どうせ勝てない魔王

どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第26娯楽~

朝の魔王城は、いつもより静かだった。 誰もが起きているのに、 誰もが話していない。 廊下ですれ違えば、挨拶はある。 だが、言葉は短く、目は合わない。 ――昨日までは、違った。 魔王城は、 逃げてきた者たちが、ようやく肩の力を抜ける場所だった...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第25娯楽~

討伐部隊が引いた後の魔王城は、奇妙な静けさに包まれていた。 泣き声も、怒号もない。 あるのは、視線だけだった。 魔王が歩くたび、 人も、魔族も、ほんの一瞬だけ言葉を止める。 そして―― 目を逸らす。 それは敵意ではない。 もっと厄介なものだ...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第24娯楽~

城門の見張りが、最初に気づいた。「……また来ます」 その声は、淡々としていた。 だが、城内の空気は一瞬で凍りついた。 砂煙。 規則正しい隊列。 掲げられた王国旗。 討伐部隊だった。 ● 城内は、混乱にはならなかった。 むしろ、静かすぎるほど...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第23娯楽~

事件は昼間に起きた。 だからこそ厄介だった。 夜ではない。 誰もが起きていて、誰もが活動していて、 誰もが「何かを見た気がする」と言える時間帯だった。 ●「……誰か! 誰か来て!」 中庭に少女の声が響いた。 人が集まるのは一瞬だった。 倒れ...
どうせ勝てない魔王

どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました~第22娯楽~

最初の違和感はあまりにも些細だった。「……ねえ、魔王様ってさ」 食堂の片隅で誰かがぽつりと呟いた。「……本当に、私たちの味方なのかな」 声は小さかった。 誰かを扇動するような強さはない。 ただの疑問。素朴な不安の言葉。 だが―― その言葉は...