感染者について研究する任務が与えられているの」
感染者の足跡らしきものを地面に這いつくばって探しながら、すくがアスカに言う。
「研究って具体的にどんなことをするんですか?」
同じように地面に這いつくばりながらアスカが問う。
「色々よ。例えばさっきみたいに感染者と戦った場合には、体の細胞をありとあらゆる角度からアプローチして調べる。それによって弱点があるかどうかを調べたりね」
「そのおかげで対感染者用の武器とか能力とかを発見できたんですね?」
アスカがすくの顔をみて笑顔で言うと、すくもそうよ。と笑顔で答えた。
すくとアスカは念入りにじっくりと感染者の痕跡を探していた。
その甲斐もあってか――
「見つけた」
すくがコロニーの外への出入り口の1つの近くで呟く。
すぐさまリヒトたちが駆けつける。
「ほらここ」
壁の一か所を指さす。
ほんのわずかだが、何かに引っ掛かれたような傷跡がある。
「この傷跡が感染者の痕跡なんですか?」
普通に生活していれば簡単に付きそうな傷に、たいが疑問を抱く。
「一見何でもないような傷だけど、この傷の真下に妙に窪んだ足跡があるでしょ?」
と言ってすくが地面を指さす。
その足跡は、通常の人間が付ける足跡とは大きさも深さも違っていた。
「つまりここから侵入したわけだな。その方法は不明だが、壁を傷つけているところから、何か細いもので無理やりこじ開けた可能性が高い」
リヒトが分析する。
「さっき倒した奴はそんなの何も持ってなかったな」
バクは思い出したように言い、まさか。という顔をした。
「侵入した感染者は他にもいるな……」
リヒトが頷く。
どうやらその感染者は知能が高く、上手く姿を隠しているようだ。
「場合によっては、レベル4で能力を持っているかもしれない。気をつけろよ」
さっさと探しに行こうとするバクにリヒトが注意する。
「任せろ」
バクが走り出し、その後を西が追った。
「さて、君たちはこのコロニーの全員に注意を促してほしい」
リヒトがたいとアスカに言う。
「もし既に感染者にやられている者がいるとしたら、元々は仲間だとしてもその者を殺さなければならない」
リヒトが拳を握る。
そのことは、たいもアスカも十分に理解している。
しているが、このコロニーに感染者が侵入したのは2人が生きている中では初めてのこと。感染者を実際に見たのもさっきが初めてだ。
「仲間を助けたければ今すぐに侵入した感染者を探すんだ。そして万が一感染者にやられている者を見つけたならば、そいつも倒すんだ。被害が広がる前に」
フルフル震えているたいに厳しくリヒトが言う。
「ちょっとまだ子供なのよ?」
すくがリヒトに注意するが、リヒトが首を横に振る。
「子供でも特にたいは戦力だ。これくらいの逆境でダメになっちゃいけないんだ。これはたいの宿命でもある」
ぽん。とリヒトがたいの肩に手を置く。
「できるな?」
できない。とは言わせないような言い方だ。
たいも勢いに押されて頷いた。
●
「あいつか……」
隣のバクに向かってリヒトが呟く。
侵入していた感染者はすぐに見つかった。
今のところ、この感染者に殺された者は見つかっていない。
「他にも侵入している感染者がいるかもしれないから、コロニーには警戒態勢を取ってもらうわ」
すくがリヒトに言うと、リヒトは頼む。と後ろを振り返らずに言う。
「人間の見た目をしていないからレベル1じゃないことは確定だな」
象のような足に大きなピストルのような頭部が3つ付いている感染者を見てバクが言う。
「普通に考えればあの頭部の1つ1つに能力が備わっているってことでしょうね」
西が新人のたいとアスカに説明をする。
「その1つが、コロニーの出入り口をこじ開けられた力ってことですね?」
アスカが言うと西が笑顔で、そゆこと。と答えた。
「まずは様子見だ。即死攻撃があるかもしれないから、油断するなよ?」
リヒトが言うとバクが走り出した。
<脚力強化(スピード)>の力を使って目にも止まらない速さで移動している。
たいとアスカにとって初めての実践が始まる。

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