「開けるぞ?」
目の前の大きな扉に手を当てながら助態が他のメンバーに言う。
全員が頷き、助態が扉を開ける。
ギィィィィィィーという木の軋むような音が再びして扉が開いた。
扉の先は、またしても真っ暗闇の長い廊下だった。
同じようにある程度の間隔で燭台が掲げられており、燭台には蝋燭に火が灯った状態でその足元をぼんやりと照らしていた。
朧げな明かりの中、先ほどとは違う光景があることに気が付いた。
「絵がない」
ヌルヌルだ。
さっきまでの長い廊下では、蝋燭と蝋燭の間に絵が飾られていた。
結局その絵がモンスターでちあを攫って行ったわけだが、今回は絵の代わりにカーテンが蝋燭の間にあった。
「趣味悪いわね」
カーテンは近くで見ると、血のように真っ赤なカーテンであることが分かった。
どうやら真っ赤のカーテンはくびちの趣味には合わないらしい。
「全部この色なんでしょうか?」
純純もあまり好みではないようだ。
「このお城の雰囲気には合っていますね」
純純の隣でルブマが苦笑いをする。
「カーテンの中になんかあるんすかね?」
ぱいおがカーテンを開けようとすると、それをティーパンが止めた。
「待って! さっきのことがある。不用意なことはやめよう」
そう言ってぱいおの手を掴むと、部屋の中なのにヒュオっと風が吹いてカーテンを揺らした。
「部屋の中なのに風?」
ティーパンが訝しむ。
「カーテンの裏に窓かなんかがあって明いてるんですかね?」
助態もカーテンに近づく。
「気にしないで先に進むという選択肢もあるが?」
とヌルヌル。
「えー。でも気になりません?」
ぱいおがユラユラ揺れるカーテンを下から覗く。まるでスカートの中を覗いているように見える。
「アンタ毎回毎回よくそーゆーエロいこと思いつくねぇー」
ぱいおの怪しい行動にもふともが感心する。
「まぁーウチは変態っすからね。助態さんや酔った時のルブマさんには負けるっすけど」
ぱいおが自分の癖を認めると、ルブマが否定した。
「ふぇ? 私は変態じゃありませんよ! えっちぃことは嫌いです!」
「酔った時のあなたは、かなり変態よ?」
ルブマの後ろからくびちがそう言うと、ルブマはがっくりとうなだれてしまった。もうお酒は飲みません。とか言っている。
「ル、ルブマさんはたまに羽目を外しちゃうだけですよ」
純純がフォローにならないフォローをすると、さらにルブマがうなだれた。
「それで、カーテンは無視するのかしら? それとも開けてみるのかしら?」
アンアンが助態に問う。
「そうですねぇ……」
少し考えてから助態が結論を出す。
「どこにちあが攫われてるかも分からない。罠かもしれないけど1つ1つ確認したい。もし見落としていたら俺はきっと後悔すると思うから」
そう言いながらカーテンを開けた。
●
カーテンを開けると普通に窓があった。
窓は開いておらず、どうしてカーテンがユラユラ揺れているのかは分からなかったが、すきま風かなんかだろうと助態は考えた。
相変わらず雨は降っていないのに雷だけは激しく鳴っていた。
先ほどの長い廊下では気にならなかったのに、今回の廊下では雷の音が城の中にまで届いている。
「なんだ窓か……」
助態がほっと胸をなでおろす。
「変な天気ですね」
純純が窓の外を見て言う。
「雨は降ってないのに雷だけが激しく鳴ってるもんなぁー。月明りもない真っ暗闇の夜だしほんと変な天気というか変な空間だよな……」
助態が言うとティーパンがその言葉に反応した。
「勇者はここを空間って認識しているのか?」
「違うんですか? 魔界とは違う空間が幽霊城だと思ってるんですけど」
「私は空間という認識はなかったな……別の場所に飛ばされたって感じだな」
「ウチも別の場所に飛ばされた感覚っすよ?」
ぱいおがティーパンの感覚に同意する。
「そもそも別の空間ってどういう感じなんだ?」
もっこりが助態に問う。
「どういうって聞かれると困るんだけど、なんだろ。あの門柱を通った時から別世界に転送された感じとゆーか、ここは仮想現実みたいな感じかな?」
どうやら助態と純純以外は幽霊城という全く別の場所に移動したという感覚だったようで、助態だけは幽霊城そのものが魔界とは別の空間にあるという感覚を抱いていたようだ。
「勇者とヒロインだけが感知できる何かがあるのかもね……ま、今のところその違いが何か大きな影響を与えるかどうかも分からないけどね」
ティーパンがそう結論づける。
窓は開かなかったので、次のカーテンを開けてみた。
「扉?」
カーテンを開けると突然扉が現れた。
助態が思わず何でカーテンに隠れて?と声を漏らした。
「変な城っすね」
ぱいおが扉に手を触れようとすると、再びティーパンが止めた。
「罠かもしれない。勇者に判断を委ねよう」
「開けてみます。とにかく1つ1つ確認していこうと思います」
即答だった。
そして助態が扉の取っ手に手を伸ばした。
●
カーテンの奥にあった扉は絵だった。
「何だってこんなヘンテコないたずらみたいなことが!」
何個目かの扉の絵に助態が怒る。
さっきから蝋燭の間にあるカーテンを開けると窓か扉の絵しかなかった。
「侵入者をおちょくるのが楽しみな城主なのかもしれないな」
さすがのティーパンも呆れている。
もう何個めのカーテンを開けたのか分からない。
それに助態にはもう1つ気になることがある。
「さっきから、なんか変な音がしませんか?」
雷の音の他にという意味だ。
「確かにさっきから金属同士を打ち付けるような音がしてるね」
ティーパンがそういえば、という感じで言う。
「ちあさんがウチらに助けを求めてる音っすかね」
はて? という感じでぱいおが言うがその音に気づいてしまうと、どんどん気になってしまい、鳴りやまないことが全員を少しずつ不安にさせた。
「1回気になり出すとどんどん気になるな」
とヌルヌル。
「ホントに気味が悪いねぇ」
もふともは腕をさすっている。
「一体何の音なんだ?」
もっこりは音の正体が気になるようだ。
「そんなことよりも不気味じゃない?」
はあはあはもっこりにしがみついている。
もっこりは、歩き辛いぞ。とか口では言ってるがまんざらでもなさそうだ。
「もし本当にちあが助けを求めてる音なら、この音がする方へ向かうのがベストなんじゃない?」
アンアンがもっともな意見を言う。
どうやら淫魔族だからなのか、アンアンは幽霊城を怖いと感じていないようだ。
「勇者様どうしますか?」
純純が助態の袖を掴んだまま問う。
本当に怖そうな表情をしている。
「音のする方向を目指しつつカーテンを開けよう」
助態の考えは一貫して変わらない。
こうして一同は次のカーテンを開けることにした。
次のカーテンでは全く別のものがあるのだった――
