異世界転生しか勝たん~第十五稿 クレソンのゲーム~

異世界転生しか勝たん

サラダ村での危機が去ってから、とりあえず私たちは村をぐるりと柵で囲うことにした。

バジルちゃんは文句を言いながらも木を運んでくれた。

おかげで柵をたくさん作れた。

村の人達は道路の整備や見回りをしてくれている。

念のために柵も作ってくれている。

ということで、私とバジルちゃんとルッコラ君はもう一度レタス村に向かうことにした。

もう一度サラダ村と連携を組んでもらうためだ。

…なんだけど、やっぱりまだ私たちと組むメリットを感じられないらしい。

「この私が仲間になってあげるって言ってるのよ?どうして一緒に組みたくないわけぇ!?」

バジルちゃんが怒ってるけど、別にバジルちゃんはそこまで役に立ってない。文句多いしね。

「戦局が不利だからでしょ?」

そう。正に私がいったこのことに尽きる。

この世界の実に8割は人民掌握軍によって陥落してしまっている。

人民掌握軍に従わない者は奴隷のごとく扱いを受けている。

これは私の設定通り。

問題は、じゃあ人民掌握軍はどうやって世界を掌握していったのかということ。

もちろんこんなの私が描いたラノベにはない。だって必要ないから。サクサク読める展開が売りのラノベで、なぜ?とかどうやってとかいった過程はそこまで大事じゃないと思うんだよねー。

でも、現実ではそこが全て。

で、どうやって掌握したのかだけど、日本の戦国時代とか中国の三国志の時代とかもそうだけど、結局は他国に侵攻して重要な拠点を落としていって、徐々に領土を広めていったということ。

「つまり、戦略を立てるのが上手い軍師的なやつが向こうにはいるってこと。」

人差し指を立てながら私がバジルちゃんとルッコラ君に言う。

とはいえ、私もずっとニートもといラノベ作家をしているわけではない。こういう戦略系ゲームは何度か経験している。知的有利な場所とかも地図とか見ればだいたいは分かる。

「でもねー。どんなに戦略を練るのが上手くても力を持った者がいないのが致命的だよねー。戦士的なポジションがいないんだよね。」

ふーむ。と私が言うと、2人(匹)から予想外の言葉が返ってきた。

「戦略を練るのが上手なやつ。いる!」

「突出した力を持っている人、知ってるよ。」

バジルちゃんとルッコラ君が同時に言う。

「「「えぇっ!?」」」

3人の声がハモった。

まさかこうも簡単に仲間が増えるとはね。

戦略を練るのが上手なフェアリー、クレソンちゃんと攻撃特化のバンパイア、パクチー君かー。

私の作品には登場しないだけにどんなキャラか気になるなー。

「で、どっちから探しに行くわけ?」

当然私が紹介した方よね?と言わんばかりにバジルちゃんが聞いてくる。

「じゃ、じゃあ。バジルが紹介してくれるクレソンに会いに行こうか?」

苦笑いで私が言う。

ごめんねルッコラ君。本当は、突出した力の方が優先なんだけどね…

そんなわけで私たちはバジルちゃんの案内の元、クレソンちゃんがいるという場所に向かった。

驚いたことに、クレソンちゃんもパクチー君もレタス村から近い場所にいるという。

なんというご都合展開!

まぁ、2人の知り合いなんだから近くに住んでも不思議じゃないんだけど…ちょっとびっくりした。

その場所はというと、サラダ村とレタス村の間の林だった。

あのバジルちゃんが何度も木を運んでくれたあたりだ。

「クレソンには木を切るのを何度か手伝って貰ったんだ。」

さも当然とばかりにバジルちゃんが言うけど、そうなの?そういうことは早く言ってよ!

「それならお礼しなきゃじゃん!」

「はぁ?お礼ぃー?あんたばかぁ?」

はい出ましたー。バジルちゃんのあんたばかぁ?。

「でも手伝って貰ったならお礼くらいするでしょ?」

さも当然のように言うと、大きくため息をつかれた。何でよ!

「全く。あんたはほんと何にも分かってないわねー。」

やれやれと首を振られるけど、いや。分かるわけないよね?

