君だけが俺をユイと呼ぶ~第38話 再会~

君だけが俺をユイと呼ぶ

 ――私はどうしたいんだろう?
 ユイと一緒にいたいのに、ユイの邪魔は絶対にしたくない……
 さくみとかゆかりちゃんとか、吉岡と名乗ったあの美人といる方がユイは幸せになれる気がする。
 何よりも、私といるとユイは過去に囚われてしまう……

「私はユイの傍にいちゃいけない人間なんだ……」
 この懐かしい草原だった場所も、もう――
 あぁそうか……
 過去に囚われてるのは私の方なんだ……

<今どこにいる?>
 なんでユイはいつもいつも……
 このままじゃ私はユイから離れられないじゃない……

 なのに私は返信してしまう……

 心のどこかで、ユイにこの場所に来て欲しいと思っているから……

 ●

 白石からは返事が来た。

 吉岡とのことは失敗したけど、白石とのことではもう失敗しないようにする。
 そう思っていたのに……

「朝倉くん」
 塩田に呼び止められた。
「ちょっと相談があるんだけど……」
 俺は塩田の相談に乗る約束を前にしてたからな……
<悪い。塩田に呼ばれた。また今度話しを聞いてほしい>
 これだけ送って俺は塩田と店に入った。

「白石さんのことなんだけど」
「あぁ。俺もちょうどさっき連絡したところだ」
「え? そうだったんだ。ごめんね?」
「いや全然? それで?」
「連絡してたなら意味ないかもしれないけど、みんなでタイムカプセルを埋めるって言うのはどう? って提案しようと思って」
「なるほど! それなら当初からの予定だし、白石も来やすいかもしれないな!」
「私から誘ってみるよ。朝倉くんからよりは来やすいと思うから」
「あぁ。頼むよ」

 ●

 私はズルい女だ……

 朝倉くんと白石さんの接点を少しでもなくそうとしている。

 少しでも自分に可能性を引き寄せるために……

 このマフラーも、少しずつ形になっている。
 早いなぁ……

 ずっと編んでいたかったな……

 編み終わったら今度は渡さないといけないんだよね。

 朝倉くん……受け取ってくれますか?

 ●

「ちょっといいか」
「誰かしら?」
「俺は朝倉の友人の落合だ。ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「未来の私の旦那のお友達ね! 今から懇意にしてて損はないわね!」
「心の声が全て声に出てるぞ。それから、吉岡って言ったっけ? あんたはヒロインレースに参加できないよ」
「何を言ってるの?」
「朝倉の心はずっと白石のものだ。今も昔もな」
「そんなの絶対に許さない! はるくんが私に何をしたのか! 私の全てを奪ったのよ? 絶対に許さない! 白石さんを殺してでもはるくんと一緒になるわ!」
「そんなの俺がさせるわけねーだろ?」
「誰も私を止められないわ!」
「こんなこと言いたくねーけどさ。あんた、どんどん朝倉に嫌われるぞ?」
「何で私が嫌われるのよ! 好かれるなら分かるけど嫌われるいわれはないわ!」
「言っておくけど。好きになるのに理由ってないんだぜ? けど、嫌われるのには必ず理由があるんだ」
「……私はどうすればいいの?」
「まずは小学校の頃に何があったのかを教えてくれよ。あんた自身も過去からもう抜け出さなきゃいけないだろ?」
「私を解放してくれるの?」
「俺や朝倉に依存しなけりゃ自然に解放できるはずだ」
「落合くんって言ったわね」
「あぁ」
「私ははるくんを苦しめていたのかしら?」
「苦しめていたし、苦しめたかったんだろ?」
「そうね……彼を苦しめることで、過去の罪を忘れさせないようにしてただけね……でもあれは罪でもなんでもなくて、私がフラれたことを受け入れられなかっただけ……そのせいで河村くんは私たちの目の前で自ら命を断った……私は……取返しのつかないことを……」
「後は私に任せて」
「佐々木? ついてきてたのかよ」
「落合は1人で何でもやる癖があるからね。キミはさくの傍にいるってゆー大事な役目があるからね」
「あのなぁ。俺は塩田のことをいつもからかってるんだぞ?」
「それでも傍にいてあげなさい。この子の傍には私がついているから」

 ●

 俺はそこにもういないと分かっていたのに、白石がさっきまで居たという場所に立っていた。
 あの神社から近い場所だった。

 辺り一面に茶色い景色が広がっている。

「ここって……夏場なら草原になっているんじゃ?」
「そうだよ?」
 背後から声がした。
 振り返らなくても声の主は分かる。

「白石……」
「ユイ……来てくれたんだね」
「白石。ここは、小さい時に俺や白石が一緒に遊んでた場所か?」
「そうだよユイ。全部忘れちゃったんだね」
「だから白石はそんなに嬉しそうで懐かしそうな顔をしてるんだな」
「ユイはいつもそうだよね。コンの顔見ただけでコンが何を考えているのかを当てる。ズルいよ」
 あ……最初に白石が俺に言った、ユイはズルいって言葉。あれはそういう意味か……

「来て」
 そう言って白石は先を進む。
 開けた場所から木がまばらに生える場所に進み、更に木陰が増える……

「やっとここで再会できたね!」
 にこりと白石が微笑む。

「ここって、何かあったのか? いや。あったのは何となく分かるが、何があったのかが思い出せないんだ……」

「あったよ」
 白石の顔から笑顔が消えた。
「ここには、全部があったよ……」

タイトルとURLをコピーしました