君だけが俺をユイと呼ぶ~第6話 接近~

君だけが俺をユイと呼ぶ

 翌朝は驚くほど普通だった。

 昨日のことがあったから、恐る恐る学校へ行った自分がバカらしく思える程だ。

 コン。いや、白石は至って普通というか謎めいて人を寄せ付けない相変わらずな人物だった。

 逆に俺が気にしすぎてる気がして恥ずかしくなった。

「ねぇ」

 席が離れているにも関わらず、白石は俺に話しかけてくる。

 それだけでクラスの視線が痛い。

「お昼一緒に付き合って。共同発表の打ち合わせしたいから」

 それだけ言うと白石は、自分の席に戻って行った。

 だんだんと理解してきた。

 学校の中では白石というキャラを守り通すんだ。

 だから必要最低限の言葉だけを俺にかける。

 だけどきっと。それももうやめた方がいい。

「なんでお前だけ話しかけられるんだよ」
「ねぇ白石さんと一緒に図書館に行ったんでしょ? ずっとあんな感じなの?」
「ほんとに付き合ってないんだろうなー」

 クラスは白石を中心に回っている。

 そして俺は徐々に白石の付き人みたいな立ち位置として、舞台に引っ張り出されている。

 すべての煩わしさから逃げるように俺は、机に突っ伏した。

 ●

 昼休みになると、クラスの喧騒から逃れるように中庭へと足を運んだ。

「もうあんなことはしない方がいいと思う」

 一緒に昼飯を食べる白石に言う。

「なんで?」

 白石がほっぺたにご飯粒を付けたまま顔を上げる。

「なんでって。クラスのみんなから視線を集めてるんだぞ?」

「昔はそんなこと気にしなかったのに」

「え?」

 聞き間違いじゃない。

 コンは俺と前に会ったことがあるんだ。

「ユイは変わっちゃったね」

 寂しそうな目をする。

「コンは」

 聞き出そうとした瞬間、胸が締め付けられるような感覚が襲う。

「大丈夫だよ」

 コンがボソリと言う。

「ユイに忘れられるのはこれが初めてじゃないから……」

 俺は――

「キーンコーンカーンコーン」

「もうこんな時間?」

 コンが慌てた様子を見せる。

 弁当を半分も食べていなかった。

「私って前から食べるの遅いんだよね」

 コンがしょんぼりしながらため息をつく。

「これからは俺が一緒に食べてやるよ」

 理由は分からない。

 けど、勝手にそう口にしていた。

 あえて理由を言葉にするならば、放っておけなかったから。

「え?」

「俺が一緒に食べて時間内に食べ終わるようにせかしてやるよ」

 その言葉を聞いたコンが笑顔で言う。

「変なユイ」

 ●

 その日の放課後、俺は特に理由があったわけではないが白石と一緒に帰ることになった。

 白石は俺の家の場所を知っていたが、俺は白石の家の場所を知らない。

「ユイの家の近くだよ」

 その言葉通り、白石の家は俺の家の近くだった。

 途中の和菓子屋さんで、俺の好物みたらし団子を買ったのは何でなんだろうか?

「そういえばさ」

 ふとした疑問を投げかける。

「どうして俺の家知ってたんだ?」

 俺目当てで転校してきたって言ってたしな。

「ずっと探してたから」

 は?
 いやいやいや。意味が分からない。

「ねぇユイ。今度の土曜日、ちょっと付き合ってくれない?」

 結局コンは、俺の質問にまともには答えてくれない。

 それにしても――
 ここんところ毎週、土日にコンと会っている気がする。

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