これはデートなのだろうか?
高渡はふとそんなことを考えながら、ギャルに手を引かれていた。
つい先ほど頬にキスをされ、今度デートしてやると言われたばかりだ。
今度とは今のことなのだろうか?
そんなことを考えつつギャルを見ると、ギャルが高渡の方を振り返った。
「りおがさ」
椎名の名前に高渡はギャルの顔を見た。
今までに見たことがない寂しそうな顔をしていた。
「あんたに感謝してたよ」
「え?」
訳が分からず高渡が聞き返すと、ギャルは急に手を離した。
その目には涙が浮かんでいた。
「なんで?」
高渡の問いは、何で泣いているのか。という意味だったが、ギャルには別の意味に聞こえたようだ。
「あんたが電車で助けたからだろ」
「いや。あれは助けて」
「助けたんだよ」
高渡の言葉を遮ってギャルが言う。
「あんたが何て思うと、りおにとっては助けられたんだよ」
そう言って今度は頬ではなく口にキスをしてきた。
「ほら行けよ」
高渡の背中を軽く押すと、その先には本を選んでる椎名の姿があった。
困惑しながらも高渡は椎名の方へ歩き出した。
その時、ふと思い出した。
ギャルは、寄りたい場所があると言っていた。
「寄りたい場所って」
そう言いながら振り返ると、ギャルはもう遠くへ行ってしまっていた。
「高渡くん」
背後から椎名が声をかける。
止まっていた2人の時間が動き出した。
「じゃあな……私が大好きだった人……」
ギャルの呟きは誰の耳にも届かなかった。
●
「カーズロー」
敵が小休止の時に呼ぶ。
「何ですか敵殿」
「お前は、以前に最愛の人を亡くしているよな?」
「え? まぁはい」
カーズローにとっては思い出したくもないことだ。
表情が暗くなるのは当然のことだろう。
「好きな人ってのはどうしたらできるんだ?」
意外な質問に、暗い表情をしていたカーズローが顔を上げる。
興味を持ったようにミアとガブリーも近くに寄ってきた。
「何だい何だい? 好きな人でもできたのかい?」
ニヤニヤとガブリーが言うと、きっと私のことですわ。とミアが頬を染める。
「何かあったのか?」
冷静に男エルフが問うと、敵はカーズローと男エルフにだけ話すように2人に向き合った。
「例えばだが」
敵が左右の人差し指を立てる。
「ある男のことを好きな女がいたとする。しかしその男は別の女が好きなんだ」
そう言って、左手の中指を立てる。
「この女はその事実を知って、恋愛を諦めるんだが」
「なぜ諦めるのですか?」
話しを遮ったのはミアだ。
「そうだよ。好きなら好きのままいればいいじゃないか」
ガブリーも同意した。
「いや。すまんな。理由は分からんし、恋愛とはそういうもんなのか?」
「人によるとは思いますが、敵殿は何を知りたいのですか?」
カーズロー真剣な顔をして聞く。
敵の話しの意図がまだ分からないからだ。
「いや。オレは恋愛が分からないから、諦めるのが普通なのか? そもそもどうやったら好きになるんだ? 諦めないのが普通なのか? 別の人が好きな人を好きになるってどんな気持ちなんだ?」
敵の口から次々に疑問が湧いてくる。
その様子を見てカーズローがふきだした。
「オレが知らないことがあることがそんなに面白いか?」
「いえ。そうではなく。敵殿は本当に変わりましたね」
まだ笑いながらカーズローが言う。
「おそらく敵殿は、恋愛の何が分からないのかが分からないのでしょうね」
「それにしてもキミがこんなことに興味を持つなんて意外だよ」
カーズローの後にガブリーが言う。
どこかその顔には、寂しさが浮かんでいるようにも見える。
「確かに敵殿は今までこんなことに興味はありませんでしたからね。今まではもっとこう。尖った感じで目の前の敵対する者を倒す感じでしたからね」
「そうか。オレはそんな機械族みたいな感じだったのか」
ふむ。と敵は自分自身を見直す。
「今はかなり人類種らしいけどね」
ふわふわ浮かびながらガブリーが敵の傍を通る。
ふと敵はそんなガブリーに違和感を感じたが、それどころではなくなった。
●
目の前で人類種が襲われていたのだ。
人類種の安全を目的としている敵からすれば、見過ごせない。
「自分が先に行きます」
カーズローが走り出す。
しかし、ミアや男エルフ、ガブリーはそれについて行かない。
それはそうだろう。
人類種を襲っているのは鳥人種のクックコック族だ。
戦えば、エルフ族とクックコック族との戦いということになってしまう。
「お前らはそこで見学していろ。人類種を敵に回すとどういうことになるか思い知らせてやる」
敵が走り出した。
久しぶりの戦闘にカーズローと敵の顔は生き生きしていた。

