学年が上がり、高山とは別々のクラスになった。
須藤とも違うクラスになったことでどこかほっとした自分がいる。
同時に、高山の顔を見れるのが部活中しかなくなり、少し寂しい気持ちもあった。
しかも佐久間が高山と同じクラスというのだから当たり前に嫉妬した。
部活と言えば、俺たちバスケ部にはおかしなルールがいくつかあって、恋愛禁止のルールだ。
女バスにもあるんだから。というだけの理由で作ったルールだが、誰も彼女なんてできなかった。
俺の頭の中はお花畑いっぱいだった。
恋愛禁止ルールの中、自分1人だけが彼女がいたらどうだろうか?
圧倒的な優越感を得られることは間違いない!
大人の余裕も生まれる。
そんなわけで、高2の春はいつ自分に彼女ができるのかワクワクが止まらない日々を送っていた。
自分では一切行動をしていないのに。
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ところでこの高校。
男子が少ないということだけで、彼女を作るレースの厳しさが緩い。
つまり、選ばなければ誰でも彼女を作れるということでもある。
新しいクラスになると、新しいクラスメイトが当然いるわけで、そのクラスメイトとは”初めまして”なわけだが、どんな彼女がいる。という階級ができる段階でもある。
中には彼女や彼氏なんていなくても、クラスのカースト上位に食い込んでいる者はたくさんいるが、俺個人としては、彼女がいるという優越感が欲しかった。
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男バスにはマネージャーがいた。
俺が憧れていた3年の先輩の彼女だったのだが、先輩が引退して卒業してからもマネージャーとして居続けてくれていた。
先輩とマネージャーは、とっくに別れているわけだが、このマネージャーが可愛い。
「ゆり先輩可愛いよね」
と高山に何度言われたことか。
そう。高山とマネージャーの名前は奇しくも”ゆり”。
須藤と家が近いマネージャーは、自然と俺が部活帰りに家まで送る流れになる。
そんなある日に言われた一言が今でも忘れられない――
「じゃあ。武藤君に言っちゃおっかな。私には好きな人がいます。それは誰でしょうか?」
幼い俺は、自分への告白にしか聞こえなかった――
――今思えば、マネージャーは一度も“武藤君が好き”とは言っていなかったのに。

