異世界転生しか勝たん~第二十二稿 軍事拠点の作成~

異世界転生しか勝たん

 道中は何事もなく私たちはサラダ村に戻った。

 人民掌握軍が襲ってくるということは、整備と警備のおかげで、なかった。

 でもよく考えたらちょっと疑問に思うことがある。

「ねぇ。」

 村に入って一息ついたところで私は仲間になってくれた2匹のフェアリーと2匹のバンパイアに質問を投げかけてみた。

「この世界には怪獣がいるし、人民掌握軍もいる。なのに私はどこの村にもすんなりと簡単に入れたのっておかしくない?」

「そうなの? 別に普通なんじゃない?」

 あんたばかぁ?と付け足しながらバジルちゃんが言うけど、絶対普通じゃない。

「確かにパセリちゃんはこの村とレタス村に簡単に入れないように警備を置いてるわね~」

 ふと気がついたようにクレソンちゃんが言う。

 そうなんだよ。今更ながら私も気づいたけどこの世界の人には村を守るという発想が全くないんだ。

 言い換えれば警戒心がなさすぎる。

「これってどこの村でも同じことなの?」

「あぁそうだな。どこの村でもパセリの言い方を借りるなら簡単に入れる」

 パクチー君が頷く。

「でもそれがどうかしたの?」

 キョトンとしながら私に問うのはルッコラ君だ。

「うん。もしもこの辺だけがそういう意識だったなら危ういって思ったんだけど、そもそも村を守るという発想がないならまた話しは別。人民掌握軍が支配するエリアへ攻める時も比較的簡単に攻められるってことだし、こっちはこれからは攻められないように防御策を施せばいいわけだから」

 私の言葉を真っ先に理解したのはクレソンちゃんだった。

「掌握軍から解放した地域を再び奪われにくくするってことね?」

 いつもののほほんとした話し方ではなく、しゃきしゃきした話し方をしてるからクレソンちゃんの頭脳が高回転している証拠だね。

「その通り! 今私たちは村長たちがしっかりと約束を守ってくれていることで、サラダ村にレタス村、そしてバンパイア村とフェアリー村を大きな柵で囲っている。元々サラダ村だけを見ると、西側は川に東側はまばらの林に守られている。南側は私が最初に柵で防御してて、北側は川に沿って街道が整備された。そしてサラダ村をぐるりと柵が囲っている」

 地面に木の枝で簡単な図を描きながら私が説明をする。

「で、北道の整備された道の終着点には川を渡れる橋があって、橋を渡ればレタス村がある。そして、整備された北道の途中にはバンパイア村とフェアリー村がある。」

 川に橋を描いて橋の隣に小さな円を、北道の図の間にもっと小さな円を描きながら私は説明を続けた。

「今はここまでが柵で囲われたってことでしょ?」

 自分だって話しについていけてると言わんばかりにバジルちゃんが得意気に言う。

「そう。そしてサラダ村とレタス村の間に防衛拠点を作ろうと考えているんだけど、そこの拠点は人民掌握軍が支配するエリアへ攻撃を仕掛ける時の軍事拠点にもなるってわけ」

 そう言って私が指し示したのは、私が次に攻撃を仕掛けるべきだと考える人民掌握軍が支配している地域だ。

 北道を真っすぐ進んだ先にある。

 正直、この先はほぼ全体が人民掌握軍に支配されている。その一部を解放して私たちの地域として楔にすることで、その周囲の人民掌握軍の支配力を弱体化させるのが私の狙い。

「なるほどね。ここを楔としてこの周囲一帯の掌握軍の土地を削ろうってわけね?」

 クレソンちゃんが私の考えをそのまま的確に理解してくれた。

 相変わらずのほほんとした言い方ではない。

「そう! その通り。そのためにも、この防衛拠点はかなり強固なものにして、攻め込む際には村人たちにも兵力として協力してもらう必要がある。もちろん、必要な食糧の保管庫やゆっくり休める場所も必要になるってわけ」

