修学旅行はあっという間に終わった。
残るイベントといえば、夏祭りくらいだ。
「むっちん! 夏祭り一緒に行かない?」
高山が声をかけてくる。
しかし俺には先約があった。
俺はクラスの友達と夏祭りに行くことになっていたのだ。
とはいえ、友達に好きな女子がいて、その女子と付き合いたいから引き立て役なわけだが……
待ち合わせに来たのは、クラスでも一番の美人と呼ばれている佐藤ゆき。
そしてその友達の村山唯。
俺の友人竹村はじめ。
竹村は村山と付き合いたいらしいから、自然と佐藤と2人きりになる時間が増える。
「武藤くんは午前中部活してたの?」
「そうそう。佐久間がひどっくてさー」
佐藤とは教室で隣同士の席だが、正直あまり話したことはない。
だが、確かによく見れば美人で人気があるのも頷ける。
「色んな人に告白してるんだってー?」
ニヤニヤと言われた。
「どこでその情報を!」
わざと驚いて見せた。
「私は告白されてないんだけどなぁー?」
ジト目で見られる。
え? 告白待ちなの?
「むっちんじゃん! 彼女と来てたの?」
高山だ。
一番見られたくない。
しかも佐藤を彼女だと思い込んでいる。
「お幸せにねー」
高山は、他の女バスと一緒に屋台へ向かって行った。
「勘違いされちゃったね」
佐藤が照れ笑いをする。
俺の心の中の何かが壊れた。
「じゃあ」
「勘違いじゃない関係になる?」
「いいよ」
両頬をピンク色に染めたまま、佐藤は思いっきり笑顔を見せた。
●
竹村は無事に村山と付き合えたようだ。
そして色んな人に告白をしていた俺に彼女ができたという事実は、あっという間に学校中に広まった。
俺は佐藤のことは可愛いとは思うが、好きとかそういう感情は一切なかった。
なんなら、須藤や笠間の方が上な気すらする。
「おはよう武藤くん」
「はよ」
席が隣だから自然と会話は増える。
その分、重荷のような負荷が胸に落ちた。
俺はますます部活に力を入れた。
何かに打ち込んでいないと、自分が自分じゃなくなりそうで怖くて……
「むっちん」
部活が始まる前に高山が声をかける。
なんだか話すのは久しぶりな気がする。
佐藤と付き合ってしまった後ろめたさで、高山と目を合わせられない。
「私も付き合うことにしたから!」
世界が音を立てて崩れた。
「あの日、むっちゃんに彼女がいることが分かって決めたの!」
笑顔で去っていくその後ろ姿を、ただ間抜けに突っ立って見送ることしか俺には出来なかった。
