勇者は発情中~第五十四エロ 洞窟での戦闘~

勇者は発情中

 小休止を終えてから、モンスターとの遭遇に注意しつつ、助態たちはとりあえず飲料の確保を最優先課題とすることに決めた。

 しかし、先ほどのように都合よく食べれるモンスターが出現することはあっても、なかなか飲み物を得られる場所は見つからなかった。

 通常、洞窟では水が溜まっている場所があったりするものだが何しろこの洞窟、雷でできている。水脈などがあるとは思えないのだ。

「洞窟なのにひんやりしておらんのは不思議な感じじゃのぅ」

 助態の背中におぶわれながらちあが言う。

 先ほど強力な魔法を使って疲れたーと言ってきたのだが、ちあの魔力は底なしだ。ただ甘えているだけだ。

 ちあが甘えるのは、最近助態と純純の距離が近いと何となくに感じているからだ。

「ひんやりしてないから水脈もないとかあるのかな?」

 ちあをおぶりながら助態が聞く。

「どうじゃろうな。ここの世界の理は常識では測れんじゃろ?」

 幼い子に正論を言われ、助態は納得させられる。

 すると目の前にモンスターが現れた。

 雷スライム:危険度A。雷系統の攻撃を仕掛けてくる。打撃無効。

 ビブリン:危険度C。色んなアイテムを持っており、アイテムを駆使して戦う。知能が高い。見た目は黄色いゴブリン。

 電気ネズミ:危険度C。全身から電気を発する。

「危険度Cが2種類にAが1種類か……」

 ティーパンが素早く光の騎士を召喚した。

 ビブリンは3匹、電気ネズミにいたっては5匹も出現している。

「危険度が高い雷スライムは私が引き受けよう。ビブリンは特殊なアイテムを使うから注意しな。電気ネズミは遠くから攻撃をするんだ」

 ティーパンが光の騎士を引き連れて雷スライムへ向かって走り出す。

「ちあがビブリンの動きを止めておくのじゃ。数多なる生命体の動きよ主の命に逆らえ!動作止間零(ストップ)」

 紫色に輝くバスケットボール大の輪がビブリンへと向かい、ビブリンを縛り付けた。

「今じゃ! 電気ネズミを倒すぞ」

 ちあの息が珍しく上がっている。

 縛り付けるのに体力を消耗するのだろう。魔力じゃなくて体力だというのがちあには酷な点だ。

 助態たちが電気ネズミ5匹と対峙した。

 ●

 電気ネズミは危険度Cという割にはそこまで強いモンスターではなかった。

 ティーパンが注意した通り、遠くから攻撃をすれば全く問題がなかった。

「確かに電気を体から放出はしてるけど、近づかなければ何の問題もないね」

 ルブマの弓矢攻撃を眺めながらもふともが余裕余裕と言う。

「自分は何もしてないけどな」

 その隣で突っ込む助態も何もしていない。

「アタイはいつも前線で戦ってるからいいんだよ。アンタはいつも役立たずじゃないか」

 むすっとしながらもふともが自分のリュックを漁る。

「お、あったあった」

 そう言って取り出したのはロープだ。

「ん? 電気ネズミを捕まえるのか?」

「まさか! アタイの職業を言ってみな」

 ニヤッと助態に向かってもふともが怪しい笑みを浮かべる。

 もふともの職業はシーフだ。

 そしてビブリンは様々なアイテムを保有している。

「まさか……」

 助態がそう言う間にもふともはもう既にビブリンの背後へと回っていた。

 ちあによって拘束されているとはいえ、動きの速さはさすがだ。

「よっしゃ! 見ろよ助態!」

 うまいことロープで引っ掛けて、ビブリンが腰にぶら下げていた革袋に入れていた飲み水を盗んだ。

「おぉ!」

 今ちょうど助態たちが悩んでいる飲料の確保をうまいこと解決してくれた。

 3匹のビブリンから飲み水を奪えるかと思ったが、飲み水を腰に引っ下げていたのは1匹のみだった。

「ま、他のやつは後回しにして電気ネズミを倒すかね」

 くるりと電気ネズミの方をもふともが向く。

 改めて助態は今のパーティ―を見渡す。

 ルブマともっこりはそれぞれ弓矢で電気ネズミに攻撃をしている。

 ぱいおとくびちとアンアンはティーパンの補助をしている。

 ヌルヌルとはあはあはちあの援護だ。

 みんながみんな戦闘に役立っている。

 役立たずなのは助態と純純くらいだが、純純はいいタイミングでアイテムをみんなに渡していた。

「役立たずだねぇ」

 そんな助態を見てもふともがニヤつく。

 自分が思っているそのものを突かれる。

 そんなことない! と言い返したいのに言い返せない自分がとても悔しかった。

 だが……

「ま、アンタはいいんだよ。いつも言われるだろ? 勇者なんだから」

「いや。その理屈がよく分からん。俺だって活躍したいし役に立ちたいんだけど?」

