君だけが俺をユイと呼ぶ~第13話 そうじゃない~

君だけが俺をユイと呼ぶ

「なぁ! ここのハンバーガー屋うまいらしいんだ!」

 いつも通り一緒に昼食を食べながら、俺は意気揚々と白石に言う。

「……そうなんだ。……おすすめとかあるの?」
 白石が俺の顔を見ながら言う。

 いいぞ! 食いついた。

「一番人気なのは、スペシャルバーガーってやつだけど、白石ってチーズ好きだろ? チーズバーガーならトリプルチーズバーガーってのがある」
 どうだ白石。
 好きだろ? チーズバーガー。

「今度行ってみよっか?」

 あれ? なんかこの笑顔。
 みんなに見せる笑顔と一緒だぞ?

「もしかしてスペシャルバーガーの方が良かった?」
「え?」
「いや。チーズバーガーをオススメしたけど、他のハンバーガーの方が良かったかな? って思って」
「そんなことないよ? ありがとね?」

 あ。またあの笑顔だ。

 ハンバーガーは興味なかったか?
 まぁ確かに昼飯を食いながら、別の食い物の話しは無いか。

「そういえば、アニメ映画見たいって言ってたよな?」
「え? あぁうん」
 どうも歯切れが悪いな。
 体調でもわるいのか?

「どういう系のアニメが見たいとかあるのか?」

「どういう系……」

 白石が考える素振りを見せると、昼飯終了のチャイムが鳴った。

「もう終わりか。また放課後にでも続き聞かせてくれよ」

 慌てて弁当を片付ける俺。
 ふと、白石を見ると、どこかほっとした様子だ。
 よかった。楽しかったんだな。

 俺はこの時、聞こえていたはずなのに都合よく聞こえないふりをしていた。
 ――こういうことじゃないんだよ……

 ●

「おーい白石!」

 放課後、俺は待ちきれないように声をかける。

「朝倉くん……」
 その表情はどこか気まずそうだった。

「ん?」
「ごめんね。今日この後予定できちゃって……」
 白石の周りには他の女子が数人。

「そ。そうか……わかった」
 何でだよ白石。
 一緒に帰って続き話すんじゃなかったのかよ!

 そりゃ確かに約束はしてなかったけども……

 あんなに楽しそうにハンバーガーの話しも映画の話しもしてたじゃんか。

 そういえば白石、ずっと歯切れの悪い返事をしていたな……

 本当に体調が悪いのかもしれないな……

 ●

 次の日も白石は相変わらずだった。

 クラスメイトといる時は、あのとってつけたような笑顔。
 そっけない返事。
 全てに興味なさそうな態度。

 ただ、俺に対しても同じようになった。

 一緒に昼飯を食っても楽しそうじゃない。
 俺に対しても、あの笑顔を見せる。

 どことなく距離を感じる……

 そのせいで、会話が見つからなくなり、一緒にいるのに無言ばかりが続いた。

「なぁ白石」

 ある日、俺は白石に意を決して訊いてみた。

「俺。何かしたか?」
「何かって?」
 白石が箸を止めてこちらを見る。
 久しぶりに白石の顔をまともに見た気がする。

「嫌われることとか。そういうの……」
「別にしてないけど?」
「あの……な……」

 聞くしかない。
 心臓がうるさい。

「最近。俺のこと避けてるだろ?」

 白石は箸を置いた。
 そして目を一瞬伏せ、何かを決意したような表情で再び俺を見据えた。

「……うん」
「その原因を聞いているんだ」
 喉が異様に乾いた。
「もし俺がなんかしたなら……」

「朝倉くんは悪くないよ」
 少し黙ってから白石が口を開いた。
「ただ……」
 白石は何度か口を開いては閉じてを繰り返した。
「私が朝倉くんの人生の邪魔になりたくないだけ……」
 ようやく絞り出した言葉だった。

 それってどういう意味だ?
 俺の行為が迷惑だったってことか?
 白石が俺の人生の邪魔って何だよ。わかんねぇよ……

 けど。
 きっと白石は俺から離れたがってる。
 それだけは分かる……

「そう……か……」
 震える声で精一杯言えた言葉だ。

「……うん。ごめんね……」
 白石の声も震えている。

 勇気がいるはずだ。
 本当に悪いことをしてしまった。

 俺はまた。
 白石を傷つけてしまうのか――

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