それでも好き~第8恋 失恋~

それでも好き

 修学旅行はあっという間に終わった。

 残るイベントといえば、夏祭りくらいだ。

「むっちん! 夏祭り一緒に行かない?」

 高山が声をかけてくる。

 しかし俺には先約があった。

 俺はクラスの友達と夏祭りに行くことになっていたのだ。

 とはいえ、友達に好きな女子がいて、その女子と付き合いたいから引き立て役なわけだが……

 待ち合わせに来たのは、クラスでも一番の美人と呼ばれている佐藤ゆき。

 そしてその友達の村山唯。

 俺の友人竹村はじめ。

 竹村は村山と付き合いたいらしいから、自然と佐藤と2人きりになる時間が増える。

「武藤くんは午前中部活してたの?」

「そうそう。佐久間がひどっくてさー」

 佐藤とは教室で隣同士の席だが、正直あまり話したことはない。

 だが、確かによく見れば美人で人気があるのも頷ける。

「色んな人に告白してるんだってー?」

 ニヤニヤと言われた。

「どこでその情報を!」

 わざと驚いて見せた。

「私は告白されてないんだけどなぁー?」

 ジト目で見られる。

 え? 告白待ちなの?

「むっちんじゃん! 彼女と来てたの?」

 高山だ。

 一番見られたくない。

 しかも佐藤を彼女だと思い込んでいる。

「お幸せにねー」

 高山は、他の女バスと一緒に屋台へ向かって行った。

「勘違いされちゃったね」

 佐藤が照れ笑いをする。

 俺の心の中の何かが壊れた。

「じゃあ」

「勘違いじゃない関係になる?」

「いいよ」

 両頬をピンク色に染めたまま、佐藤は思いっきり笑顔を見せた。

 ●

 竹村は無事に村山と付き合えたようだ。

 そして色んな人に告白をしていた俺に彼女ができたという事実は、あっという間に学校中に広まった。

 俺は佐藤のことは可愛いとは思うが、好きとかそういう感情は一切なかった。

 なんなら、須藤や笠間の方が上な気すらする。

「おはよう武藤くん」

「はよ」

 席が隣だから自然と会話は増える。

 その分、重荷のような負荷が胸に落ちた。

 俺はますます部活に力を入れた。

 何かに打ち込んでいないと、自分が自分じゃなくなりそうで怖くて……

「むっちん」

 部活が始まる前に高山が声をかける。

 なんだか話すのは久しぶりな気がする。

 佐藤と付き合ってしまった後ろめたさで、高山と目を合わせられない。

「私も付き合うことにしたから!」

 世界が音を立てて崩れた。

「あの日、むっちゃんに彼女がいることが分かって決めたの!」

 笑顔で去っていくその後ろ姿を、ただ間抜けに突っ立って見送ることしか俺には出来なかった。

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