勇者は発情中~第六十二エロ 再び夢~

勇者は発情中

 暗闇の森は森という名がついているが、文字通り木がたくさん生えている。

 そのため燃やす燃料に不安がないことが分かり、ティーパンの召喚魔法を使わなくても光源を確保できるようになった。

 更に、木には実がなっているものが多く、食糧の不安も解消された。

 加えて助態の謎のサバイバル知識によって、湿った草木から水分を摂取する方法を手に入れた。

 これによってパーティ―は食糧も水分も心配なく、雷獄の洞窟のような不安はなくなった。

 しかしその分視界が悪い。

 どんなに光源を確保しても、数歩先は暗闇だった。

 更に悪いことに、灯りに照らされることでモンスターから狙われることが多くなった。

 それはそうだろう。

 暗闇の森に住むモンスターたちは、光源がなくても見る力を得ている。

 それなのに、ある一点が不自然に明るければ、そこに何かがあると思うのは生き物の本能というものだ。

 そんなわけで助態たちは、何度もの戦闘を繰り返し暗闇の中ということもあって、進むスピードが極端に遅くなっていた。

「さすがに進行スピードが遅いですね」

 焚火を作って狩ったモンスターの肉を炙りながら助態が言う。

「致し方無い部分はあるが、さすがにこたえるね」

 隣でティーパンが頷く。

 肩で息をしていた。

 それほど連戦は疲れるのだ。

 戦闘のほとんどが、ティーパンとちあ頼みになるのだから仕方ない。

 いくら食糧と水分の心配がないとはいえ、この進行スピードと連戦では体力が持たない。

「とりあえずティーパンさんとちあは食べたら休んでください。肉も燻製にしていつでも食べれるようにしておくので今すぐ食べなくてもいいです」

「ちあは後で助態が作った燻製を食べるから先に寝るのじゃ」

 大きなあくびをしながらちあが助態の膝を枕にする。

 見張りは多めに配置する。

 戦闘に特化しているティーパンとちあを抜きにしても、くびちやもふとも、ぱいおは戦闘でそこそこ役に立つ。

 アンアンとはあはあともっこりはそもそもの種族値が高い。

 それだけでも戦闘で活躍できる。

 これらを考慮して、ティーパンとちあと共にモンスターとの戦闘を率先してくれるアンアン、くびち、ルブマも共に寝ることにした。

 助態、純純、もふとも、ぱいお、ヌルヌル、はあはあ、もっこりが見張りで起きていることにした。

 ●

「俺も魔法については詳しくないけど、やはり注意しなければいけないのは悪魔魔法だろう」

 魔界を無事に抜けるためには、特に悪魔魔法に注意すべきだともっこりが言う。

「俺たちも一度だけ悪魔魔法を見たことがあるけど、あれは異次元の力だな」

 助態がさも知っている者かのように言うが、その実魔法の原理すら理解していない。

「悪魔魔法を見て生きているなんてすごいわよ?」

 はあはあが驚く。

「ま、アタイら何にもできなかったけどね」

 もふともが助態の化けの皮を剥がす。

 バラすなよー。と助態が言い、あんだよ。ともふともが言い返す姿を見て、ヌルヌルが隣のもっこりに問いかける。

「どうやって魔界に戻るかとか考えたことってあるか?」

「いやー。まったく考えてないなー。むしろ魔界の外の世界に興味あるなー」

 そう答えるもっこりの目の前には、助態の謎のサバイバル知識によって掘られた穴があった。

 穴の中には湿った草木が入れられており、ビニールに一番材質が似ているルブマの洋服で蓋をして中央に小石でくぼみを作る。

 くぼみの真上には水を溜めるための容器を置いておくだけで、水を得られるというのだから驚きだ。

 太陽が出ていればもっと多くの水を得られると助態は言っていた。

 そんなことを思い出しながらもっこりが助態を見る。

 つられてヌルヌルも助態を見る。

「俺らの知らない知識をあいつは持っているな」

 ポツリとヌルヌルが言うと、もっこりが頷いてその言葉に同意した。

「もし……」

 再びポツリとヌルヌルが言う。

 その言い方がいつものヌルヌルらしくなく、もっこりはヌルヌルを見る。

 ヌルヌルももっこりを見た。

「俺たち2人か助態のどちらかが命をかけないと現世に行けないような状況が来たら……もっこり。きみならどうする?」

 ヌルヌルは真剣な眼差しを向ける。

「そうだな……もしそんな状況になったなら、はあはあを助態に託すかな」

 その言葉を聞いたヌルヌルが安心した表情を見せる。

「まぁできれば自分1人で片付けたいが、もしもの場合は協力頼むよ」

 そう言って、もふともから預かった鍵のアイテムをポケットから取り出す。

