勇者は発情中~第四十九エロ お風呂回男バージョン~

勇者は発情中

「ま、考えても仕方ないし、とりあえず先に進もうか?」

 ティーパンが先に進むのを促す。

 確かにこの場にいても何も解決はしないだろう。

 ただやかましい機械音がするだけだ。

「そうですね。道も1つしかないみたいですし、先に進みますか」

 助態もその言葉に頷き、ガシャガシャと動く機械の真横を真っ直ぐに取っている道を見つめる。

 目の前にはまた大きな扉がある。

「今度はどんな部屋になるのやら」

 くびちがうんざりしたように言うが、助態もまったくもって同感だった。

 幽霊城とは名ばかりの、少々子供だましの多いお城にみんな疲れて切っていた。

『ちょっと休める何かがあるといいんだけどなぁ……』

 そう助態が思うのも仕方のないことだろう。

 全員がやや憔悴しているところで次の扉を開けると、驚きの光景が目の前には広がっていた――

「でかいですね……」

「それにきれいです」

 目の前に突如現れた大きな建物にルブマと純純が各々の感想を述べる。

 そもそもが、城の中に別の建物が現れる時点でおかしいのだが、そこはもう異世界。助態も慣れっこになっていた。

 しかも助態には、どう見ても温泉宿にしか見えないのだ。

「ゆの文字まで書いてあるしな」

 助態の独り言のような呟きは、誰の耳にも届かない。

 全員が、何か休める場所であることを確信していた。

 ここが幽霊城であることを忘れて我先にと暖簾をくぐって行った。

「助態さん! お風呂があるっす!」

 奥からぱいおの声がする。

「覗くんじゃないぞ」

 ちあが釘を刺す。

「あら? 私は覗いてもいいわよ?」

 くびちが色っぽい声を出す。

 その声だけで助態には、くびちが長い赤い髪を掻き上げている姿を想像できてしまう。

「勇者様が覗いて発情したら、また私が餌として性欲を食べて差し上げますわ」

 アンアンがなんとも恐ろしいことを言っている。

 きっと舌なめずりでもしているのだろう。

「えっちぃことはダメです」

「勇者様はそんなことしませんよ」

 ルブマと純純はそれぞれに勝手なことを言っている。

「何なら召喚獣に見張らせておこうか?」

 ニヤリとティーパンが不気味な笑みを助態に見せてから宿に入って行った。

『ティーパンさんがいるのに覗けるわけないよなぁー』

 頭をポリポリと掻きながら、助態はティーパンの入浴シーンを覗くのは自殺行為であることを自覚した。

「あんたも覗くんじゃないよ?」

 もふともがヌルヌルに言うと、ヌルヌルはドキリとしていた。

「の、覗かねぇーし」

 そう答えるヌルヌルに、どうだかねぇ。と言いながらスタスタと入り口の暖簾をくぐって行った。

「んじゃ、私も行ってくるね」

 はあはあがもっこりにそう言う声が聞こえる。

 助態が振り返って2人を見ると、なんだかぎこちなさそうにしていた。

『あの2人って付き合ってるわけではないんだよなー』

 お互いに意識し合っているであろうが、素直になれない。そんな関係。

「あ、あぁ」

 もっこりがぎこちなさそうに答える。

 ヌルヌルともふとものように、あからさまに好きであることを周りに公言しているわけでもなければ、助態たちみたいに上段を言えるような関係でもない。

 実に微妙な関係。

「「……」」

 行ってくる。と言いながら動かないはあはあ。そのはあはあをただ突っ立って見ているだけのもっこり。

 実に微妙な関係。

 気まずい空気が2人の間に流れる。

「じゃ、じゃあね」

「あ、あぁ」

 ぎこちない挨拶もそこそこに、はあはあがみんなに遅れて暖簾をくぐって行った。

 残された助態、ヌルヌル、もっこりはしばらく立ち尽くした後、

「俺たちもお風呂に入ろっか?」

 という助態の発言で、3人も暖簾をくぐった。

 ●

『いかにも旅館って感じの雰囲気だな』

 暖簾をくぐった助態の最初の感想はそれだ。

 木造りの建物に受付、お土産売り場に、男女に分かれているお風呂場。

「男湯はこっちだな」

 殿方と書かれている文字を読みながら助態が言う。

「はぁー。いい湯だー」

 お風呂に浸かりながら助態が至福の声を出す。

 幽霊城だけでも色々あった。

 その上死の世界へ来てしまい、モンスターの世界である魔界まで来てしまった。

 雷獄の洞窟からは普通にモンスターとも遭遇するという。

 気を緩めることができない。

「今ここで羽を伸ばすのはかえっていいのかもな」

 ほうっと息を吐く。

「そうだな」

 助態の言葉を聞いてヌルヌルが答える。

「羽伸ばしついでに聞いてもいいか?」

 ついでに。そう言ってヌルヌルが質問をしてくる。

「助態にとってもふともはどんな風に見える?」

「どんな風にって?」

 目をパチクリさせながら返事をする助態に、ヌルヌルは怒りがこみ上げてくる。

「分かっているとは思うが、俺ともふともは昔付き合っていたんだ。俺が死んでさえいなければ今もきっと付き合ってた。未練とかはなかったが今こうして再会して、俺ともふともの気持ちが近づきつつある。けど……」

