勇者は発情中~第四十一エロ 魔界の夜明け~

勇者は発情中

 魔界の夜明けは死の国同様に昼間と変わらなかった。

 ちあが元気にしているので、夜中ではないことが分かる。

 助態が横に目をやると、まだ寝ているぱいぱいが視界に入った。

 ゴクリ。と助態が喉を鳴らす。

 ボリボリとぱいぱいがパンツの際を掻く。

 その瞬間、助態の心臓が早鐘のように鳴る。

『もう少しだ、もう少しでろりまんが見れるかもしれない!』

 トラ柄パンツを助態が凝視するとコツンと頭を叩かれた。

「こら。何をしておるのじゃ」

 ちあが起こしに来たらしい。

「いや、寒そうだから布団でもかけてあげようかと思ってな?」

「本当か? ずっと見ておったようにちあには見えたがのぅ?」

 小さくても女だ。

 ちあは助態の嘘をすぐさまに見破った。

「ほんとだって」

 これ以上ボロを出さないためにも、助態は起き上がって顔を洗いに行った。

「おはようございますティーパンさん。今日はこっちに行ってみませんか?」

 なんてそれらしい会話をして、ちあの目から逃げた。

 その様子を見てアンアンは、ほっと胸をなでおろしたのだった。

 朝食後、助態がティーパンに適当に提案した方へ進路を取る。

 今助態たちが居る場所は、魔界の中のモンスターの街と呼ばれるエリアで、雷獄の洞窟というエリアを目指していることになる。

 しかし、鬼侍女三姉妹の家はモンスターの街エリアにあるらしく、雷獄の洞窟は名前しか聞いたことがないらしい。

「何にもないですね」

 純純が隣を歩くルブマに言う。

 目の前を歩く助態にももちろん聞こえる。

 ちあの目から逃れるために適当に提案をしたが、本当に何もなく助態はちょっと落ち込んでいた。

 そんな助態を気遣ってか、はたまた天然の純純に対して何と言えばいいのか分からないからなのか、ルブマは曖昧に苦笑いをして返していた。

 「あれは何?」

 ちょうどルブマが苦笑いをしていた時に、目の前に狼煙のような煙が何本か上がっているのを見てアンアンが言う。

「夜明けの合図だよ?」

 ちんちんが何でもないという感じで答える。

「「「夜明けの合図?」」」

 鬼侍女三姉妹以外のメンバーが声を揃えて言う。

 声を上げた全員が足を止めて鬼侍女三姉妹を見た。

 ●

 魔界では当然の現象の1つに、夜明けの合図があるとぱいぱいが説明する。

 夜明けの合図とは、地面から狼煙のような煙が上がる現象のことで、決まって夜明けの時間帯に起こるという。

「それだけなら何でもないんだけどねー」

 ぱいぱいがボリボリと相変わらず股間を掻きながら言う。

 ゴクリ。と助態が喉を鳴らして生唾を飲んだのに気づいたくびちが、優しく注意する。

「男性の前でそんなところを掻くもんじゃないわ」

「そうっすよー。特に助態さんのような性欲モンスターの前では」

 ついさっきまでその辺でおしっこをしていたぱいおが同意をするが、全く説得力がなかった。

「で、それだけじゃないってどういうことなんだい?」

 ティーパンは、何か問題がありそうな言い方が気になった様子。

「あーうんとねー。その煙って物凄く熱くて猛毒なんだって。それにどこに発生するか分からないから危険なんだよねー」

「なんか水蒸気爆発に似てる感じがするな。それにしてもどこにでも発生するってことは、最悪の場合この場所に発生する可能性もあるってことか?」

 助態が使った水蒸気爆発という言葉は、この世界には通じなかったようだが、この場所にも発生する可能性があるというのはどうやらそのようだ。

「まるっきしのランダムって大変だねー。魔界の生き物はみんな命がけなんだ?」

 ティーパンが感心したように話す。

「慣れれば何てことないけどねー」

 今度はちんちんが胸当てを下にずり下げて胸元を掻きながら言う。

 声に反応するように助態がちんちんの方を向いた瞬間、純純、くびち、ルブマ、ちあの4人に顔面パンチを食らった。

「な……何で?」

 バタンと助態がその場に倒れ、純純がキャー、勇者様ー! と自分のしでかしたことを後悔しながら介抱していた。

『くっそー。子供おっぱいが見れたかもしれないのにー』

 後から何で殴られたのかの理由を聞いた助態は、1人物凄く悔しがっていた。

 くびちとルブマは助態に他の女の子の体を見せないために殴った。

 純純も無意識にそういった気持ちがあったのだが、本人に自覚はなかったようだ。

「ほんとごめんなさい勇者様。何でか咄嗟に手が出てしまっていました」

 何度も何度も純純が謝るが、謝られても助態の気持ちは晴れない。

 今朝は既に3回も鬼侍女の体を見るチャンスを逃している。

