君だけが俺をユイと呼ぶ~第48話 台風~

君だけが俺をユイと呼ぶ

「ユイー! 一緒のクラスだねー」
「バカだなぁーコン。1クラスしかないんだから一緒のクラスに決まってるだろ?」
「ずっと一緒に居るって約束だもーん」
「そんな顔するなよ」
「むー。ほっぺムニムニしないでー」
「コン。クラスに馴染めそうか?」
「コンよりもユイは自分のことを心配したら? 人多いの苦手じゃん」
「クラスに5人だぜ? よゆーよゆー!」

「えー。今日はこれから台風が来るので、午後の授業はしません。体育館で親御さんが来るのを待っててください」
「だってさユイ」
「コンの親忙しいんじゃね?」
「今日はお仕事って言ってた」
「うちも。多分すぐには迎えに来れないんじゃね?」
「もしも2人とも親が迎えに来なかったらどうなるのかな?」
「んー。俺とコン2人だけになる」
「えー。でもユイが居るならいっかー」

 ●

 あの台風の日、私もユイも親が仕事だから迎えに来ない。と勝手に思い込んでいた。
 だからあんなことをしたんだ。

「ねぇ! どうせ迎えに来ないなら学校の中探検しようよ!」
 私の提案で、ユイと私は待合場所の体育館には行かず校内をウロウロ周ることにしたんだよね。

 まだ雨も小雨だったし風が強いだけだったのを覚えてる。

 あの頃の私たちはどうしようもなく幼かった。

 大人たちから隠れながら、校内を探検するのはスリルがあって凄くドキドキして楽しかった。

「雨。強くなってきたね」
 大人たちから隠れているから、電気を点けることはできない。
 雨雲のせいなのか日が落ちてきたからなのかは分からないけど、辺りは暗くなってきていた。
 不安そうにするユイの顔を見て、幼い私は酷い罪悪感に襲われた。
「ユイ。おうち帰りたい?」
「コンを残して帰れないよ」
 ユイがそう言った瞬間、雷がなってユイが怖がった。
「ユイは相変わらず怖がりだなー。大丈夫大丈夫」
 私はユイを抱きしめながら頭を撫でた。
 いつもユイはこうすると落ち着くのを知っているから。
 私だけができる魔法。
「誰もいないのかな?」
 ポツリと胸の中でユイが言う。
「みんな帰ったかもね」
「世界で2人きりになっちゃったね」
 抱きしめた両腕の中からユイは顔を覗かせて、さっきまで怖がってたくせに笑顔を見せている。
 目を輝かせるユイは、無邪気で冒険心に溢れてた。
 その表情が私をどれだけ救ってくれたか。
 不安でしょうがなかった私に元気づけてくれた。
「ユイと一緒なら平気だよ」
 私は、ユイを抱きしめる腕を強めた。
 自分の不安を消し去るように。
「ねぇユイ……」
 振り絞るように言葉を出す。
「もしも誰も迎えに来なかったら……」
「俺がずっと傍にいてあげるよ」
 ユイはいつだってそう。
 私が望む答えを出してくれる。

 ●

 あの後私たちがいないということで、大人たちが慌てていたのを知ったのは、私たちが大きくなってからだ。
 私もユイもこっぴどく怒られた。
 ユイは私が提案したから大人に隠れて探検をした。
 私が原因でユイは怒られた。
 私のことを怒っていると思っていたのに……

「コン! あの台風で俺たちの秘密基地が壊れてるかもしれない! 見に行こうぜ!」
 ユイはいつものユイだった。
「急いで急いでコン!」
 私の手を引っ張って走るユイの顔は、キラキラ輝いていた。
 この表情を見るだけで私は全ての嫌なことを忘れられた。
 ユイはいつだって私の救世主だった――

「うわー。やっぱり壊れてるよー」
 残念そうにユイが言う。
「何やってるんだよコンー! そっち持ってくれよ」
 ユイはいつも前向き。
「あ。うん……」
 私はそんなユイが好き。
 前向きで、プラス思考で、くよくよしないで、落ち込まないで、たまに弱虫なユイが……
「ん?」
 ユイが私を見てくる。
 私はにっこりとユイに微笑みかけた。
「大好き!」
 そう私が言うとユイは頬を染めて照れた。
「知ってるし」
 精一杯のユイの強がりだ。

 私は、ユイのことをずっと支え続ける。

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