白石は同好会に戻ってきた。
だが、俺との関係が少しギクシャクしている。
理由は明白だ。あの質問に即答できなかったから。
「なぁ白石」
「ゆかりちゃん! この前美味しいパンケーキ屋さん見つけたんだけど行かない?」
俺の話しを遮るように白石が言う。
ここんところずっとこうだ。
加えて、俺と白石を近づけない要因が――
「はる様ー! おやつをお持ちしましたわ」
吉岡は、俺のことを好きという気持ちを隠すことをしなくなった。
どうやら、俺のことをはる様と呼んでいたらしいがやめてほしい。
「来たわね女狐!」
「あら? 泥棒猫さんはまだはる様に振り向いて貰っていないのね?」
これがお決まりになっている。
これだけ見れば、2人は仲良くて俺のことを好きなラブコメに見えるだろうな……
「これ美味しい」
塩田がクッキーをつまむ。
「駅前の焼き菓子屋さんで買ってきたのよ。アナタ達庶民には買えないと思ったから持ってきてあげたのよ?」
「そんな言い方しない」
佐々木が吉岡にチョップを食らわす。
「でも吉岡さんって羨ましいかも」
塩田が言うと白石が反応した。
「はぁ? さくみ辞めときなさい」
「辞めときなさいって何よ!」
「こんな恥も外聞もない人になっちゃダメよ!」
「失礼ね! 私はおしとやかなの」
「どこがおしとやかなのよ!」
「私は情熱的だから、好きな人にアタックしちゃうだけよ? 誰かさんみたいに自分の気持ちを伝えられないままだと前に進めないしねー」
「私のこと言ってるわけ?」
「別にぃー? はる様。今度私料理にチャレンジしてみますわ。私の手料理で惚れさせてみせるから覚悟してくださいね?」
それだけ言い残して、美実準備室から去って行った。
「相変わらず嵐のようなやつだな」
「それにしてもモテモテですなぁー」
俺の言葉を無視して佐々木が言う。
「ホントだよな。俺の方がずっといい男のはずなのに」
落合が腕を組んで言う。
「お前の自信はどこからくるんだ?」
「ほう? それでは朝倉くんよ。キミは自分のことを俺よりもいい男だと言うのだね? そーかそーか。それじゃあ次の集まりは全部朝倉くんにお金を出して貰おうじゃないか」
「いや。ちょっと待て!」
落合が、はっはっはー。とわざとらしい笑い方をして塩田の後ろに隠れやがった。
「と。とりあえずタイムカプセルを埋める日にちとか場所を決めちゃわない?」
塩田が苦笑いする。
「今度の日曜日ってみんな予定どう?」
「あー。悪い。俺最後のバイトだわ」
俺が聞くと、塩田の後ろから落合が出てきた。
「ってゆーかその日雨よ?」
結局、みんなの都合がつくのは、塩田の誕生日から1ヶ月も過ぎた11月ということになった。
●
<少し話せないか?>
どうもギクシャクしてしまうから、俺は白石にメッセージを送ってみた。
「はる様」
白石から返事が来る前に吉岡に捕まった。
これで2度目だな。
「どした?」
「私は、お料理というものをしたことがありません」
「あぁ。だろうな。令嬢が飯なんて作ってたら逆に驚くわ」
「ですが、はる様のために作ろうと思っているのです」
ゴクリ。と吉岡が唾を飲む。
「もしも……」
両手をもじもじさせる。
「上手に作れたら……食べてくれる?」
「そりゃあ食べるだろ?」
当たり前のことを吉岡は聞いてくる。
「ありがと」
にこりと微笑むと、吉岡はスキップしながら帰って行った。
「あ。白石から返事返ってきてた」
ずっとスマホ開きっぱなしにしてたのか……
既読だけつけて返事なくて、白石怒ってないかな?
いや。白石はそんなこと気にしないか。
<いいけど何?>
<あの草原に何があったのかが知りたいんだ>
既読はすぐについた。
けど、返事は来なかった……
