「つまり、この城を抜けるためにそのルールを探す必要があるんですね?」
宿には不思議なことに食事まで用意されていた。
新鮮な魚の刺身に何の肉か分からないステーキ(味は良かったが少し硬かった)、サラダにご飯(冷めていたが)、色んな種類のパン(どれも硬い)、果物(見たことない匂いの)などだった。
「そーゆーこと。君とヒロインが言ってたように、この城が魔界とは別の空間だった場合には、その方法でしか元の世界に戻れないし、雷獄の洞窟へも進めないからね」
謎のステーキ肉を大胆にもレア状態で食べながらティーパンが言う。
「もしかしたら今まで通ってきた場所に、そのルールがあったかもしれませんよね?」
緑色のグツグツした怪しい飲み物を飲みながら助態が言う。
助態はどうやら見た目の怪しい飲み物を飲める特性があるようだ。
「怪しいのは、あの金属が動いていた部屋だね」
ガブリ。とステーキを噛み切りながらティーパンが言う。
「まぁ今夜はとりあえず、この城の中にある変な宿にお世話になろうじゃないか」
グビリとティーパンが透明の液体を飲んだ。
その後、一瞬にして顔色を変えた。
「飲むな!」
同じ液体を飲もうとしていたちあの手を強く掴んでティーパンが制止した。
助態の脳裏に、毒の文字が浮かんだ……
●
「これが助態さんの秘剣れすかぁー」
ルブマが助態のエクスカリハーを握る。
「はうぅ」
助態が色っぽい声を出した瞬間、その性気をアンアンが吸った。
ティーパンが飲むなと制止した液体は酒だった。
ちあには早すぎるということで止めたのだろう。
もっとも、そのティーパンは飲みすぎて寝てしまっている。
「アンアンよぉ。もうこの変態2人を止めなくてもいいぞ?」
ヌルヌルが笑いながら言うと、もふともが殴る。
「アンタなんてこと言うんだい? アタイらのチームの秩序を乱すつもりかい?」
「え? いや乱すというかもうめんどくさいだろうと思って」
「あら? 私は別にめんどくさくないわよ? 食事みたいなものだから」
ふふふ。と笑いながらアンアンが助態の性気をどんどん吸い取る。
助態のエクスカリハーはしぼみ、ルブマに触られて刺激されることで膨れ、またしぼみを繰り返した。
おかげで助態は頭がおかしくなる寸前だった。
「ア……アンアンさん。お願いです。一度でいいから」
それだけ言うとまた助態の股間がしぼんでしまった。
「ふへへー。助態さぁ~ん。この秘剣は伸び縮みするんれすねぇ~」
「もぉーやめてくれぇー!」
助態の悲痛な叫び声にくびちがようやく動き出した。
「ほらルブマ。いい加減にしなさい」
「あんたも喜んでんじゃないよ」
くびちがルブマを引きはがし、もふともが助態をコツンと小突いた。
「俺が悪いのかぁ?」
「勇者様がしっかりと逃げていればこんなことにはならなかったです」
もふともが答えるよりも前に純純が怒る。
全くはしたない。なんて言っているが、助態はむしろルブマが怒られるべきだろと不満を抱いたが言わない方がよさそうだと判断して、黙っていた。
「はれぇ~? くびちしゃぁ~ん。なんれすかこの世界一柔らかいものわぁ~」
悪酔いしたルブマが今度はくびちの胸を揉みだした。
「あなたホントに酔ってるわね。いくら最近助態が相手してくれないからって、酒に酔った勢いってのはよくないわよ?」
さすがはくびちだ。胸を揉まれても動じず大人の対応をしている。
「相変わらずでかいなーこの発情女は」
グビっと酒を飲みながらもふともがテーブルに足を置く。
「おいおいおい! そんな行動今まで取ったことないだろう?」
その行動にヌルヌルが驚く。
「今までぇ? 今までって何さね! アンタにアタイのことが理解できるってのかい!」
ドン。とテーブルを軽く蹴る。
「まぁまぁ。もふともさんも酒癖は悪いっすからねー」
ケタケタそんなもふともとヌルヌルの様子を見て、ぱいおが笑う。
「笑ってないで止めてやれよ」
一応助態が突っ込むがぱいおも酒に酔っている。
「何でウチが止めなきゃいけないんすか? この際だから言わせてもらうっすけど、この状況を作ったのって助態さんが原因っすよ? ウチめっちゃ被害者っす!」
ふん! と鼻から息を出してドスドスと純純の方へ行ってしまった。
「純純さんも何かあるならちゃんと言った方がいいっすよ。このままだとルブマさんまた自分の気持ちいい始めるっすよ」
ぱいおの警告通り、くびちに咎められたルブマがやけを起こした。
「そうれすよ! 助態さんが他の女の人に鼻の下伸ばして全然私に構ってくれないからいけないんれすよ! ふぇぇぇぇーん」
最後はくびちの胸で泣き出してしまった。
「あ、あのだな」
助態が椅子から半分ずり落ちながら反論しようとすると、背後から冷たい声がした。
「勇者様がしっかりしないのがいけないと思います」
振り返ると、ニヤニヤするぱいおと頬を赤らめている純純が立ちながら助態を見下ろしていた。
●
ぱいおは、純純の本音を引き出すために酒を飲ませていた。
「おまっ! 純純、もう飲むな」
純純が手に持つ酒を取ろうと手を伸ばすと、その手をぱいおが払いのけた。
「この際だからしっかりと主張を聞いたらどうすか?」
「アタイも賛成だねぇ。男どもよ、女の意見を聞くがいい」
ダンっと、テーブルからテーブルに飛んでもふともが、ぱいおと助態の間に割って入ってきた。
「おいおい。もう酒は辞めさせた方がいいぞ」
ヌルヌルが助態に耳打ちをする。
「あぁ。そのようだな。もっこり! 酒をしまってくれ」
一番酒の近くにいたもっこりの方を水に助態が声を掛ける。
