キミだけが知らない物語り~第5物語り セチア~

キミだけが知らないストーリー

「あの者が敵殿に真実を話していると?」
 カーズローは、機械族とガブリーと戦っていた時に、敵とガブリーがしていた会話を初めて聞いた。
「信用できないか?」
「にわかには信じられません」
 きっぱりとカーズローが言うと、敵は微笑みながら頷いた。
「こんなくそみたいな世界だ。他の種族は信じられなくて当然さ。現に俺たちは今、ワーム族を従えられるはずの秘宝を持っている。けど本当に従わせているのか不安で疑っている。この世界なんてそんなもんだ」
「それならば信じすぎるのは危険です!」
「さっき使えるものは使うと言っていたではないか」
 カーズローの矛盾を敵は理解できる。
 あるところではガブリーのことは信用せず、あるところではガブリーのことを信用しているのだ。
「自分が言った利用するとは、あの者が他種族とも会話ができる点です。ワーム族としっかりと会話ができていればもっと楽だったでしょうに」
 確かにカーズロー言うように、敵とカーズローはワーム族に対して身振り手振りでエンドリアを人類種が通れるようにするということを伝えている。
 端的に言えば、人類種には手を出すなと言っているわけだ。
 ようやく伝わり、エンドリアは人類種とワーム族が住む町へと変化していきそうであった。
「ま。なんとか解決したし今回はよしとしようではないか」
 楽観的な敵に、カーズローはまだ納得がいっていないようだ。
「そのうちお前の力を使う必要がでてくる。その時はよろしく頼むぞ」
 敵がカーズローの胸をドンと叩く。
 それだけでカーズローは、敵に信頼されていると感じることができた。

 ●

 一瞬敵の視界が真っ白になる。
『くっ。またか……』
 ワーム族を従えてようやくエンドリアを人類種が自由に行き来できるようになったと思ったら、いつもの発作が起こった。
 最近はこの頻度が多い。
 本当に何者かの魔法なのかもしれないと敵は考えるようになってきた。
 以前ガブリーに聞いた時は、なんでもない。と言われていた。
 その言葉を正直に信じていたが、本当に何でもないのかここにきて敵は疑ってきた。
『あいつに限って俺に嘘をつくか……?』
 敵の頭の中は葛藤でいっぱいだった。
 ガブリーが裏切るとは考え辛かったが、最近頻発するこの発作が何なのか。説明がつかないのもおかしいと思っていた。
 敵は何となく直感していた。
 時折自分が2人いるような感覚と、視界が真っ白になる症状は何か関係がある。と。
 しかしそのことは、誰にも言わないようにしていた。
 言っても何も変わらないだろうし、カーズローは無駄に心配するだろうからだ。

 ●

 敵とカーズローがエンドリアの中枢で権力を奮っていることは、地底種のドワーフ族と近くに住む人類種に知れ渡ることとなった。
 今のところドワーフ族が攻めてくる気配はない。
「同じ地底種でもドワーフ族とワーム族は全く違う生き物ですからね。戦争は起こらずに済みそうですね」
 ここ数日見張りをしていたカーズローが敵に、そう報告する。
「もしドワーフ族が攻めてくるとしたらどういう場合だと思う?」
 敵が問う。
 カーズローは、少し考えてから答えた。
「ガルーダに他種族が攻める気配を感じたらですかね……」
 ガルーダとは、ルキエタ国の王都にしてドワーフ族の本拠地だ。
 エンドリアもルキエタ国の一部だが、ガルーダと比べたらその規模は天と地ほどの差がある。
 ガルーダは、エンドリアから見て東側にある。
 一方の敵たちは、エンドリアを南から侵入し北へ抜けたい。
 つまり、ドワーフ族にとっては自分達に敵対するつもりはない。とアピールされているようなものなのだ。
「種族同士の結束が強い種族もあれば、希薄な種族もいますが、地底種は種族同士の結束がそこまで強くないんですね」
「あぁ。以前天人種と戦ったことがあるが、エルフ族と空人族が徒党を組んでた」
 なんてことはない。という感じで敵が言うがカーズローは驚いて目を丸くした。
「天人種と戦ったんですか? 特殊な魔法を使うことで有名な? それも空人族?」
 カーズローが絶句するが、ガブリーという幻想種とも戦っていたくらいだ。
「あの魔法を重ねるというものは独特だな。他の種族じゃ絶対に真似できない。ガブリーも無理だと言っていた」
 懐かしそうに敵が話すのをカーズローが咎める。
「お言葉ですが敵殿。その魔法を重ねるのが得意なエルフ族が住むエリアは、エンドリアの北方面ですよ?」
 世界地図の一部をカーズローが指し示す。
「どうやら俺はエルフ族からは恨まれているようだ」
 腕を組んで困ったという表情を敵がする。
 しかしカーズローにはそれが楽しんでいるように見えた。
「なぜそう思うんです?」
「実際に言われたからな。俺のことを恨んでいると。一族の宝を傷つけたとかなんとか」
「エルフ族は多言語を操ると言われていますが、本当のようですね」
 他の種族の言葉が話せるということは、それだけ知能が高いことを意味する。
「ま。エルフ族とは戦争をするしかないだろうからその時は頼むぞ」
 ドン。とカーズローの胸を敵が叩く。
 こうして敵とカーズローは次なる目的地、セチアへと向かった。

 ●

 セチアは一言で言えば森だ。
 森の中に木でできた家がある。
「エルフ族のテリトリーだと思うだけで、神経が参りそうです」
 珍しくカーズローが弱音を吐く。
 それもそうだろう。魔法が使えない人類種にとって、魔法に長けている種族は天敵だ。
 いつどこから得体の知れない攻撃をされるかが分からない。
 更に言えば、魔力を持たないのでその攻撃を察知することはほぼ不可能である。
「コツがある」
 敵だけは、魔力を何故か持っているので魔法を察知できる。
「敵意を察知するんだ。殺意とか攻撃をする意識だ」
 つまりは、気配を察知しろということだろうが、こと魔法に関してはそんなに単純ではない。
「お言葉ですが敵殿。自動で発動する魔法なんかには対処できないのでは?」
 そう。カーズローが言うように、魔法には罠のように設置するタイプが数多く存在する。
 むしろそちらの方が多い。
 魔法を罠として使うのは常識であり、攻撃として使用するのは幻想種だ。
「最近のエルフ族は、魔法を攻撃として使用するぞ。前戦った時はそうだった。おかげで簡単に回避できたけどな」
 罠タイプの魔法は魔力を持たない人類種には防げないが、殺傷力はその分低い。
「罠に引っかかった時はその時だ」
 呑気な言い方だが、これがいつもの敵だ。
 あれこれ余計なことを考えるよりも、先に進んでその場で対処する。
 それができるのが凄いところでもある。
「場数を踏むと、そうなれるんですか?」
 素直にカーズローが聞くが、敵には何のことは分からなかった。
 それにのんびり話している暇はなくなったようだ。
「ここがどこか分かっているのか?」
 エルフ族だ――

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