 早口でまくし立てたヌルヌルがここで言葉を切る。

 その後に何が言いたいのか助態には想像ができていた。

「俺たちは当然付き合うことはできない。それは分かっているだろ?」

 ヌルヌルが言うことは助態にも理解できる。

 この世界を抜けるということは、もうヌルヌルには会えないということだ。

 もふともにとってそれは辛い選択のはずだ……

 それはもちろんヌルヌルにとっても――

 それを助態にどんな風に見えるかを聞くということは……

「俺からも似たような質問をしよう」

 もっこりが大きな股間を見せつけながら湯舟に入ってきた。

「お前……それは本物か?」

 助態が驚く。

「あぁこれか?」

 自分の股間を助態とヌルヌルに見せつけながら堂々ともっこりが言う。

「俺のはこれが通常サイズなんだ。でかいだろ?」

 もっこりが自慢し始めたのをきっかけに、3人で股間自慢大会が始まった。

 ●

 助態・ヌルヌル・もっこりの3人は、それぞれが自分の股間を大声で自慢し合っていた。

 もっこりは一番大きいと言い、助態は一番形が美しいと言う。そしてヌルヌルは一番長いと主張した。

 そんなどうでもいい大会が終わると元の会話に戻った。

「で、もっこりが俺に聞きたいことって?」

 大方の予想はできていたが一応は問う。

「君の仲間はみんな女性陣だ。もふとものことをどんな風に見ているかというのが気になるのはヌルヌルがもふとものことを今でも好きでいるからだ。俺はそれよりも、このメンバーの中で助態は誰が本命なのかを知りたいな」

「そうだな……体だけで言うならルブマかちあだな」

 即答だった。

「何! あんなぺったんこのどこがいいんだ?」

 ヌルヌルが驚く。

「いや、胸の大きさなら確実にぱいおだがルブマとちあはツルツルなんだぞ?」

 これこそが一番大事と言わんばかりの言い方に、もっこりが引く。

「お、お前……子供が好きなのか?」

「そう言えばちんちんやまんまんやぱいぱいにも欲情してたもんな」

 ヌルヌルが思い出したように言う。

「あの3人ははっきり言って完璧だった」

 フン。と鼻から興奮の息を出しながら助態が堂々と言う。

 女性が居ないだけでここまで自分の性癖をさらけ出せることに、ヌルヌルももっこりもある意味感心してしまう。

「とはいえ、本命って聞かれるとちょっと違うかもな……」

 ここで助態が真面目に言う。

「俺は別の世界から来た人間だ。元の世界に居た時には自分で言うのもあれだけど女に苦労することはなかった。体だけの関係もあれば恋愛ごっこのような関係もいた。そのせいかもしれないけど、今思い返してみれば、ちゃんとした恋愛ってしてない気がするな」

「ほう? お前は前の世界でも女性に囲まれていたのか?」

 ヌルヌルが嫉妬の声を出す。

「囲まれていたってのは語弊がある。今みたいに常に女が周りに居たわけではないし。むしろ男友達と一緒に居る方が楽しかったりしたし。今もそうだろ? 女性陣がいないからこそできる話しとかしてるじゃん?」

「確かに俺も常にはあはあが近くに居たからあまりこういう話しはできなかったな」

 ふむ。と顎に手を当てながらもっこりが頷く。

「そう言えばもっこりは、はあはあのことどう思ってるの? 好きじゃないの?」

 もっこりに対して助態が言うと、ヌルヌルが何を当たり前のことをという感じで、もっこりの代わりに答えた。

「そんなの好き以外にないだろ? はあはあだってもっこりのことが好きだろうし、互いに意識し合っているがそれを上手く伝えられない、もどかしい時期なんだろ」

「いやいやいや。俺は別にはあはあのことなんて何とも思ってないから」

 ヌルヌルが自分に気持ちを見事に見抜いていたので、もっこりは思わず慌てて否定した。

「ほらな? 別に何とも思ってないってよ?」

 そら見ろと言いながら助態がドヤ顔をするが、当然間違っている。

 そのせいでもっこりは更に恥ずかしさがこみ上げてくる。

「いやだからな、助態。それは照れからくるもので、お前にも経験くらいあるだろう?」

「は? 恥ずかしさ? だから俺はまともな恋愛なんてやってないんだって。付き合えそうな女としか付き合ってないから」

 助態とヌルヌルの会話を聞いていると、もっこりは恥ずかしくて自分の気持ちすら言えないのがなんだか情けなくなってきた。

「俺は……好きだ。けど身分があまりにも違いすぎる。俺はモンスターの中でも異質な堕天使だ。天使と言えば人間と同じくらいモンスターから恨まれている。それが堕ちた姿。言わばモンスターでも天使でもない中途半端な存在だ。こんな俺が恋をしてはいけない相手なんだ」

「それは違う」

 ヌルヌルがもっこりの言葉を遮る。

「身分の違いなんて関係ない。恋をするのに好きになるのに理由だとかそんなのはないんだよ」

 いつになくヌルヌルが真面目な表情をしていた――

 しかしここで全員がのぼせてしまい、早々とお風呂から出て、女性陣が出てくるのを待つこととなったのだった。

 その間、気まずい空気が流れたのは言うまでもない……

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