タイムカプセルを埋めたのは草原じゃなくて神社だったか……
そりゃあ白石も埋めてないって答えるよな。
とゆーかそもそも白石はタイムカプセルのことも、神社のことも覚えてなさそうだったな。
神社と言えば、夏祭りの花火を見ている時の白石の横顔……
なんだか寂しそうで、どこかで見たような横顔だったな……
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「誕生日おめでとう!」
白石が塩田に何やらプレゼントを渡している。
今日は塩田の誕生日だ。
さすがに学校があるしテストとかもあるので、タイムカプセルを埋めるのはもう少し先になりそうだ。
「もうすぐ文化祭もあるしねー」
白石と塩田のやり取りを眺めている俺の隣に佐々木がやってきた。
「クラスの出し物はいいとして、同好会でも何かやりたいよな」
「だねー。せっかくだし何かやる?」
クラスの出し物は、フリーマーケットだった。
「っつても、飲食は3年生しかできないしなー」
「劇とかは時間ないしねー」
「ありきたりな展示品かなー」
「ま。いんじゃない? 今まで見つけた不思議の展示とか」
「落合たちはフリーマーケットの準備で忙しいから、俺らで展示の準備進めようぜ!」
「お? 珍しくやる気ですなー」
佐々木がからかってくるが、この時の俺はまだ知らない。
この提案が、俺と佐々木の関係を決定づけることになるということに……
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俺と佐々木はまずテーマを決めることにした。
不思議。と一言で言ってもたくさんあるからだ。
「今までの全部展示したら?」
と佐々木は言ったが、この前の神社のように何もなかったことの方が多い。
「むしろ何もなかったのをテーマにしたら面白そうじゃないか?」
「どういうこと?」
「例えば、どこかに心霊スポットがあるとするだろ? けどそこに行ったのに幽霊には会えませんでした。みたいな展示にするのさ」
「不思議を探したけど見つかりませんでしたってこと?」
「そうそう。いかにも不思議がありそうな場所に限定してさ!」
「それならこの前の神社は最高のスポットね!」
「祭りや花火の写真は辞めとけよ? 神秘さがなくなる」
「なに。神秘さって」
佐々木が笑う。
ドキン。と心臓が跳ねた。
この笑顔に見とれてしまう。
目が離せない。
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この日は結局、急遽決めたことだったから、写真が少なくまた後日写真を持ち寄ることにした。
「顔赤いよ?」
佐々木に言われたが、
「夕陽の反射じゃね?」
と誤魔化した。
「この部屋。随分片付いたよね」
美術準備室を見渡して佐々木がため息をつく。
「あぁ。最初は埃だらけだったからな」
「あの時はもうすぐ夏が始まるって感じだったのに、気がつけばもうすぐ冬だよ!」
「あの掃除をしてた頃は、まさかこんな風になるとは思わなかったよな」
「私は掃除してないけどねー」
佐々木がいたずらに舌を出す。
「あの時朝倉の掃除を手伝ってくれたのは、かおるちゃんだっけ?」
「あぁ。今だに何で手伝ってくれたのかは分からないけど、単なる気まぐれなのか何なのか……」
「かおるちゃんに限って気まぐれってことはないんじゃない?」
「どうだか。今も何だか避けられているような気がするし」
「んー。本人は避けてるつもりはないと思うよ? 気になるなら話してみたらいいじゃん」
「いや。今の俺には白石のことを知ろうとする探求心はもうほとんどなくなっている気がする」
今の俺は少しずつ佐々木に向かっているのは確かだ。
「まぁ、自分の過去が気になるってのはあるけど、佐々木が前に言ってただろ? 今を楽しめって。そうしよっかなと思ってる」
「ま。自分で選んだならいいけど、後悔しないようにね」
そう言って佐々木は立ち上がった。
スカートがフワリと持ち上がる。
心臓の音がうるさいが、これは決して下心ではないと思いたい!
佐々木はそのまま教室のドアのところまで行った。
そこでピタリと立ち止まる。
「それと」
くるりと振り返り、続きを言った。
「私が最初に言った警告もお忘れなく」
びしっと指を指しながらウインクしてきた。
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佐々木の警告ってなんだっけ?
過去を引きずるなとか、そんなんだっけ?
白石に関することか?
思い出したくない思い出は無理に思い出さなくてもいい。みたいなことを言われたような気がする。
最近、色んなことがあったからな……
「……くん」
声がして我に返った。
塩田がいつの間にか教室にいた。
「あれ? 1人?」
どうやら塩田は佐々木も一緒にいると思ったらしい。
「あぁ。佐々木ならさっき帰ったぞ。そっちこそどうした?」
「何やら朝倉と佐々木が2人で同好会の出し物を模索してるという噂を聞きつけてな」
塩田の後ろから落合が入ってくる。
「あれ? 白石は?」
別に期待をしていたとかではなく、この2人がいて白石だけ入ってこないのが不自然だった。
「あれ? さっきまでいたのにな」
「白石さんならさっきトイレ行くって」
落合がキョロキョロと辺りを見渡すと、塩田が言った。
「ふーん。そっか……」
また落合の、何かを悟ったようなそっか。だ。
「落合ってたまにその言い方するよな」
「その言い方って?」
「なんて言うか、全部知ってそうな言い方」
「分かるかも!」
塩田が頷いた。
「なのに教えてくれないことあるよね!」
そう言って、俺の隣に来た。
まるで2人で落合を攻めているような構図だ。
「俺はそんなことしてないぞ?」
「いっつもしてるじゃないー」
「そーだそーだ」
俺は横から茶々を入れた。
「何してるの?」
白石が白い目で俺たちを見る。
その視線が、落合、塩田、そして俺へと順に進む。
「聞いてくれよー白石ー! こいつら2人して俺のことを悪者扱いするんだぜー?」
落合が冗談を言うが、何やら白石は怒っているように俺には見える。
「で? 悪者なの?」
白石が塩田に聞く。
「ちょいちょいちょいー! それはないんじゃない?」
落合が突っ込むと、塩田が吹き出した。
「白石が冗談を言うなんて意外だなー」
俺が笑いながら言うと白石は、そう。とだけ答えた。
あれ? 何だろう?
白石は笑顔だし、落合と塩田と楽しそうに話している。
それなのにつまらなそう……
いや。俺と話す時だけつまらなそうに見える。
何ていうか、
まるで俺だけ友達じゃなくて、クラスメイトって感じだ……
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「ねぇこれなんて良くない?」
佐々木が俺に写真を見せてくる。
「あー。じゃあこれも貼り付けるぞ?」
巨大な模造紙に、佐々木が選んだ写真を貼り付ける。
「相変わらず美人さんですなー」
思い出の写真を見ながら佐々木が言う。
写真には、夕焼けを背景に笑顔を見せる白石が映っていた。
確かに白石は美人だ。
「これならみんなからモテるのも頷けるよねぇー」
佐々木はそう言いながら猛烈に頷いていた。
「そういう佐々木だってモテるだろ?」
「は? 私? モテるわけないじゃんー」
「そんなことないだろー」
「私はねー。いつでも2番目なんだよねー」
「2番目?」
「ちょっと言い方が悪いかな。なんて言えばいいのかな」
んー。と少し考えた後に佐々木が再び口を開いた。
「クラスのマドンナ的存在の友人って立ち位置なんだよね」
そう言う佐々木の顔はどこか寂しそうだった。
