ガブリーの告白を聞いてからも、敵の生活に変化はなかった。
むしろ、今までの疑問が解決したようで清々しくあった。
「時折夢を見るようになったのは、異世界の高渡とのリンクが強まってるからなのか?」
隣のガブリーに問うと、ガブリーは頷いた。
「暫く前まではワタクシが魔法でキミと高渡を繋ぎ止めていたんだけど、ある時からリンクがしっかりと繋がってワタクシの魔法は必要なくなったんだ」
「今……」
ガブリーの言葉を聞いて敵が呟くように言う。
「オレと高渡は一心同体ではないが、似たような状況ってことか……」
「たぶんだけど。キミが死んだら異世界の彼も死ぬ」
ごめん。とガブリーがもう一度頭を下げた。
「あいつは今、あっちの世界で変わりつつあるようだ」
この言葉にガブリーは目を見張った。
「異世界の様子が分かるのかい?」
「あいつの視点でだがな。今までのあいつとは少しだけど様子が変わってきている。その原因はどうやらオレにあるようだ」
『キミも少しずつ変わっているよ』
そうガブリーは心の中だけで呟いた。
●
「高渡くん」
椎名の呟きはクラスの喧騒にかき消されて届かない。
「りおどったの?」
ギャルが椎名の隣に来る。
その視線を辿って、あぁ。と笑みをこぼす。
「あいつ変わったよな」
あいつ。と言って顎でしゃくる先には、机で居眠りをする高渡が居た。
「電車の中で私に声をかけるようなキャラではないし、ヤンキーに絡まれた時みたいに逃げ出すのが高渡くんらしいのに……」
「それは馬鹿にしてるのか驚いてるのかどっちなんだい?」
やれやれ。という感じでギャルが問うと、椎名は即答した。
「驚いてるよ。満員電車で声をかけるなんてとても勇気がいることだと思うし」
「ウチに助けを求めたのも精一杯だったってか?」
ギャルが言っているのは、ヤンキーに椎名が絡まれた時の話しだろう。
「そりゃさ。ショックだったよ。見捨てられたかなって。でも結果的には助けを呼んでくれたわけだしやっぱり感謝はしないとダメだよね」
「それなら。ウチもあいつに謝んないとだね……」
そう言ってギャルは、優しい眼差しで高渡を見た。
そんなギャルを見て、椎名は何かを悟った。
●
敵がいる世界では人類種が最下層であり、魔力がなくて魔法が使えない。
つまり他の種族からしたら、取るに足らない存在だ。
それだというのに、人類種は人類種同士で争ったりすることがある。
ガブリーからすると理解しがたい種族だった。
「あいつの世界もそんなもんらしい」
敵が言うには、異世界の人類種も同じように争いを続けているようだ。
「人類種は争いが好きな種族なんだね。まるで巨人族だ」
ガブリーがそう言うと敵は、愚かだがそれこそが人類種なのか。と呟いた。
敵は確実に変わりつつあった。
「敵殿は変わりましたね」
夕飯の時にカーズローがガブリーと同じ感想を述べる。
「そうか?」
得てして、変わった人は自覚がないものだ。
今目の前の敵もそうだ。
肉を豪快に頬張り、スープで流し込む様子は以前そのものだが、考え方配膳とは違っている。
「前はもっとギラギラしていました」
「確かに。他者を寄せ付けないオーラみたいのを纏っていた気がするね」
カーズローの言葉にガブリーが頷く。
「男らしさから、優しさが増えたということではないでしょうか?」
ミアはますますいい人になった。と頬を染めている。
「未開の土地へ向かったとしても、人類種は争いを続けるだろうね」
ガブリーの言葉は恐らく的中するだろう。
それでも――
「オレは人類種の可能性を信じてる」
●
「ねぇ」
帰り際、ギャルが高渡に声をかける。
「一緒に帰らない? ちょっと寄りたいところあんだけど」
「……」
一瞬、高渡は自分に声をかけられているとは思わずに、思考が停止した。
「え。あぁ」
歯切れの悪い返事になったとしてもそれは仕方ない。
「おっしゃ行こ!」
ギャルが高渡の手を取り、浮足立って歩き出した。
不思議なことに、高渡の心臓は早鐘のように打っているというのに、恥ずかしいという感情がなかった。
夏の匂いが2人の鼻をくすぐった。
