「モズ! あんたのおかげで辞めれたよ! あそこのファミリー朝練とかあってめんどくさかったんだよねー」
「わかるわー。俺が前いたところなんて、ミーティングが週1だぜ?」
脱退代行屋のロビーは常に人がごった返している。
今やこのギルドで一番人が集まる場所なんて言われている。
やっぱり俺が開発した、スマホのような物はかなり便利でみんなどんどん脱退代行を使ってくれる。
使われれば使われる程、俺の懐は潤う。
脱退代行を始めた頃はそこまで依頼があったわけではなかったから、今の光景が嘘のようだ。
それまでも、日常的にファミリーを抜ける人はいたが構成員と揉めることも多かったし俺も何度か揉めたんだよな。
「モズ!」
怪訝そうな顔でカッコウが歩み寄ってくる。
「久しぶりだなカッコウ」
「久しぶりじゃない! 君の作った脱退代行屋のおかげでこのギルドは大変なことになっているんだぞ」
「大変なこと?」
ギルドが何か起きても俺の生活が変わるわけではないし、正直どうでもいい。
が、カッコウとは以前に一緒に冒険者仲間だったことがある。
めんどくさいが、こういう関係をないがしろにすると、脱退代行屋の客足に影響が出るかもしれない。
「さきほど、ヤマタノオロチファミリーが解散した」
「あの有名な? すげーじゃん!」
「すごくない! 解散した原因は何だと思う?」
知らねぇよ。
ダンジョン踏破を何回も失敗したからとかじゃねぇの?
「ファミリーのメンバーが減ったからだ」
「はーん。なるほどね。人手不足ってやつだ」
「そうだ。君の作った脱退代行屋のせいで人手不足に陥っているファミリーがたくさんいる! そのせいでギルドにはお金が回ってこなくなっている」
「ギルドは公務員だろ? 黙ってたって金は入ってくるんじゃねーか?」
「君の言うコウムインというのが何なのかは知らんが、ファミリーが減れば、ファミリーからの寄付金は減るに決まっているだろ?」
「けどさ。ギルドがなくなっても俺の生活は困らないぜ?」
「君ってやつはいつもそうだな! 君が困らなくても困る人はいるんだ! 特に冒険者はギルドから仕事を得ている!」
「なら、冒険者もギルドもやめればいいじゃん」
「そう簡単に辞められるものか」
「それはそっちの都合だろ? 俺は俺の都合で脱退代行屋をやっているんだ。文句言われる筋合いはないよ。ま、昔のよしみだ。ギルド辞めたくなったら代わりに辞めますって言ってやるよ」
●
カッコウが言っていたように、あちこちでファミリーを脱退する人が増えていて、いわゆる社会現象にまでなっているようだ。
「またファミリーが減ったぞ」
「この街のギルドは財政危機らしいぞ」
「それって赤字ってことか?」
「ファミリーからの寄付金もないし、冒険者が減ってるからな」
「うちもいつまで続けられるかわかんねぇよ」
肉屋と魚屋が真剣な話しをしてる。
運ばれてくるニュースペーパーにも、どこぞのファミリーが解散したとか、ギルドの収入が前年比何パーセントだとかの話題ばっかりだ。
「ようモズ。景気よさそうだな」
ニュースペーパーのところで働いているおっちゃんだ。
「うちの脱退代行屋の広告をまた出したくてさ」
「またか? もう十分客がついてるって噂だぞ?」
「この街には認知されてるが、隣街とかにはまだまだだ。だから隣街に広告を出したいんだ」
「まいったねこりゃ。このギルドだけじゃなくて隣のギルドまで破滅に追い込むつもりかよ!」
わっはっは。とおっちゃんは笑って、広告を出してくれた。
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「しゃも。今日呼んだのは、隣ギルドの支店の店長になってほしいからなんだ」
脱退代行屋の規模はどんどんでかくなる。
この街を本社として、他の街にも支店を置いた方が絶対に儲かる。
「任せろ! 俺に冒険者よりもいい儲け話を教えてくれたモズのためにも、支店をでっかくしてやるぜ!」
俺が支店をいくつか出す頃には、他の者が別の脱退代行屋を作ったりして、世の中は正に脱退ブームとなっていた。
しかも、以前に俺が作った冒険者をファミリーに紹介した紹介屋もたくさんあるから、脱退しても簡単に他のファミリーに所属することができた。
これが脱退ブームに拍車をかけ、俺たちの脱退代行屋にはスマホのようなものがあったので、他の脱退代行屋よりもたくさんのお客がきていた。
そして、このブームが後に俺自信の首を絞めることになるのだった……