「? それは?」

 もっこりが問いかけると、ヌルヌルは益々真剣な表情を見せる。

「あぁ。今の話しにも関係することなんだが」

「なぁーにやってるんすかぁー」

 ヌルヌルの話しを遮るように、ぱいおが割り込んできた。

 鼻息が荒いところを見ると、ヌルヌルともっこりであらぬ妄想でもしていたのだろう。

「もうウチお腹いっぱいっすよ?」

 そんなことを言いながら、もっこりの手を開かせて、そのままヌルヌルの手を包み込ませる。

「何やってんだよ!」

「おい気持ち悪いだろ」

 2人して同じ反応をする。

「恥ずかしがっちゃってぇー」

 うへへー。と笑いながら、もっと2人に絡むように要求する。

 思わぬ邪魔者の登場でヌルヌルは肝心なことを話しそびれてしまった。

 鍵を再びポケットにしまい込み、それでもいざとなれば、もっこりが協力してくれる手ごたえを感じていた。

 ●

「お疲れですか? 勇者様」

 助態の大あくびを隣で見ながら純純が問う。

「戦闘でも一番役立たずのスケベが疲れてるわけないだろ? それよりも純純。今日もいいパンツを履いてるじゃないか」

 鼻血を垂らしながらもふともが、純純の純白パンツの匂いを嗅いでいる。

 その隣ではあはあが顔をしかめる。

「うえー。他人の下着の匂いなんてよく嗅げるねー。性癖拗らせすぎじゃない?」

「アタイは可愛い女の子専門だけどね」

「じゃあ私も気をつけないと」

 両手で胸を隠す仕草をはあはあがするが、もふともがぴしゃりとそれを否定した。

「今のところ純純一筋だから。まぁルブマも最近は捨てがたいんだけどねー」

 そんな濃い会話すら助態の耳には入らない。

 それ程強烈な眠気に襲われていた。

 そのまま助態は気絶するかのように、その場に倒れ眠りについた。

「おい大丈夫か!」

 もふともの大きな声にティーパンが飛びあがる。

「何があった」

 鋭く聞く。

「勇者様!」

 純純は悲鳴のような声をあげている。

「息はしているわ。眠っているだけのようね」

 アンアンも起き上がり、急いで助態の状態を確認した。

 パーティ―の中で一番医療系の知識があるだけあって、処置が素早い。

 助態の呼吸を確認した後、寝やすい体制へと体を持っていってあげていた。

「何事なのじゃ?」

 ちあが寝ぼけ眼で問うが、ティーパンがせめてちあだけでも体力を温存すべきだと言って寝かしつけた。

 同じくくびちとルブマも起きたが寝かせた。

「少し見張りを増やそう。何かの魔法で強制的に眠らされているのかもしれない。私とアンアンは起きるから、もっこりは寝てくれ。いざという時の戦闘要因も必要だからな」

 全員に緊張が走っている中、助態は不思議な夢を見ていた。

 ●

 そこはとても見事な城だった。

 現実では絶対にあり得ないであろう、氷でできた巨大な城だった。

 何度かの真っ暗闇の中のエレベーターを上へ上へ進んで到着した氷の城の大広間。

 巨大なシャンデリアも氷でできており、なぜ溶けないのか不思議だが氷でできたロウソクに火が灯っている。

 外を見れば色とりどりの山々に美しい色の鳥たちが飛び立っている。

 空にはなぜかオーロラと虹が見える。

 月も星も輝く幻想的な世界。

 しかし助態は、そんな美しく幻想的な景色に目を囚われている場合ではなかった。

 まるで魔法使いが使うような、持ち手が渦巻きの形状をした杖のモンスターに追われている。

 しかもそのモンスターは魔法使いが被るような帽子まで被っており、明らかに強力な魔法を使うことが伺える。

 加えてそのモンスターは複数体いた。

「逃がすな! 勇者を殺せばいい。他には構うな」

 1体が他の仲間にそう指示を出す。

 言葉を話せるということは、知能があるモンスターだということだ。

「このままだと逃げられる」

 別の1体が最初の1体に言うと、最初の1体が決意を固めたような声を出した。

「黒の浸食(オールダーク)を使うぞ」

 何十体といる杖型のモンスターの動きが止まり、黒の浸食(オールダーク)を使うと、前方を走りながら逃げていた助態を追いかけるように、暗闇が迫る。

 暗闇は周りの景色を全て飲み込んでいく。

 どんな攻撃かは分からないが、助態は闇に飲まれてはいけないような直感を感じた。

 しかし暗闇の浸食スピードは速く、どんなに急いで助態が走ってもすぐそこまで迫っていた。

 そのまま助態は暗闇に飲み込まれた――

 

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