異世界転生しか勝たん~第三十三稿 野営地奪取~

異世界転生しか勝たん

 私たちが解放した人質は、50人以上居た。

 想像以上の数にびっくりしているが、それ以上に驚いたのはミユの行動力だ。

 あの屋敷でミユは、爆発物をいくつも爆発させていたらしい。

 掌握軍がそういった兵器を持っていたことも驚きだが、ミユがそういった行動を平気で行うことに驚いた。

 結局、解放した人質はみんな私たちの手伝いをしてくれるというのだから、ご都合主義もいいところだよね。

 普通、家族の元に帰りたいとか生まれ育った土地に帰りたいとかなるのに、自分をこんな目に遭わせた掌握軍に仕返しをする。とかなんとか言って。

 私が作った小説ながら、こういったご都合主義なところはあんまり好きになれないなぁ。

 まぁもはや自分が作った小説とは全く違った形になってしまったし、とりあえず今は掌握軍を倒してさっさと元の世界に戻りましょ。

「とりあえず、解放した50人の内の半数は軍事都市と産業都市へ送るから、クレソンの指示に従って動いてちょうだい。残りの半数はここレタス村と隣のサラダ村で作物や家畜を育てて。いざという時は戦力にするからよろしくね」

 んで、私たちはきゅうり市に普通に行き来できると知ったので、何か必要な材料とかはきゅうり市で仕入れることが可能になったわけだ。

「完全に掌握軍に支配されている場所はないの?」

 という私の問いに、ミユが顔を上げた。

「あるよ。きゅうり市の北のトマト村。村がまるまる牛耳られてるって噂だし、そこに行くまでに、掌握軍の野営地があるらしい」

 トントン。とミユが地図を指す。

 この場所って、なんとなくだけど、今の最前線のちょうど真西くらいじゃないかな?

 間に川は挟んでるけど、もしこの地を奪えたら、ここから東一帯全部を掌握軍から解放できるんじゃない?

「んじゃあ、まずはその野営地をいくつか落としますか」

 私は、村人にレタス村に何回か顔を見せるクレソンちゃんへの伝言を頼み、ミユとルッコラ君と一緒にきゅうり市へ向かった。

 伝言は、パクチーに西方面へ進軍してほしいということだ。

 私たちが次に狙う箇所もしっかりと伝えておく。

 ●

 きゅうり市に着いて驚いたのは、あの屋敷がきれいさっぱりなくなっていたこと。

 そしてその犯人が捕まっていないのに、誰も気にしていないこと。

 掌握軍の持ち物だったから、誰も気にしていないという理屈なんだろうけど、もっとあるでしょ。まぁ私たちに都合がいいから気にしないけど。

 そしてまたまた都合がいいんだけど、意外と私たちはお金を持っているらしい。

 この街をしばらく行動の拠点にするわけだから、宿屋のお金とか必要だもんね。

 ってことで、ミユにはトマト村のことや村までの道中の掌握軍の野営地について聞き込みをしてもらう。

 私とルッコラ君は実際に足を運んでみることにした。

 ●

 野営の1つは、きゅうり市の目と鼻の先にあった。

「こんな近くに掌握軍の野営地があるのに、きゅうり市の人はなんとも思わないんだね」

 目視できる距離にあるというのに、誰も気にしないのはきっと話しの都合上。

 それでも突っ込まずにはいられない。

「かなり小さい野営地だけどどうするの?」

 ルッコラ君が私を見上げてくる。

 なんだか可愛いじゃないの。

「突っ込む」

 脳筋みたいな言い方だけど、正直それ以外の選択肢が私の中にはない。

「ルッコラは援護をお願いね」

 そう言って私は岩陰から飛び出す。

「勇者が現れたぞー!」

 きゅうり市の人は私を見ても、勇者とか言わなかったけど、掌握軍の陣では一目で勇者って分かるのかー。

 こういったところに設定の甘さが出てるんだよね。

 統一感がないというか。

 それに、これだけ重要であろう最前線を守っているのが、ただの雑兵というのも理解できない。

 私はルッコラ君の援護なしに、きゅうり市北部の掌握軍の野営地をいくつも落とした。

 落としただけではなく、きゅうり市から私たちをなぜか理由は分からないけど手伝ってくれると言った人たちに、そこを守らせることまでできてしまった。

「ま。私たちに都合がいいから気にしないことにするけど、サクサク進みすぎて怖いわね」

「サクサク?」

 ルッコラ君が小首を傾げる。

「かなり順調に進んでるってことよ」

「いいことなんじゃないの?」

 ミユが、何を当たり前の。とでも言いたげに言ってくる。

 たぶんだけど、この世界線ではご都合主義とかそういう概念がないんだろうね。

 自分にとって都合のいいことばかり起きても、それが普通であり、不自然とは思えない。

 ま。ある程度は正しいけどさ、それだけだと私がいた世界では正しくないんだよね。

 世の中ってつまるところ。理不尽だから。

 結局、ミユが掌握軍の野営地について聞き込みをしたけど、よく分からなかった。

 それでも、周囲の野営地を私たちはどんどん奪っている。

「結果論だけど、ミユが聞き込みをしたのは意味なかったし、野営地の情報なんていらなかったね」

「こんなにすんなり進むなんてさすが勇者だね」

 ミユが私に微笑む。

 ま。とにかくサクサク進めてこっちに好都合なのは、今の私にとってはいいことだからね。

 さっさとこの世界から抜け出さないとね。

 ●

 私たちの今現在の目的は、きゅうり市北側に位置するトマト村を奪還すること。

 そのために私とルッコラ君とミユは、トマト村ときゅうり市の間にある掌握軍の野営地を落としている。

 そしてパクチー君には、軍事都市の北側にある私たちの土地の最前線を真西に領土を拡大してもらう。

 そのまま西に進めば川があって、川を渡ればトマト村にたどり着く。

 つまり、トマト村・きゅうり市・レタス村・サラダ村を含む広い土地を私たちの領土にすることができちゃうわけ。

 まぁそんな簡単に都合よくいけるか分からないけど、都合よくいけそうな気がする。

 そんな私たちは今、中規模の野営地を前に攻めあぐねている。

 理由は雑兵じゃない敵が現れたから。

「やっぱりいたね。偉才持ち」

 ミユが私に言う。

 さすがにこれだけの数の野営地を、ただの雑兵だけに守らせるわけがないよね。

 しかもあれは見た顔!

 体がブヨンブヨンになるやつ。確か名前はルート!

「おで、ここ守る」

 早速攻撃を仕掛けてきた。

 あれは確か、腕輪石(ストーンバンクル)だ!

 上から石つぶてが振ってくるはず!

「この場から離れて!」

 私の鋭い声にみんなが反応して、石つぶてを回避する。

「おでの攻撃を知ってるの?」

 ルートが首をかしげるけど、もしかして私たちのこと覚えてないの?

 もし覚えていないとしたらラッキーだね。

 こちらの手の内を知られていないってことだからね。

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