「え。ちょっと待ってくれよ。何で辞めんの?」
「だってこのファミリー飯がまずいんだもん」
俺は愕然とした。
たったそれだけ?
それだけの理由で辞めるのか?
ここまで育てるのめっちゃ大変なんだぞ!
くっそー。こんな滅茶苦茶な世界ありえないだろ!
ファミリー定着率10パーセントだぞ!
俺が脱退代行を始めた頃は、まさかこんな風になるなんて思ってもみなかったのに……
はぁ。
ため息をつきながら、俺は自分が脱退代行を始めた頃のことを思い出していた。
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「モズ~もうあんなファミリー嫌だわー。代わりに脱退の手続きしてくんねぇ?」
「ありえないのよ! 水のダンジョンの踏破に付き合ったのにたったの500ゴールドよ? ファミリー構成員が多いからって!」
「頼む! 俺の代わりに脱退するって言ってきてくれ!」
今日も大忙しだな。
これで何件目だよ。
やっぱり脱退代行を始めたの正解だわー。
にしても、これだけ依頼が舞い込むと自分で複数のファミリーに行くのもめんどいな。
そうだ。女神から貰ったスキル、”世界システム”でスマホのようなものを作って、それで簡単に脱退申請できるようにしよう。
確か世界に干渉できるけど、万能ではなくて全世界に認知されるとか何かを普及させるとか無いものを作れるとかそういった力って言ってたな。
あとなんだっけ?
使うと脱退率が上がるとか言ってたけど関係ないだろ。
「はいこれー」
俺は、脱退代行を頼みに来た人にスマホのような物を渡した。
「これは?」
「ここのボタンを押すだけで、俺に連絡が来るようになっている。ボタンを押せば、今のファミリーを辞めたいってことが俺に伝わる仕組みだ」
「はぇー。便利だなー」
冒険者の間に、俺が開発したスマホのような物は瞬く間に普及した。
そして、それと同時に俺は似たような物をファミリーの長に渡した。
「これは?」
「辞めたいって言うやつがいるよって俺から連絡がくる機械だよ。わざわざ俺が出向いて色んな手続きをする必要がなくなる。ギルドにもこの機械ですぐに伝わる」
「時間の削減になるわけか」
こうして、ギルドとファミリーにもスマホのような物が行き渡り、この世界は俺を中心に脱退ブームとなった。
脱退代行の俺はかなり儲けた。
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「んじゃ。お世話になりましたー」
いや軽すぎだろ!
飯がまずいだけでファミリーから抜けられてたまるかっての!
「考え直してくれないか?」
「無理っす。もう申請しちゃったんで」
その手には、俺がかつて作り出したスマホのような物が握られていた。
ボタン1つでファミリーを脱退できる画期的なシステム。
何が画期的だよ!
「また紹介屋に頼めばいいじゃないっすか」
紹介屋……
俺が冒険者以外の仕事で初めて始めたやつだ。
「リーダーって、時代の先駆けっすよね。紹介屋に脱退代行。次は何を始めるんすか?」
とどめの捨て台詞を置いて、彼は去って行った。
そう。俺は脱退代行を始める前に紹介屋をしていた。
そして紹介屋と脱退代行が出来上がったことで、気楽にファミリーを抜けられる状況が出来上がり、脱退ブームとなってしまったのだ……
俺が”世界システム”を使ったのもそれに拍車をかけている。
今日もあの有名なS級ファミリー、バハムートファミリーが瓦解した。
このままだと、俺も飯が食えなくなるよなきっと……
しょうがない。
めんどくさいけど、俺がこの脱退ブームを終わらせるか――

