違う――
なんか違う――
俺は確かにどんな形でもいいから白石と一緒に居たいのだろう。
だが、一緒にいればいる程に、違和感を感じずにはいられなかった。
「ねぇ朝倉くん。この学校の七不思議はほぼ解決したようなものだし、次は記憶喪失について調べてみないかい?」
「記憶喪失?」
「そそ! 人体の不思議の1つだと思うんだよねー。どういった理由で記憶を失うのか。キミの意見を聞こうじゃないか」
にこやかに問われるが、そんな学問的なこと聞かれても分からない。
「思い出したくないことがあるとか?」
「ほぉー。いい線いってるねー。辛い思い出ね」
白石のこの言葉を聞いた時、胸が痛んだ。
「この件はもっと煮詰めていこうではないか!」
ふふん。と鼻歌まじりに白石が先を歩く。
ふと。白石がいつもよりも楽しそうに見えた。
「そういえばさ」
ふとした疑問だった。
特に理由があったわけではない。
「最初の頃に俺のことをズルいって言ったのあれ何で?」
俺は気づかなかった。
この質問が自分に対する地雷であることに――
●
「ユイのバカ……」
何度目の言葉だろう。
分かってる。
本当にバカなのは自分だって。
ユイにとっては、小さな頃の記憶は煩わしいもの。
私だけが大切に想ってる宝物で……
そもそも小さい頃の記憶なんて、ほとんどが薄れていくもんなんだから。
私の独りよがりでユイを苦しめるのはもうやめよう。
私が勝手に思い出して欲しい。って願ってただけなんだから……
重苦しい空気を入れ替えるように窓を開けるとそこには――
「ユイ……ホントにバカなんだから……ズルいよバカ……」
涙が溢れてくる。
あぁ――
やっぱり私はユイのことが好きなんだ……
意気揚々と歩くユイの背中をいつまでも見つめていた。
●
「キミがズルいのはずっとでしょ?」
何を今さら。と言いたげに白石が言う。
瞬間、胸が締め付けられる。
忘れていた。
白石は俺の過去を知っている。
そして俺は思い出せない過去がある……
「そう。か……」
歯切れの悪い返事をした。
白石もそれに気がついたのだろう。
目を伏せる。
「幸せな想い出も忘れちゃうことってあるよね」
声が暗い。
教室での白石でも、コンでも、不思議を探している時の白石でもなかった。
こんな表情見たことな――
「白石!」
思わず肩を掴んでいた。
「え? 何??」
心臓がうるさい。
俺はあの表情を知っている。見たことがある。
草原で白石と――いやコンと――
泣くコンを俺は慰めた。
そして約束した――
「お前を絶対に泣かせない」
「なにそれ」
クスリと笑われたが、俺は絶対に白石にこう約束したはずだ。
「じゃあ絶対に泣かせないように約束守って貰おうかな?」
「へ?」
「今言ったでしょ?」
「私のこと泣かせないって」
言った。確かにポロっと零れた言葉だが言った。
「それに私、自分で言うのもなんだけど、お前って呼ばれるの初めてだよ?」
逆光が、白石を更に輝かせて美しく見せる。
でもな白石。
実は初めてじゃないんだよ。
幼い頃に俺は白石のことを、お前って呼んでるんだ――

