お盆前になるとまたあの神社にみんなで集まった。
みんなで泊まって霊が出るかどうかの検証をするためだ。
「急だったけどみんなで来れて良かったよな」
夕飯後に落合が言う。
全くその通りだ。
特に塩田は来れるかギリギリまで分からなかった。
「来れてよかったよー」
にこにこしながら佐々木が塩田に言う。
「頑張って説得しました!」
握り拳を作ってポーズをすると、その反対を歩く白石が笑った。
「相変わらず敬語だけどね」
「努力はしてるんですけど」
「またじゃん」
佐々木も突っ込む。
「女子は何だかんだ仲良くなったよなー」
神社までの道のりを歩きながら落合が気楽に言う。
「何でもあの3人でちょくちょく買い物に行ってるらしいぜ」
ほう? なら塩田の悩みもすぐに解決できそうだな。
「ところで朝倉くんよ」
落合が急に肩を組んできた。
こういう時に、俺をくん付けで呼ぶ落合には絶対に何かある。
「一体いつになったら俺と遊んでくれるのかね?」
あ。言われてみれば落合とは一度も2人きりで遊んだことがないな……
「聞けばあの3人とはそれぞれに2人きりで遊んだそうじゃないか」
ニヤリと笑ってくる。
「誰を狙ってるんだとか野暮なことは聞かないから、俺とも遊びたまえ」
そう言い残して、落合は少し前を歩く女子3人組のところへ行ってしまった。
そっか。親友とも呼べる落合と遊ぶ日が来るのか……
そう思った瞬間。
強烈な頭痛に襲われた。
「また頭痛?」
俺の様子を見て、心配そうに佐々木が寄ってきた。
「あぁ。今度落合と遊ぼうって話しをしたら急に」
「昔のこと思い出しそうになったから?」
「多分な」
「落合のことが本当に大切な親友なんだね」
にこりと佐々木が笑う。
きっとそうなんだろうな。
そして、過去にも同じくらい大切な親友がいたんだ……
そういえば、白石の話しだとあの草原にいた子供は俺と白石だけって言ってたな。
じゃあこの頭痛の原因の親友は一体誰なんだ?
●
夜の神社は不気味だった。
先ほどまでの頭痛はいつの間にか収まっていた。
辺りに明かりはなく、手に持つ懐中電灯だけの明かりが頼りだった。
「まずは周辺を見てみるか」
落合が先頭を歩き出す。
全く怖がっている様子がない。
「怖くないんですか?」
塩田が隣で訊いている。
意外なことに、塩田も怖がっていない。
「ぜーんぜん」
楽しそうに落合が答えると、塩田はもっと意外なことを言った。
「私は会ってみたいですね。そういう幽霊とかに」
なるほど。こういうのが好き系女子か。
「私は絶対に無理!」
へっぴり腰で言うのは佐々木だ。
「私も無理」
そんな佐々木にしがみつきながら白石も言う。
2人とも涙目だ。
「そんなに無理なら部屋に残ってればよかったのに」
俺が言うと、2人からの猛反撃がきた。
「部屋にお化けが出たら、私たちのことを誰が守るのよ!」
「キミは私とゆかりちゃんを見殺しにするつもりなのかい?」
「わかったわかった」
やれやれと首をふる。
●
みんなで神社周辺の森を探索する。
怖がる白石と佐々木を中心にして、お化けから守る姿勢を見せておく。
小さな音ですらこの2人はびっくりする。
そのびっくりする声でこっちもびっくりするわ。
それにしても――
なんとなくだが。見覚えがある景色だ。
幼い頃に白石と。いやコンとやったお化け探し……
夜中の神社で、
ピッタリと俺にひっつくコンと、
夏の夜の匂いに虫の鳴き声――
「全部が懐かしい」
声に出ていた。
全員の足が止まる。
一斉に視線が集まる。
「どうした? のりうつられたか?」
落合が言う。
とてつもなく、怪訝そうな顔をしている。
「あ。いや。ごめん何でもない」
それにしても本当に懐かしい。
不思議なことに、ここの神社のことを思い出しても頭が痛くならない。
嫌な思い出というわけではないんだろうな。
たしかここを曲がると大きな木があって、
「そこ。根っこあるから気をつけて」
急な坂があって、
「坂道急だぞ」
穴がある。
「穴に躓くなよ」
やっぱりだ。
記憶の通りだ。
間違いない。
俺はここでコンとお化け探しをしていたんだ!
「すげぇな」
落合が俺のことを見る。
「いや。俺は小さい頃にここに来たことがあるようなんだ。さっき思い出したんだ」
「俺の記憶が正しければ、ここに霊はいないぞ」
俺が落合にだけ聞こえるように、告げた。
「そりゃ聞きたくないお告げだな。ま、みんなでこの体験を共有できるだけでも悪くないだろ?」
気楽な感じで頭の後ろで手を組む。
「そーいやー。この辺で夏祭りもあるな」
思い出したように俺が言うと、今度はみんなで夏祭りも行こうという話しになった。
●
「結局いなかったな」
翌朝の帰りの電車で、落合がみんなに言う。
「今度は会えるといいですね」
にこりと塩田は、絶対に理解されないことを言っている。
「あそこに行ったことあったんだって?」
隣で佐々木がヒソヒソ言う。
「あぁ。不思議なことに頭が痛くなることはなかった」
「嫌な思い出じゃなくていい思い出だったんじゃない?」
いい思い出か。
コンとお化け探しをした思い出はいい思い出。
言われてみれば、草原を思い出す時には頭痛はしないな……
白石と親友は無関係?
チラリと白石を見る。
白石は目を閉じている。
疲れたのかな?
「じゃ。私はここだから」
佐々木が自宅の最寄り駅で降りる。
1人。また1人と電車を降りていく。
最後に残ったのは、俺と白石だ。
一緒の駅で降り、無言のまま一緒の道を歩く。
2人きりでも白石が話しかけないのは珍しい。
よっぽど疲れてたんだな。
「じゃ」
白石の家の前で白石は初めて口を開いた。
「なぁ白石」
家に入ろうとする白石を俺は呼び止めた。
黙ったまま白石はこちらを振り返る。
今度こそ確信があった。
「あの神社。俺たち行ったことあるよな?」
俺は、自分の過去の真相に近づけると思っていた。
だからこそ。
白石の次の言葉を聞いて落胆したし、理解が出来なかった。
「知らない」
ぷいっと白石は家の中に入ってしまった。
