ユイのバカ……
不思議探しは2人だけの特別だったのに……
昔のことを思い出したくないのはいい
でも。
今の私も嫌いなの?
塩田さんと2人きりでいたんだよね……
もう――
私とユイ2人だけの特別は何もないんだね……
●
俺は塩田に怒られていた。
理由は、みんなにたった1人の美術部員だということを明かしてしまったからだ。
「いや。でも言わないと不自然じゃね?」
「わざわざ朝倉くんから言わなくてもいいじゃん」
「そうだけど。じゃあなんでここにいたの? とか聞かれるかもしれないし」
「美術準備室に居たこと自体、言う必要なくない?」
確かにそうだ。
俺はありのままを言った。
けどそれは塩田にとっては守りたかった秘密だ。
「難しいね」
ボソリと塩田が言う。
「え?」
塩田の顔を見ると、怒っているわけではなさそうだ。
「朝倉くんがありのままのことを言ったのは分かってる。でもそれが不正解の時もあるんだなって」
「あぁ。けど俺もうっかり言ってしまったし。ごめんな?」
「いつかこの埋め合わせしてもらうからね?」
にこりと微笑まれて塩田は帰って行った。
●
「朝倉くんちょっといいかな?」
帰り道。
佐々木に呼び止められた。
「落合くんに言われたと思うけど。かおるちゃんとさくは特段仲良いってわけじゃないから無理やりあの2人を話させるようなことはやめてね?」
「あぁ。2人とも人付き合いが苦手だからだろ?」
俺は落合に言われたことをそのまま佐々木に伝えた。
「そーゆーこと。でもこの同好会は、私たち5人が仲良くきっかけになると思うんだ」
「もしそうなったら。みんなで色んなところ出かけたいな」
色んなところ。と言って何故か草原が思い浮かんだ。
「まずは明日、同好会の申請書を提出しに行かないとだね」
にこりと佐々木が微笑む。
心臓が跳ねた。
やっぱりそうだ。
佐々木って可愛いんだ……
●
不思議探し同好会はすんなりと結成できた。
梅雨が開けてテストが終わると、夏が本格的に始まり夏休みが近づく。
「夏休みも活動続けるだろ?」
俺が当たり前の疑問を投げかけた。
しかしどうやら当たり前じゃなかったようだ。
「そうだな。できる限り集まりたいな」
落合が驚いた表情を見せた。
「私も予定がなければ参加したいな」
佐々木だも同じく驚いている。
「必要なら」
白石は淡々としている。
「私もいいんですか?」
おどおどしながらも、誘われたこと自体に塩田はびっくりしている。
「もちろん同好会の一員なんだからいいに決まってるだろ?」
この言葉を聞いて塩田の表情は明るくなった。
それにしてもみんな夏休みは活動休止にするつもりだったのか?
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「なぁ。みんな夏休みに活動するつもりなかったのか?」
調べ物の最中、たまたま佐々木と一緒に行動することになったので訊いてみた。
「うーん。どうだろう」
少し考えながら佐々木が答えた。
「少なくとも私はそうだったかな」
「え?」
「だって言っちゃ悪いけど。短期間的な集まりだったじゃん?」
「そうなのか?」
「だからみんな驚いてたんじゃん?」
分からなかったの? と逆に驚かれた。
「でも嬉しかった」
にこりと微笑まれた。
つられて心臓が跳ねる。
「え?」
「きっと誘われなかったら何もない夏休みだったから……」
夏の風が佐々木の髪を揺らして、夕陽が頬を染めた。
その姿が妙に色っぽくて、目が離せなくなっていて――
たぶん俺は佐々木にひかれていっている……
