レタス村からきゅうり市への道中は、話で聞いていた通り戦闘はなかった。
私とルッコラ君とミユはすんなりときゅうり市へと訪れることができ、中に入ることもできた。
「特に掌握軍に支配されているという雰囲気でもないわね」
一見、普通の都市だ。
「へいらっしゃい!」
「これ安いよ!」
「いいのが手に入ったよ!」
いや。むしろ活気のいい街って感じだ。
「まぁ元々の街を、市政とで仕切ってるだけだから、基本住民が何か不自由があるとかはないよ」
とミユ。
なるほどね。つまり、その都市の中枢へ入り込んで掌握軍をやっつけるわけね。
「でも、あまりにも反抗したりしてると捕まることもあるし、軍事力として特に男性は扱われていることが多いかな」
「ってことは、この都市の中枢の掌握軍をやっつけても、その反抗してる人や、軍事力として扱われている男性くらいしか仲間にならないんじゃない?」
「まぁ。だいたいどこの都市でもそうだと思う。本当に支配されている場所もあるかもしれないけど」
ってことは、人財の確保は限定的になりそうだね。
「勇者様どうします?」
ルッコラ君が聞いてくるけど、やることは変わらないよね。
「まずは、掌握軍がこの都市のどの程度まで入り込んでいるのか見極めよう」
こうして私たちは手分けして、情報を集めることにした。
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昼過ぎ、私たちは街のカフェで落ち合って、それぞれの情報を照らし合わせた。
結論、この都市は支配されていないことが分かった。
「支配されているってゆーのは、あくまでも噂だったようね。この分だとそういった噂は大きく広がっていそうね」
「どういうこと?」
ルッコラ君がキョトンとした顔で聞いてくる。
「つまり、人民掌握軍は例えば世界の8割を支配してるわけでしょ? でもそれはあくまでも噂レベルであって、実は半分くらいしか支配してないのかもしれないわ」
なるほどー。とルッコラ君は言ってるけど、ホントに理解できているのかは微妙だね。
ま、収穫もあったから良しとしよう。
「掌握軍に捕まっている人質はいるんだよね?」
ミユに訊くと、ミユはコクンと頷いた。
「なら、まずは人質を解放して私たちの街に連れて行きましょう」
これで人財の確保はなんとかなりそうね。
ということで、私たちは人質が捕らえられているという大きな屋敷の前までやって来た。
「あの門番とかは掌握軍ってことで間違いないわね?」
私がミユに最終確認をする。
一般人を攻撃してしまったらまずいからね。
「私たちは戦力が限られてるから、基本戦いはしない方向で動くよ?」
そのための作戦が始まった。
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人質解放作戦の内容はこうだ。
ミユは掌握軍だったので、まずはミユが潜入する。
潜入したミユにルッコラ君がひょっこりついて行く。
ミユは人質の監禁場所を割り出し、ルッコラ君が私の元に戻って屋敷の鍵をそっと開ける。
あとは、頑張って見つからないようにコソコソ潜入するだけ。
「無茶がある気がするけどなー」
ミユとルッコラ君が考えたこの作戦に、私は賛同できていない。
まず、屋敷の入り口に見張りが2人いる。
この時点でどうやって見つからずに潜入するのか、その方法が思いつかない。
それに関しては、ミユからの合図を待てとしか言われていない。
うーん。合図ねぇー。
私は物凄く心配と不安しかないが、ミユとルッコラ君を見送った。
ミユはさすがは元掌握軍というだけあって、すんなり屋敷の中に入れていた。
私はかれこれ1時間近く屋敷の外に居る。
正直、他の作戦を考えた方がいいと思う。
すると、ひょっこりルッコラ君が戻ってきた。
「どう?」
「人質の場所は見つけたよ」
なんだか誇らしげだね。
「あとは、合図があれば潜入するだけだけど、本当に大丈夫なの?」
「任せて! 絶対にうまくいくよ」
にこりと微笑まれては、信用するしかないじゃない。
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ガシャーン!
ルッコラ君が戻って来てから、更に1時間くらい経った頃、屋敷の中で大きな物音がした。
何かが割れる音や爆発音にも聞こえるような音まで。
続いて悲鳴が。
屋敷の住人、って言っても人質以外は掌握軍だろうけど。とにかく、住人たちが騒ぐような悲鳴だ。
「合図だよ勇者様」
ルッコラ君が私の手を引く。
え? この音の発生主ってミユなの?
とゆーか何をしでかしたの?
「ちょ、ちょっとルッコラ?」
驚いたことに、屋敷前の見張りが消えていた。
騒ぎを聞きつけて屋敷内に入ったのだろう。
なるほどね。この騒ぎに乗じて人質を解放するわけね。
んじゃ、潜入開始としますか!
屋敷の中は外観とは違って、質素だった。
もっと豪華な飾り付けとかあるかと思ったけど、昔の家屋って印象。
木造の建物で、部屋の1つ1つがだだっ広い。
外履きのまま歩けるようになっている通路を挟むように、そのだだっ広い部屋がある感じだ。
外履きを脱いであがるんだろうな。
その部屋の奥は、襖で仕切られているが似たような部屋が続いているのだろう。
私を先導するルッコラ君は、左右の部屋には目もくれず、ただこの土足で歩ける通路を真っ直ぐに進んで行った。
いくつかの部屋を通り過ぎると、だんだん照明が暗くなっているのが分かる。
陰湿という言葉がピッタリだね。
なるほどね。この先に牢屋があるんだ。
「着いたよ」
私の予想は見事的中していた。
ミユが牢屋の鍵を開け、人質に私の話しをしているところだった。
「今話してた勇者だよ」
ミユが紹介してくれるけど、とりあえず急いでここを離れようか。
こうして私たちは、私がよく分からない内に見事人質を解放して、レタス村まで帰還したのだった。
