勇者は発情中~第五十七エロ 王の口とビブリン~

勇者は発情中

「で? 今度は何をやったんだい?」

 起きて早々もふともが助態に問うが、助態には心当たりがない。

 強いて言えばぱいおのファーストキスを奪ったことくらいだろうが、そんなことでぱいおが泣くとは思えない。

 それなのにぱいおは、助態とのハプニング後泣き出し、その鳴き声は次第に大きくなり、小休止していた全員が起きてしまったのだ。

「俺は何もしてねぇーよ?」

 泣いている女の子を目の前に通用するわけがない言い訳をするが、全員に白い目で見られてしまった。

「君は少し自重することを覚えた方がいい。前にそう言ったよね?」

 ゴゴゴゴゴ。と音がしそうな雰囲気でティーパンが助態に近づく。

「い、いやホントに今回はなんもしてないんですよ」

 助態が必至に弁明するが誰も助態を信じない。

 同じ男のヌルヌルやもっこりですら助態が何かをやったと思っていた。

「そこまで言うなら本人に聞いてみようか」

 そう言ってティーパンが、後ろに居たぱいおの方を見る。

「助態さんが……ウチの初めてを奪ったっすー」

 うわーんと泣きながら、勘違いをする言い方をする。

「さいってー!」

 くびちがビンタをする。

「そこまでのクズだったとはね」

 次にもふともがビンタをした。

「ちあのことも孕まそうとしておったくせにこの変態が!」

 ちあもビンタ。

「知ってたけど話の流れで」

 アンアンもビンタ。

「同じく流れで」

 はあはあもビンタした。

「勇者様……」

 純純は涙目になっていた。

「助態さんは女性なら誰でもいいんですね」

 ルブマは心の底から涙してビンタした。

「さてと。覚悟はいいかい?」

 純純以外の女性がみんな助態にビンタをしたのを見た後に、ティーパンが手の指をポキポキ鳴らしながら助態に近づく。

 明らかに他の者とは違う。かなりのダメージがあるのは容易に想像ができた。

「お互いに合意の上なら助態が責められることはないんじゃないか?」

 慌ててヌルヌルが止める。

 その隣でもっこりも猛烈に頷いている。

「確かに」

 うっかりというような表情で、ティーパンが歩みを止める。

 くるりと振り返り、ぱいおの方を見る。

「合意なはずないじゃないっすかー! 無理やりっすよ!」

 相変わらずうわーん。と泣きながらぱいおが泣き叫ぶ。

 その言葉を聞くなり、鬼の形相でティーパンが再び助態の方へと歩み寄る。

 ――終わった。

 助態、ヌルヌル、もっこりが思った瞬間――

「勇者様のバカァー!」

 ティーパンの背後から猛スピードで純純が助態に駆け寄り、渾身のビンタをお見舞いした。

 助態は目の前が真っ暗になった。

 ●

「あっはっはっはっは」

 ティーパンの大きな笑い声に助態ははっとする。

 いつも通り純純に気絶させられたのだと気が付く。

「いやー。私に殴られなくてよかったね! 勇者」

 よかったね! じゃないよ。と助態は思いながらも、苦笑いで返す。

 どうやら助態への誤解は解けたようだ。

 おそらくぱいおが詳しく説明をしたのだろう。

「それにしてもキスだったなんて、紛らわしい言い方をするんじゃないよ」

 くびちがぱいおの胸をパンチする。

「ホントだよなー。てっきりヤったのかと思ったわー」

 足を前に投げ出しながら、少し安心したようにもふともが言う。

 その恰好を見て、ヌルヌルが行儀が悪いぞと注意をしている。

 もうすっかりいつもの光景だ。

 やれやれと首をふる助態に向かってティーパンが警告する。

「ヒロインが勇者を気絶させちゃったから、さすがに私が殴るわけにいかなくなったけど」

 ここで言葉を区切って助態を睨む。

「女の子たちを悲しませたら本気で許さないからね」

 声も1トーン低くなっている。

『こ……怖すぎる』

 声も出せずに助態は頷いた。

「ま、勇者の宿命だけどねー」

「は?」

 意味が分からず素っ頓狂な声が助態の口から出るが、ティーパンは手をひらひらさせながらちあのところへ向かって行った。

「もう魔力も体力も十分?」

「バッチリじゃ」

 チャームポイントの八重歯とえくぼを見せながら、ちあがティーパンに笑顔で応える。

「んじゃ出発しよっか。ビブリンと戦ってから大して進んでない。この洞窟がどのくらい続くか分からないし食糧とかの問題もある。急ぐにこしたことはない」

 ティーパンとちあが先に進みだしたのを見て、他のメンバーもそれに従った。

 助態は前々から思っていたが、改めてこのメンバーのリーダーというか物事の決定権はティーパンとちあにあると感じた。

『勇者の宿命ってなんだ? それにティーパンさんはいつも俺に物事を決めさせるんだよね……』

 ポリポリと頭の後ろを掻きながら、助態はその後に続いた。

 その姿を純純がそっと見つめた。

 ●

 助態たちが出発してからすぐのことだ。

 先ほどまで助態たちが居たところにビブリンと王の口が居た。

「デスキングの寵愛を受けているとはいえ、我々が倒したことがバレなければ問題ない。そういうことだな?」

 王の口がビブリンに問うと、ビブリンが頷いた。

 だがしかし、このビブリンと王の口が徒党を組んでいることは、デスキングも知っていることだ。

 それに――

「デスキングには、物事を見透かす力を持っているぞ?」

 王の口が言う通り、デスキングに嘘は通じない。

 だからこそ助態とヌルヌルはデスキングの洗礼を受けたわけだし、正直に話したからこそ今も命がある。

「まずは我々と接点がない他のモンスターに声をかけて勇者たちを襲わせろ。特段我々に危害があるわけではないが、いると厄介なのは事実だ。消せるなら消すのだ」

 そう指示を出して王の口は消えた。

 この指示が後に助態たちを窮地に追い込むことになるのだった。そして悲劇を生むことになるのだった――

タイトルとURLをコピーしました