「お前を絶対に泣かせない……か……」
前に言われた言葉を、1人廊下を歩きながら呟く。
ユイのことをズルいって言ったけど、私もズルいよね……
私はずっとキャラを使い分けてる……
ユイの邪魔をしたくないのに、ユイの傍にいたいから……
「私はどんな形でもユイの近くに居たいんだな……」
本当は手伝っちゃいけないのに、分かっていたのに……
頭では分かってても、心と体がユイを求めてた。
そりゃユイに、分からないって言われちゃうよね……
でも――
このままじゃユイは前に進めない……
私がちゃんとしないと。
私は白石かおるなんだから――
●
俺は呆然と立ち尽くしていた。
嵐のようなやつだった。
勝手に手伝って、終わったら終わったで勝手に帰って。
「今な、白石が掃除を手伝ってくれたんだよ」
「ほぉー!」
俺の悪態を聞きつけた佐々木が、目を輝かせる。
「あれから色々考えるんだけどよ。考えれば考える程、白石のことがよくわかんねぇんだよ」
「何で手伝ったかとか、何で素っ気なくするのかとか?」
俺の心の中を読んだかのうように、佐々木がズバリ言い当てた。
「朝倉は恋愛のことが全く分かっていないねぇー」
フフフ。と俺の反応を楽しむように言ってくる。
そこまで言うなら、全部教えてくれればいいのに。
「朝倉ってほんと分かりやすいよね」
クスリと笑う佐々木は、今まで見た表情とは違って心臓が高鳴った。
「まぁー。このまま朝倉が空回りしてしまうのは私としても本意ではないので」
ほこりっぽい1つの椅子を自分に寄せながら佐々木が言う。
「すごいねここ」
けほけほ。とせき込んでいる。
確かにさっきまで掃除したけど、まだまだほこりっぽさは無くならない。
「窓開けるよ」
そう言って、窓を開けた瞬間心地いい風が入り込んできた。
「おー。気持ちいねー」
佐々木が俺の隣までやってきて、風の心地よさを堪能している。
その横顔が妙に色っぽくて大人びていて――
風に揺れる髪、心地よさそうにしている横顔……
その全てが――
「もう完全に夏だね!」
にこりと微笑んでくる。
とても可愛い。
俺は今絶対に、顔が赤くなっている。
「私が思うにだけど」
またこの前置きだ。
「かおるちゃんは朝倉のことが気になっているんだと思う」
「気になる?」
「朝倉って好きな人いるでしょ?」
「なっ!」
突然核心をつく
「嘘が下手だなー」
クスリと笑われた。
この前も言ったじゃーん。
とか言われるけど、あれだろ? 俺が佐々木のことを好きだと思ってるってやつだろ?
「端的に言えば、その相手が誰か気になってるんだよー」
それが佐々木だと何となく思っているとか?
「しかもさ。朝倉とかおるちゃんは友達なわけじゃん? 自分が一緒にいることで迷惑になるって思ったんじゃないかな?」
「それが距離を取る理由?」
「そりゃそうでしょ!」
びっくりしたように佐々木が起き上がる。
窓から乗り出すように外の風を感じていたため、窓枠に頭をぶつけている。
「いったぁーい!」
目の端に涙を浮かべている。
「ま。キミに好きな人がいる以上、距離を置くのは普通じゃない?」
友達として隣にいたい。
けど、俺は佐々木のことが好きだと勘違いをされている。
それで距離を取られているってことは……
「そういうことなのか!」
思わず俺も起き上がり、頭をぶつけた。
白石は俺のことが好きじゃない。
だから距離を取りたいのか……
「唐突に全てが理解できた! ありがとう!」
目の前が真っ暗になりそうな気持ちだが、無理やり明るくつくろう。
「……それならよかった」
佐々木は、にこりと微笑む。
「白石は応援したい気持ちなのか?」
「だと思うよー。私も応援してもらってるしー」
それにしてもそうか……
俺は白石にとっての友達だったのか――
