ミユには才能があった。
それは、正確な地図を描く才能だ。
砦の建設を手伝いつつミユは、人質がいる場所や掌握軍のアジトを自分が知る限り地図に記した。
今の私たちに足りない物、それは人手だ。
世界のほとんどを掌握軍が支配しているから、私たちはまだサラダ村とレタス村しか都市を把握していない。
クレソンちゃんの計画では、この2都市を産業都市として、パクチー君たちが休んでる軍事拠点と私たちが作成中の前線砦を合わせて軍事都市を作るそうだ。
そのためにも人はたくさん欲しいので、人質や掌握軍によって支配されている都市の場所はとても重要になってくる。
それに今私たちは、レタス村やサラダ村の北側ばかりに注目してるけど、南側やレタス村の西側、サラダ村の東側のまばらな林の方面の防衛にもそろそろ力を入れる必要がありそうだよね。
「周囲を敵に囲まれてるってことは、それだけ注意しなければいけないところが多いってことよ。だから最初に防衛を築いたの。南側の柵や見張り台、ぐるりと囲った柵がそれよ。更には進みながら拠点を作ったでしょ?これでここの砦が完成すれば、北側の安全はほぼ確保されるわ」
クレソンちゃんが指を立てながら言う。
いつもののんびりした言い方じゃないところが、説得力を付ける。
私たちは数日間、ここの砦をかなり強化することを目指した。
そのためには、悪いけど妖精魔法をたくさん使わせてもらうわ。
植えた木をさっさと成長させて、かなり堅固な砦が完成した。
なにしろ、あのクレソンちゃんが納得した表情をしているのだから間違いない。
結局、パクチー君たちがこの砦に来ることは無かったけど、それってそれだけの大きな怪我ってことだよね。
私とクレソンちゃんとミユは軍事拠点まで戻り、この地をレタス村の人に任せた。
「この指示書の通りにやれば、強力な軍事都市が完成するからよろしくね」
そう言い残して、私たちはサラダ村まで戻った。
パクチー君たちは歩けるまでには回復していたので、サラダ村で休んでもらうことにした。
「次は産業都市を作りましょ」
そう言ってクレソンは、妖精魔法を使って作物の成長を促した。
ま。なりふり構ってられないもんね。
こうして私たちは、レタス村とサラダ村、軍事拠点を行き来して作物や木々の成長を促し、時には前線の砦に行って、軽く掌握軍の前線を押し上げたりした。
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季節は廻り冬になった。
パクチー君たちは全快で、パクチー君を最前線の砦に送り込み、掌握軍の前線を少し押し込んだり、攻めてくる掌握軍を返り討ちにさせたりした。
クレソンは軍事拠点で、軍事都市の構想計画を実行しつつ、妖精魔法で木の成長を促していた。
バジルはレタス村とサラダ村の作物の成長を促してくれていて、今では作物がかなり豊富にある。
ミユが作る地図はどんどん精巧になっていて、次にどこを攻めるのか、村人の優秀な人材と共に会議を開いているくらいだ。
私は勇者。その話しをただ聞いているだけ。
ってそれじゃニートと変わらないじゃない。
ちゃんとルッコラ君と仕事してるよ。
レタス村の西側に、掌握軍に支配されているきゅうり市があるらしい。
そこを解放しようとミユも言うので、解放するつもりだ。
中規模の都市らしいから、解放できればかなりの人財が確保されるはず。
「ミユにも分かるように一旦整理するね? まず、私たちは隣のサラダ村からスタートしたの。でここレタス村とサラダ村の間には川が南北に流れているわ。この川をサラダ村側に渡って北上したところらへんに、軍事都市を作っているわ」
実際には、川岸から数キロ東側つまり地図上で見れば右側だけど。
「軍事都市と産業都市を連携させることで、掌握軍に勝てる都市を作るのが目的ってことだよね?」
にこにこしながらミユが言う。
言うのは簡単だけどやるのは大変よ?
ま、私がそれを知ったのもつい最近のことだけどね。
これは小説でも同じね。
人気作家になってやるなんて、言ってその計画を練るのは誰でもできるけど、実際に人気者作家になるには、かなりの勉強や努力が必要なんだよね。
こうやって自分のラノベの世界に来て、初めてこういうことに気がつくんだから嫌になっちゃう。
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産業都市では、冬の特産品が生るようになっていた。
ミカンとかそういうのだ。
まぁ、妖精魔法を使えば冬場でも夏野菜が生るわけだけど、今はそこまで必要ではない。
バジルちゃんはめっちゃ張り切って、妖精魔法使いまくってるけど。
「最終確認ですが勇者様」
会議に出ていた1人が私に声をかける。
「ここからきゅうり市まではやや距離があります。雪道になるので通常の行程よりも更に時間がかかるでしょう。北側の最前線砦と同じやり方で、途中にいくつか簡単な陣の作成をお願いします。これは勇者様が休憩するための休憩ポイントだと考えていただければ問題ありません。西側には、掌握軍の前線は確認されていないので、恐らくはきゅうり市まで戦闘なく進めると思います」
つまりは、念のために寝る時とかは、陣地を作れってことだね。
ま、私とミユと数人の護衛だけでなんとかなるんじゃないかな?
とりあえず私たちは、きゅうり市へ向かうために、レタス村を地図で見たら左側、西方面へと進むことにした。
この先何があることやら。