「いい?クレソンはぶりっ子なの!お礼なんてしたらつけあがるだけでしょ?」

こんな事言わなきゃ分からないわけ?とか言ってるけど、分かるわけないしぶりっ子だからお礼をしなくてもいいなんて理由がまかり通るわけがない。

「と、とりあえず。仲間になってもらえるかどうかの確認をしてからにしたら?」

ルッコラ君が言うと、バジルちゃんの矛先はルッコラ君に向いた。

「そんなの分かってるわよ!」

まるで背後で、シャーって猫が怒っている声が聞こえてくるかのような怒り方をしている。

バジルちゃんは両手をヘビのような形にして挙げて、そのままルッコラ君の長い耳をまた引っ張り出した。

何であんたにそんなこと言われなきゃいけないのよぅ!とかなんとか言ってる。

まぁ、あの2人は放っておいてとりあえず先に行こう。

何だかんだ勝手について来てくれるしね。

「ここら辺にいるわよ。」

ある程度歩くとおもむろにバジルちゃんがそう言った。

なるほど。

確かに、サラダ村付近のようにまばらに木が生えている場所と違って、ここらへんは林って感じ程度に木が生えている。

「おーいクレソーン。」

大声でバジルちゃんが声をかけると、ちょっと遠くからはーい。と返事をする声が聞こえた。

パタパタとのんびり飛んできたこれまた可愛らしいフェアリーちゃん。

この子がクレソンちゃんね。

「きたきた。遅いのよあんたはいつも!」

そう言ってから、バジルちゃんが私たちのことを簡単に説明してくれる。

「なるほどね~。分かったよ!このクレソンちゃんが仲間になってあげる!」

やった!クレソンちゃん話しが分かるー!

ちょっとぶりっ子っぽいキャラだけど仲間になってくれるなら気にしないよね?

「ただし、ちょっとしたゲームでクレソンちゃんに勝てたらね?」

ん?ゲーム?

隣を見るとバジルちゃんが下を向きながらおでこに片手の平を当てている。

まるで、あちゃー。と言っているようにも見える。

「クレソンって、自分が認めた相手のことしか手伝わないんだよね…」

バジルちゃんが珍しく苦笑いしてる。

つまり、クレソンちゃんが出すゲームに勝たなきゃ仲間になって貰えないわけか…

クレソンちゃんが出してきたゲームの内容はとっても単純だった。

妖精魔法で5種類の葉っぱを2組出したクレソンちゃんが簡単に説明をしてくれる。

「クレソンとパセリちゃんはこの5種類の葉っぱを裏返しにして横に並べるの。表にはパセリちゃんでも分かるように数字を1から5まで付けておくね~。」

本当は葉っぱの模様とかで種類を判断するんだけど。と付け足した。

話しを聞いていたバジルちゃんが、あぁ。葉っぱのかくれんぼか。と呟いた。

「葉っぱのかくれんぼ?」

という私の質問には、ゲームのルールを説明するという形でクレソンちゃんが答えてくれた。

「簡単に言えば、数字の大きい方が強い。けど1は5に勝てる。お互いに1枚ずつ葉っぱを指定して勝負をするの。分かった?」

さっきまでののんびりとした話し方とは代わって、はきはきとした話し方だ。

きっとのんびりとした話し方はキャラ作りなんだろうなー。

「まぁ。だいたいは分かったけど完全に運がものを言う感じのゲームじゃない?」

「…ふーん。なかなか鋭いことに気が付くね。」

私のことをじっと見てからクレソンちゃんが言う。

何でか分からないけど褒められたようだ。

「このままだとパセリちゃんの言う通りただの運だめし。それだとつまらないよね?お互いに交互に勝負をするわけだけど、その前に相手に質問ができるわけ。そこで駆け引きをするってこと。質問はどんなものでもいいわ。分かってると思うけど、先攻は3つ質問ができるから有利。その先攻を特別に譲ってあげる。更に先に一気に3回攻撃させてあげるよ。しかも3つ質問してから!」

え?いいの?そんなことしたらクレソンちゃんの番がないままに私の勝ち!なんてこともあるかもしれないよ?

にこりとクレソンちゃんが微笑んでいる。それでも勝つ自信があるってことなのかな?

ちらりとバジルちゃんを見ると、首を左右に振られた。

どういうこと?