 助態は転生する時、自分の望む世界に転生している。そして1つだけスキルを与えられている。

 しかしそのスキルは発情スキルで何ら役に立たない。

 強いモンスターに遭遇すればするほど自分が無力であることを痛感する。

『俺が望んだ世界なのにここまで自分が無力だとはな……』

「アンタは、戦闘では役立たずだけど他で役立ってるからいんだよ。アタイらは戦闘で役に立ってアンタに恩返ししてるんだと思っておきな」

 ふん。と最後になぜかそっぽ向かれてしまった。

『照れてるのか?』

 少しほっぺが赤いもふともの横顔を見ながら助態は、心のもやもやが少し取れた気がした。

 ズキン――

 胸の奥に小さな痛みを感じる。この痛みと感情が、この先の展開が悲劇的なものとなる要因になるとは知る由もなかった。

 ●

 ビブリンはじっと目の前に立ちはだかる敵を見つめていた。

 その脳内では、誰がどんな攻撃を繰り出すのかをしっかりと記憶し全員がどんな位置に陣取っているかも把握していた。

 そして、そろそろ自分を縛り付けている輪が消えることも把握していた。

 ビブリンの知能はかなり高かった。

「がぁぁぁぁぁー!」

 ちあの魔法が消えた瞬間に1匹のビブリンが太い声を出す。

 つられるように他の2匹も雄たけびを上げる。

 その声に電気ネズミが反応をした。

 今電気ネズミは残り2匹まで減っている。

 その2匹が自分たちに弓矢を放つルブマともっこりをそれぞれ別の場所に引き離す。

「モンスターが連携してきたのじゃ!」

 ちあがみんなに注意を促す。

 先ほどまでは電気ネズミが一か所にまとまって居た。

 その場所を空間ごと弓矢で攻撃すれば問題なかったが、今は残る2匹が別々の場所にいる。

 当てずっぽうで弓矢を放っても攻撃が当たらない。

「ビブリンが指示を出しておるのじゃろ。ちあたちの行動も読まれてると思って間違いないじゃろ」

 素早くちあが分析するが、その分析は間違っていない。

 ビブリンは危険度Cだ。

 あの吸収スライムが吸収したマリンフォーや酸スライムと同じ危険度だ。

 その上知能が高く色んなアイテムや道具が扱える。

 普通のモンスターよりも弱いはずがなかったのだ。

 それがしかも3匹もいる。

「創生の炎、神聖なる水、爆ぜて混ざり合え!ことごとく灰に帰す!暗黒之炎(ダークフレア)!」

 ちあの杖先から黒い炎の球体が飛んだ。

 対象はビブリンだが、その先には電気ネズミも居るので避けられても問題ない。

 だが……

「ギギギ」

 ビブリンは羽織っていた薄汚いマントを目の前にかざした。

 それだけでちあの黒炎の球体は横に逸れた。

「特殊なアイテムのようじゃの。魔法か飛び道具を逸らす力があるようじゃ」

 そう言いながらもちあは焦っていない。さすがは幼き天才だ。

「命たる源よ大地の息吹と共に甦れ!土野針(ニードルソイル)」

 ちあの魔法をはじいたビブリンの地面が盛り上がったかと思ったら、針のような形になってビブリンを突き刺した。

「これなら躱せないじゃろ」

 ひひひ。とちあが笑う。

「ナイス! これで残り2匹だ」

 もふともが短いナイフを片手に走り出す。

 ビブリンも電気ネズミも残り2匹ずつだが、どうやらもふともが狙うのはネズミの方のようだ。

「近づくなよ!」

 ティーパンが注意したことを助態がもう一度注意する。

「分かってるよ」

 もっこりが放つ黒い独特の弓矢の背後から、もふともが手にしたナイフを投げる。

 ちょうど弓矢の矢の影にナイフが隠れるような形だ。

「ほう」

 ちあが感心する。

 元々シーフで隠れたり密かに攻撃をするのが得意なもふともだが、もっこりの武器が黒い弓矢なのを見て自分と相性がいいと判断したのだろう。

 それにしても確かに見事な判断だ。

 もふともは特に、ティーパンと一緒に戦ってから戦力が向上している。

 体捌きなんかもティーパンをよく見てるからか、ティーパンのそれに似てきている。

 電気ネズミは元々動きが速い方ではなく、ギリギリでもっこりの黒矢を避けたがもふとものナイフがあることに気づかなかった。

 そのままナイフに刺さり、ダメージを受ける。

「やっぱナイフだけじゃ倒せないか」

 チッ。と短く舌打ちをしてもふともが何本もナイフを投げる。

 その様子を見てもっこりも矢を連続で放つと、1匹の電気ネズミを見事に倒すことができた。

 これで電気ネズミは残り1匹だ。

 しかしここでビブリンの反撃があるのだった。

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