「どうやらそれは無理なようだ」
弱弱しい返事が返ってきた。
その言葉に助態とヌルヌルが振り返ると、もっこりが足蹴にされ、はあはあが酒の入ったピッチャーを持っていた。
もっこりはうつ伏せに倒され、片足を乗せられたまま身動きが取れない状態になっていた。
「男共ー! 女の主張を聞けぇーい! まずはお前!」
もっこりに片足を乗せたまま、はあはあはお前と言ってヌルヌルを指さした。
「助態と仲良くしようとしているが、そもそも恋敵なんじゃないのか? 本当にもふともが好きならば助態との仲なんて気にせず奪うくらいの行動を起こせないのかぁ!」
「そーだそーだ!」
はあはあの主張にもふともが同調する。
「そして次ぃ!」
ズムッ。とはあはあがもっこりを強く踏む。
「あんたは私のことをどう思ってるんだ?」
この言葉に、周囲のざわめきが一瞬にして静寂に変わった。
みんながもっこりの答えを待っていた。
共同戦線を張っている助態とヌルヌルですらも。
「お……俺は」
全員の視線を浴びていることをはっきりと感じながらもっこりは、ごくりと生唾を飲んだ。
「だ……」
ボソリと答えるが誰にも聞き取れない。
それなのにもっこりは恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしている。
それだけで、助態にはなんて言ったのかが理解できた。
おそらく他のみんなも。しかし――
「あぁん? 聞こえないよ! もっと大きな声ではっきりと言いな!」
理不尽。あまりにも理不尽だと助態は思うが、そんなこと言えるような空気ではない。
「す、好きだよ! 俺ははあはあのことがずっと好きだよ!」
この言葉に女性陣は多いに沸いた。告白された形になったはあはあは一気に酔いが冷めたのか、見る見るうちに顔が真っ赤になってくる。
両手を両頬に当ててもっこりから足をどけ、その場にへたり込んでしまった。
「あわわわわわ」
なんて言っているが、後は2人に任せよう。とみんながもっこりとはあはあを2人きりにした。
「問題はこっちだな」
助態がルブマと純純の方に向き直る。
「勇者様がルブマさんに構ってあげないからいけないんれすぅー」
純純がぱいおにもたれかかりながら言う。
その言葉にぱいおがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「純純さん。ルブマさんにばっかり構われていいんすか?」
「へ?」
キョトンとして純純がぱいおを上目遣いで見上げる。
そのまま助態へと視線を移す。
「私は別に勇者様と仲良くさせてもらってますよ?」
「なぁーにを言ってるんすか! そーゆーことを言ってるんじゃないっすよ!」
ぱいおが大きな胸を揺らしながら、片手に握りこぶしを作って純純に迫る。まるで、ごぉー! と音が鳴っているかのようだ。
「えっと、何を怒っているのでしょうか?」
純純が戸惑うと、ぱいおがさらに純純に迫った。
「純純さん! はっきり言わせてもらうっす。助態さんがルブマかくびちさんと付き合ってもいいんすか?」
「お2人がそれを求めてるのなら問題ないと思いますが?」
その言葉にぱいおはがっくりうなだれてしまった。
「そういうことじゃないっす。純純さんの気持ちを聞いてるんすよ」
「私の気持ちですか?」
純純が困惑し、ぱいおがますますいらだたせる。
「純純さんは助態さんと付き合いたくないんすか?」
ここまで問われて純純は初めて頬を赤く染めた。
「わわわわ私れすか?」
確信をついた問いに一気に酔いが回ったようだ。
「私は――」
チラリと純純が助態の方を見る。
「ダメれす!」
純純の言葉を遮るようにルブマがフラフラして前に出る。
「おいおいみんな落ち着けって」
助態が注意した瞬間、千鳥足のルブマが転び、助態の股間に顔をうずめてしまった。
『ルブマさーん? 何やってんのー? 今ここでこの状況でそれはまずいでしょー!』
助態の心の叫びは誰にも届かず、ワナワナと震える純純のいつものパンチが炸裂した。
●
「で、アンタはアタイのことどう思ってるんだい?」
気絶している助態を気にせずもふともがヌルヌルに訊く。
がっしりと羽交い絞めにして逃げられないようにしているところはさすがだ。
ルブマはもうお嫁に行けないとか言ってるし、純純はまたやってしまったと嘆いている。
ぱいおはゲラゲラ笑いながらも、ヌルヌルともふともの会話を聞こうとしていた。
ちあとティーパンは眠っており、もっこりとはあはあは未だに気まずそうに会話がない。
アンアンは、やれやれと首を左右に振っている。
「私はもう寝るわね」
くびちが大きくあくびをする。
それに倣うようにアンアンも、私も寝るわと呆れた様子を見せた。
「俺は……好きだけどもうもふともとは付き合えないと分かってる」
ヌルヌルがもふともの目を真っすぐ見つめて言う。
「それはもふともだって分かってるだろ?」
つまり、今生きている世界が違うためにもうつき合うことはできないという意味だ。
「何言ってるんだい。そんなことはないだろう?」
もふともがヌルヌルの目を見つめ返す。
「あの時だってそうだった。アタイはアンタを見捨てることはないんだよ。それは昔も今もこれからも変わらない」
「あの時とは状況が違うだろ? 今は俺は死んでて君は死んでない」
「それならアタイも一緒に死んでやるよ!」
このもふともの言葉にヌルヌルは言葉を失った。
やがて、ふっと笑みを浮かべて呟く。
「変わらないなもふとも」
そう呟いて、知り合った頃のことを思い出していた。