「あのねぇ。さっき」

「ダメ!」

バジルちゃんが何か助言をしようとすると、それをクレソンちゃんが遮った。

「1対1の勝負でしょ?余計な横やりはごめんよ?」

「わ…わかったわよ。」

ちっ。と小さく舌打ちをしてルッコラ君をまたいじめ始めた。

「うぇーん。やめてよぉー。」

「あぁー!もうムカつくぅー!」

仲いいねぇー。

さて、私も気合入れますか。

「じゃあまずは葉っぱを裏返して並べましょ。」

クレソンちゃんがにこりと微笑んだ。

どの数字の葉っぱをどこに並べても私が先攻だから関係ないから適当でいいよね。

重要なのは質問だよね…

どんな質問がいいかな?

5枚の葉っぱを並べながら私は、クレソンちゃんに質問する3つの質問を必死に考えた。

まず1つ目の質問は難しく考えなくていいか。

でも少しは絞りたいし…

「この葉っぱの数字は3よりも大きい?それとも小さい?」

真ん中の葉っぱを指差して私が1つ目の質問をする。

「さぁね。」

プイっ。とクレソンちゃんがそっぽ向く。

あれぇ?

バジルちゃんが向こうからあからさまなため息をついた。

「あんたねぇ。誰も質問にきちんと答えてくれるなんて言ってないでしょ?」

あ…そうか…

「でもかわいそうだから答えてあげる。この葉っぱは3よりも大きいよ。」

真ん中の葉っぱを指さしながらクレソンちゃんが微笑む。

なんか舐められてるなぁー。

核心を突くような質問をして、相手の表情を読むことが必要ってことか…

「この葉っぱは4?」

再び真ん中を指さして私が質問をする。

じ~っとクレソンちゃんの表情を見る。

「いいえ?」

にこりと微笑まれた。

む。可愛い。

とはいえこの表情を見ても本当なのか嘘なのか見分けがつかない…

というよりも…私は今まで、あまり人と接してこなかったから表情を読むというのが苦手なんだ。

次はいよいよ最後の質問か…どうしたものか…

「この葉っぱは1?」

真ん中の葉っぱをまた指さして私が聞く。

「…いいえ?」

ちょっと間があった。

真ん中は3よりも大きいって言ってたのにも関わらず、私が質問したからかな?

これでクレソンちゃんもポーカーフェイスじゃないことが分かった。

つまり、真ん中の葉っぱは本当に4じゃないってこと。そして3よりも大きいんだから5で確定だね!

真ん中の葉っぱに1をぶつける。

「勝負!」

「凄いね。咄嗟にあんな質問が思いつくなんて。ちょっと見くびってたよ。」

見事真ん中の葉っぱは5だった。1は唯一5に勝てるから私の勝ち。

「これで私の1勝だね。クレソンいいの?まだ私が攻撃しても。」

「大丈夫だよ~。パセリちゃんじゃクレソンに絶対勝てないも~ん。」

可愛い顔で何てことを言うのよ!

とはいえ、真ん中の葉っぱに全ての質問を使ってしまったから後はもう運ゲーなんだよね…

でもよく考えたらまだ私の勝ちの目が残ってる。

だって向こうの最強の5が消えたってことは私の4と勝負すれば、最低でも引き分けだしね。

「ここにこれで勝負。」

一番左端同士を勝負させる。

私のは4。クレソンちゃんのは2。

一番悪い展開だね。ここで1を引けてれば次に私が5をぶつけて私の勝ちだったのに…

どうせ勝つならできれば大きな数字に勝つ方が勝率も上がるんだけどね。

「2勝おめでとう。」

クレソンちゃんが不敵な微笑みを浮かべる。

えーっと…クレソンちゃんの残りは1、3、4。私の残りが2、3、5。

私が勝つには5で1以外に勝負するか3か2で1を狙い撃ち…

3で3に勝負をしてしまった場合引き分けの可能性もあるわけだ…

逆にクレソンちゃんが勝つためには、1で5を狙い撃ちにする必要性がある。

ってことは、私は確率が一番高い5で勝負をするのが一番いいんじゃない?