『なんか、このパーティーにいると、ことごとくエロチャンスを逃すなー。ハーレムなのになんかハーレム感もないし……』

 ポリポリと頭の後ろを掻きながら、助態が周囲を見渡す。

 まだ助態は寝転んでいる。その様子を純純は本気で心配し、ティーパンは顔を覗き込んで、もうすぐ出発するよ。と言う。

 ルブマはおろおろしくびちがルブマに、

「おたおたしないの。自分でしたことでしょ?」

 とぴしゃりと言っていた。

 もふともとぱいおはからかっているかのように、にやにやして助態を見ている。

「全く。子供の、それもモンスターのなんか見たがるもんじゃないぞ?」

 ちあが両腰に手を当てて言う。

 見たいならちあが見せてやるわい。なんて一言を付け足して。

 そんな仲間を見て助態は、ま、いっか。と呟いた。

「ゆ、許してくれるんですね!」

 その呟きを許しの呟きと勘違いした純純が、思いっきりの笑顔で言った。

『そういうつもりじゃなかったんだけど』

 そんなことを思いながらも、

「もう大丈夫だよ」

 軽くポンと純純の頭を叩いてにこりと笑顔で答えた。

 助態のこの行為は生前の助態からしたらなんて事はない行為だった。

 しかしこの世界に来てからやったのは初めてのことであり、その姿が周りの人から見ても妙にしっくりときていた。

 思わず一瞬全員が、助態と純純に見とれるほどだ。

『ふーん。さすがは勇者とヒロインだねぇ』

 そんなことを思いながらティーパンが口火を切った。

「さて、出発しようか?」

 こうして再び進み始めた。

 ●

 幸いにも、魔界の夜明けが道中に起きることはなかった。

 いつの間にか各地に見えていた煙も消えていた。

「魔界の夜明けとやらの現象は終わったのかい?」

 もふともがぱいぱいに聞く。

「うん。次は夜明けの終わりが始まるよ」

 さも当たり前のようにぱいぱいが言った夜明けの終わりは、魔界の夜明けによってできた穴から熱風が吹きあがる現象のことのようだ。稀にマグマが噴き出ることがあるようで、助態は噴火に似ていると呟いていた。

「要はその穴の近くを通るのは危ないってことだよ」

 みんなが、噴火という言葉を知らなかったのを見て助態が端的に説明をする。

「勇者の住んでた世界には、そんな危険なことが起こるんだ?」

 ティーパンが感心したかのように言う。

「ところで助態。ちょっといいかしら?」

 くびちが怒った顔で助態を背後から呼ぶ。

 その隣にはアンアンが控えている。

 助態には嫌な予感しかしないが、ティーパンに、行ってこい。わだかまりはなくした方がいい。と言われ仕方なしに後方へと下がる。

 助態の代わりに先頭でティーパンの隣になったのは、もふともとヌルヌルだ。

「大丈夫なのか?」

 心配そうにヌルヌルが言う。

「大丈夫だよ」

 他のメンバーには絶対見せないような優しい笑顔で、もふともがそれに答える。

「そうそう。いつものことだから」

 ティーパンも請け負った。

「は、話しって?」

 おどおどしながら最後尾で助態が聞く。

「あなたねぇ。いくら溜まってるからってモンスターのしかもあんなガキんちょにまで発情することないんじゃないかしら?」

 くびちが怒る。

「そうよ。私が性欲を吸うの大変なんだから」

 隣でアンアンも怒った。

「まったくじゃ! ちあという女がいながら」

 ちあまで参加してきた。

 そんな様子を前を歩く純純とルブマが少し心配そうに見ていた。

「大丈夫っすよ」

 そんな2人にぱいおが素っ気なく言う。

 どうやらぱいおも助態の性欲モンスターぶりに呆れているようだ。

「ルブマさんにならともかく、ちあさんとかモンスターにまで欲情するのはさすがにひくっすけどね」

「ほぇ? 何で私ならいいんですか? どういう意味ですか!」

 キョトンとした顔を見せた後にルブマが怒りながら言う。

「だってルブマさんもねぇ。欲情する要素がないじゃないっすか」

 これ見よがしに自分の胸を強調しつつ、ルブマのまな板をぱいおが見る。

「なっ失礼な! これはアーチャーの宿命なんです!」

 ルブマがプリプリして先を歩くティーパンたちへ追いつこうと、歩を早める。

 瞬間、立ち込めていた霧が更に濃くなって、近くを歩いているメンバーですらお互いの居場所が把握できなくなった。

「全員止まれ!」

 ティーパンが鋭く注意したのと同時だった。

「きゃー! 大変です!」

 ルブマの声が鳴り響いた。

 濃い霧が妙な気持ち悪さを演出していた。

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