「なぁ! ここのハンバーガー屋うまいらしいんだ!」
いつも通り一緒に昼食を食べながら、俺は意気揚々と白石に言う。
「……そうなんだ。……おすすめとかあるの?」
白石が俺の顔を見ながら言う。
いいぞ! 食いついた。
「一番人気なのは、スペシャルバーガーってやつだけど、白石ってチーズ好きだろ? チーズバーガーならトリプルチーズバーガーってのがある」
どうだ白石。
好きだろ? チーズバーガー。
「今度行ってみよっか?」
あれ? なんかこの笑顔。
みんなに見せる笑顔と一緒だぞ?
「もしかしてスペシャルバーガーの方が良かった?」
「え?」
「いや。チーズバーガーをオススメしたけど、他のハンバーガーの方が良かったかな? って思って」
「そんなことないよ? ありがとね?」
あ。またあの笑顔だ。
ハンバーガーは興味なかったか?
まぁ確かに昼飯を食いながら、別の食い物の話しは無いか。
「そういえば、アニメ映画見たいって言ってたよな?」
「え? あぁうん」
どうも歯切れが悪いな。
体調でもわるいのか?
「どういう系のアニメが見たいとかあるのか?」
「どういう系……」
白石が考える素振りを見せると、昼飯終了のチャイムが鳴った。
「もう終わりか。また放課後にでも続き聞かせてくれよ」
慌てて弁当を片付ける俺。
ふと、白石を見ると、どこかほっとした様子だ。
よかった。楽しかったんだな。
俺はこの時、聞こえていたはずなのに都合よく聞こえないふりをしていた。
――こういうことじゃないんだよ……
●
「おーい白石!」
放課後、俺は待ちきれないように声をかける。
「朝倉くん……」
その表情はどこか気まずそうだった。
「ん?」
「ごめんね。今日この後予定できちゃって……」
白石の周りには他の女子が数人。
「そ。そうか……わかった」
何でだよ白石。
一緒に帰って続き話すんじゃなかったのかよ!
そりゃ確かに約束はしてなかったけども……
あんなに楽しそうにハンバーガーの話しも映画の話しもしてたじゃんか。
そういえば白石、ずっと歯切れの悪い返事をしていたな……
本当に体調が悪いのかもしれないな……
●
次の日も白石は相変わらずだった。
クラスメイトといる時は、あのとってつけたような笑顔。
そっけない返事。
全てに興味なさそうな態度。
ただ、俺に対しても同じようになった。
一緒に昼飯を食っても楽しそうじゃない。
俺に対しても、あの笑顔を見せる。
どことなく距離を感じる……
そのせいで、会話が見つからなくなり、一緒にいるのに無言ばかりが続いた。
「なぁ白石」
ある日、俺は白石に意を決して訊いてみた。
「俺。何かしたか?」
「何かって?」
白石が箸を止めてこちらを見る。
久しぶりに白石の顔をまともに見た気がする。
「嫌われることとか。そういうの……」
「別にしてないけど?」
「あの……な……」
聞くしかない。
心臓がうるさい。
「最近。俺のこと避けてるだろ?」
白石は箸を置いた。
そして目を一瞬伏せ、何かを決意したような表情で再び俺を見据えた。
「……うん」
「その原因を聞いているんだ」
喉が異様に乾いた。
「もし俺がなんかしたなら……」
「朝倉くんは悪くないよ」
少し黙ってから白石が口を開いた。
「ただ……」
白石は何度か口を開いては閉じてを繰り返した。
「私が朝倉くんの人生の邪魔になりたくないだけ……」
ようやく絞り出した言葉だった。
それってどういう意味だ?
俺の行為が迷惑だったってことか?
白石が俺の人生の邪魔って何だよ。わかんねぇよ……
けど。
きっと白石は俺から離れたがってる。
それだけは分かる……
「そう……か……」
震える声で精一杯言えた言葉だ。
「……うん。ごめんね……」
白石の声も震えている。
勇気がいるはずだ。
本当に悪いことをしてしまった。
俺はまた。
白石を傷つけてしまうのか――