「そうと決まればこれで勝負よ!」

私は残った3枚の内の左側を手に持つ。

「ふーん。5で勝負しにくるんだ?」

相変わらずの不敵な笑みを浮かべるクレソンちゃん。

真ん中の葉っぱに勝負を仕掛ける!

「ざんね~ん!」

えぇー!3分の2の確率を外した?

まさかの真ん中の葉っぱは1…

バジルちゃんが背後で、おバカって言ってるけど運ゲーなんだからしょうがない。

これで攻守交替か。

あれ?私の残りは2と3。クレソンちゃんは3と4…

4で攻撃されたら私の勝ちはなくなるんじゃ?

にやりとクレソンちゃんが笑う。

「じゃあ質問させてもらおうかな?」

う。まずい。ポーカーフェイスを貫き通さないと…

「パセリちゃんの好きなタイプは?」

はい?

「何を言ってるの?」

よくわからず聞き返してしまった。

「ん?好きな人のタイプだよ?どんな人がタイプ?」

「そんなのこの勝負に関係ないじゃない。」

あわあわしながら私が言うと、ふふふ。と笑われてしまった。

バカにされた?

「最初に言ったよね?質問は何でもいいって。」

…確かに言った。でも、だからってこんな全く関係ない話をする?

ただでさえ私はこういうコイバナに免疫とかないんだから!

「で、こっちが2?」

右側の葉っぱを指して更に質問をしてくる。

う。まさにその通りだ。

「ち、違うけど?」

にこりと笑われた。絶対にバレた…

「こっちでこれに勝負~。」

左側の葉っぱで私の右の葉っぱに勝負を仕掛けてきた。

結果は私が2でクレソンちゃんが3。

残りは私が3でクレソンちゃんが4…

「負けた…」

そう呟くと、そんなことないよ。とクレソンちゃんが声をかけてきた。

「え?」

クレソンちゃんが微笑んでいる。

「あんたばかぁ?」

バジルちゃんのいつもの口癖がちょっと遠くから飛んできた。

「え?なに??どういうこと?」

「ごめんねパセリちゃん。」

私が戸惑っていると、クレソンちゃんが突然謝ってきた。

もう訳が分からない。

「ちょっとクレソン?ごめんってどういうこと?」

私がクレソンちゃんの両肩を掴むと、背後からはぁ。という声が聞こえた。

おおきなため息をついた後に、バジルちゃんがクレソンちゃんの代わりに私の背中越しに説明してくれた。

「いい?私たちフェアリーは妖精魔法が使えるの。で、この葉っぱは妖精魔法で出したものでしょ?」

うん。そうだね。さっきクレソンちゃんが出してくれたやつ。

「分かんないの?ちょっとこっち向きなさいよ!」

私はクレソンちゃんの肩を掴んだまま固まっていた。

そのためバジルちゃんには背中を向けたままでいる。それが気に食わないのか、バジルちゃんがキーッと怒った。

「痛いよ痛いよぉー。うぇーん。」

怒りながらもルッコラ君の耳を引っ張ることを止めないのが、いかにもバジルちゃんらしい。

「ごめん。ちゃんと説明してくれる?」

バジルちゃんに向き直る。

「葉っぱに書かれてる数字を意のままに操れるし何が書いてあるのかも分かるのよ。」

やれやれ。と首を左右に振られてしまった。

あ…そっか。

「ってえ?待って。それじゃあイカサマじゃん!ズルじゃん!」

「だからごめんって謝ったんだよ?」

クレソンちゃんが後ろから声をかける。

いや。謝ればいいってものじゃないでしょ?勝負は無効だよね?

「あのねぇ。そもそもクレソンは私たちに協力するつもりだったの。でも一応あんたの実力を試したくて勝負を仕掛けたの。そんなのも分からないの?」

バジルちゃんが呆れたように言うけど、分からないから。

「そもそもこのゲームは、妖精魔法の強さを競うゲームだから~。」

またまたのんびりとした言い方に戻ってクレソンちゃんが言う。

つまりは、数字をお互いに書き換えてどっちが妖精魔法の力が上かを競う遊びなんだと。知らないよそんなの!

まぁ、何はともあれ私たちは無事に、クレソンちゃんを仲間に引き入れることに成功したらしい。

次はルッコラ君が言う、突出した力を持っているバンパイア、パクチー君の元へ向かう。

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