俺にとってはこれこそが異世界転生~第20妄想 勇者の気持ち~

俺にとってはこれこそが異世界転生

 修羅場の翌日、俺は昨日のことを今すぐにでもみずほに話したかった。

 しかし、みずほはギルドで常にまさやと一緒に居た。

 俺と隣同士の席なのに話せる機会は授業中だけときたもんだ。

 しかも授業中は集中しているのか、俺の話しを聞きもしない。

 おかげで俺はみずほに話しかけられずに、モヤモヤした気持ちが高まっていた。

「大丈夫?」

 そんな俺の様子に気がついたカリナが声をかけてくる。

「平気平気。どうせ放課後に話せるし」

 委員会で一緒だからな。

「勇者君ってホント変わったよね」

 ほぅ。とため息と吐きながらカリナが言う。

 変わった? よくみんなに言われるがどこが変わったのだろうか?

「あの2人。最近仲いいよね」

 カリナがまさやとみずほを見て言う。

 仲がいい。確かにそう思うがなんとなくまさやの気持ちが強すぎる気がするのは気のせいだろうか? いや。やめておこう。俺は前回そうやって勝手に決めつけてミサキの気持ちに勘違いしたばかりだ。

 まさやがみずほのことを好きなのは間違いない。

 みずほは正直分からない。分からないが、まさやとみずほ。見れば見る程お似合いではないか。

 我が眷属に彼氏ができたのだ。主としては喜んでやるべきだろう。

 胸が少し痛むのはきっと、眷属と話したいことが話せないイライラからだろう。

 ●

 委員会の時間――

 ようやくこの時間がきたか。

 俺は早速みずほに昨日のことを話して聞かせた。

「でな。なぜか2人は仲良くなってるんだよ。なんでだと思う?」

「さぁ?」

 今までにない素っ気ない返事だ。

「……」

 驚いてみずほのことを見る。

「? 何?」

 俺の視線にみずほが気づく。

「何怒ってるんだ?」

「怒ってなんかない」

 やっぱりだ。素っ気ない。

 ははぁーん。みずほめ。ご主人さまが他の女子と仲良くして嫉妬しているんだな?

 眷族のくせに可愛いところあるじゃないか。

 そこで俺はふと気づいてしまった。

 そういえば俺ってみずほとどこか出かけたことなかったな……

「なぁみずほ」

「ガララ」

 俺が声をかけたのと、図書室のドアが空いたのは同時だった。

「来ちゃった」

 にへへ。とミサキが笑っている。

 うん。可愛い。

 可愛いが、俺には今までにはない別の感情が生まれていた。

 以前の俺ならば、ミサキに会えることはこの上ない喜びだった。

 しかし今は俺とみずほ2人だけの空間。

 それを邪魔された気分だ。

 正直、ここ最近のミサキの行動は常軌を逸していると思う。

 俺が誰か他の女子と話していると、必ず声をかけてくるのだから。

 この行動にうんざりしている自分がいる。

 そして、気づいてしまった。

 俺はミサキのことが好きではないことに――

 ●

 あぁ――まただ――

 勇者が最初に思ったことだ。

 ミサキが現れ、みずほが気を利かせてその場を離れる。

 以前にまだミサキのことを好きだった頃に、言った一言があったっけ。

「ここにいればいいじゃん」

 あとからみずほに、心ない一言って怒られたけど確かにそうだったのかもしれない。

 けどあの言葉が全てだったんだな。

 本当にミサキのことが好きだったんなら、あの言葉はいらない優しさでしかないし、ミサキを傷つけるだけだ。

 けど、俺はみずほに隣に居て欲しかったんだ。というよりミサキと2人きりになりたくなかったんだな……

「待て」

 俺は席を離れようとするみずほの腕を掴む。

「聞いてほしい」

 みずほをそのまま座らせて、ミサキに言う。

「今の俺には、ミサキさんの気持ちには応えられない。ごめん。嫌いとかそういうのじゃないんだけど……うまく言えないけど……ごめん……」

 ミサキからの返事は意外にも、やっぱりね。だった。

 そのままミサキはその場に泣き崩れた。

 みずほは目を見開いたまま俺を見ている。

 分かっている。今までの俺ならばミサキのことをみずほに任せていた。

 だが、俺がみずほをこの場に残したのはそのためではない。

 俺の気持ちをしっかりと聞いていて欲しかったからだ。

 多分だけど……認めたくないけど……俺は――

「ごめん……」

 気持ちと感情を押し殺して声を絞り出す。

「大丈夫。むしろ正直に言ってくれてありがとう。私こそごめん。勇者君の気持ちに気づいていながら知らないフリをしてた」

 そう言って手を差し出して来た。

「これからは友人として、私は私の恋路を進むし勇者君の恋を応援しているわ」

 にこりと微笑んでくる。

 俺も片手を差し出して、そのまま握手を交わした。

 残るは――

 ●

「偉いね勇者様!」

 ミサキが図書室を出た後、俺も出ようとしたらみずほが目を輝かせて言う。

「? 何が?」

 というか機嫌悪かったんじゃないの?

「ちゃんと自分の気持ちと向き合ってるじゃん! 私もちゃんとしないとだ」

 まぁ正直に伝えたのは今回が初めてだな。

「ところで勇者様。体育祭が終わったらすぐテストだけど勉強は大丈夫?」

「なぬ!」

「やっぱりね。勇者様絶対勉強してないと思った。社交ダンスの練習は進んでるの?」

「みゆうに何度も何度も練習を付き合わさせられたからほぼ完ぺきだぜ! むしろ最近は俺とみゆうの息はピッタリなくらいだ!」

「すごいじゃん!」

「しかしテストかぁー。みずほって頭よかったよな?」

 ふと俺がみずほを見ながら言う。

「え? いいっていうか、クラスで2位だよ? 1位はまさやくん」

 ほう? あの男にもそんな特技があったとは。

 だが今はみずほで十分。

「今度勉強を教えてくれ!」

 こうして俺は今回のテストを何とか回避する作戦を開始したのだった。

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