「分かったわ。私とパセリちゃんは村人たちに掌握軍が支配する土地を一緒に攻めてくれるように説得しましょ。他のみんなは防衛拠点の作成をしてちょうだい」

 にこりと微笑みながらクレソンちゃんはテキパキと指示をだした。

 いつもなら文句を言いそうなバジルちゃんやパクチー君も、文句言わずに頷いて従った。

 こうして私たちは、人民掌握軍に支配された地域を解放すべく行動を開始した。

 ●

 私の当初の目標通り今サラダ村の住人もレタス村の住人もサラダ村に住むようになった。元サラダ村は完全に居住区となった。

 そして元レタス村が産業区だ。農作物を作ったり、鶏や牛、豚などを飼育している。

 つまり私たちはこのまま元サラダ村で、重役たちだけを集めればいい。

「さっきの話しだけど、楔を打ち込んだら東側の林方面を落とした方が全体の戦略図的にいいと思うわ~」

 のほほんとした話し方に戻ったクレソンちゃんが、今後の軍事展開について語る。

 私個人としては、楔を打ち付けたまま真っすぐ侵攻した方が大きく土地を削れる気がするけど、現実はそう甘くないらしい。

「確かに楔を深く打ち付けて、三角形の形のまま侵攻すれば大きく土地を削れることは間違いないわ~」

 そう。単純だけど三角形の形を保って、侵攻した分底辺を広くすれば侵攻した相手の土地の中に打ち込んだ楔の三角形が少しずつ大きくなるわけだから、その分相手の土地を削れると思うんだよね。

「でもね、その分守るべき場所も大きくなって守りにくくなっちゃうのよ~。それよりも楔はある程度の大きさに絞っておいてその楔と後方の拠点から兵を派遣して別の拠点へ攻撃を仕掛けて、そこの拠点も自分達の土地とした方が守るべき対象が少なくて済むわ~」

「最後にその拠点同士を繋げばいいってこと?」

「そうそう~。というよりも、ある程度拠点が複数できたら自然と前線が下がるから楔の三角形を大きくするよりも時間も兵力も少なくて済むと思うんだ~」

 なるほどねー。拠点を複数作る方がいいのか。

「もちろん、拠点を作りやすくするためにもある程度の楔は必要だよ~。あ、みんな集まってるわ~」

 クレソンちゃんが前方を指さす。

 村長の他、各村の重鎮たちが集まっていた。

「えー。村の強化を協力してくれてありがとうございます。これで私たちは運命共同体となりました。そこで皆さんに提案があります」

 私がここまで言うと集まったみんなに緊張が走った。

「それはつまり……」

 レタス村の村長が以前とは違って緊張したように発言する。

「掌握軍によって支配された地域の解放を手伝うということですか?」

「話しが早くて助かりますぅ~」

 緊張したように言うレタス村の村長に対してクレソンちゃんが微笑みながら答える。

「い、いやちょっと待て」

 緊張しつつも威厳を保つように話しかけるのはバンパイア村の村長だ。

「我々は確かにこの村を一緒に守ることには同意した。それにも協力してきた。それはこれからも変わらないだろう。しかし、こちらから攻めるとなると我々の村の住人が被害を受けることになる」

「あらあらあら~?」

 自分たちの村の住人だけは被害を与えたくないと言わんばかりのバンパイア村の村長の言葉に、クレソンちゃんが異を唱えた。

笑顔を作っているように見えるけど目が笑ってないところを見ると怒ってるんだろうね。

「私たちは命がけで皆さんの村を守っただけでなく、掌握軍に支配されているこの世界を解放しようとしているのに、皆さんはご自身や自身の村の住人の安全についてはとやかく言うくせに安全に過ごせるための協力はしないと言うのですかぁ~?」

 笑いながら言ってるけど目が笑ってないよクレソンちゃん。

 そう言われては他の村の重鎮たちも断れない。

 結局、なるべく被害を出さないという前提条件のもと、村人を兵隊としてこの世界から人民掌握軍を無くすことに同意した。

 この決定により、レタス村、サラダ村、バンパイア村、フェアリー村は人民掌握軍と完全に敵対することになっていくのだった。

 ●

 これからの目的は防衛拠点の作成と兵士の育成だった。

 私は兵士の育成なんてしたことないから、兵士の育成はパクチー君とルッコラ君とバジルちゃんに任せることにした。

 私とクレソンちゃんは防衛拠点の作成を指示した。

「さっきのパセリちゃんの話しだと、ここの拠点を強固にしたいってことだったけど、それも後回しにしましょ」

 クレソンちゃんが私に言う。

 どういうことかしら?

「ここの拠点って既に柵の中でしょ? もしも掌握軍が私たちの土地を狙ってくるとしたら、ここの拠点を狙うかしら?」

 狙わないの? だって拠点だよ?

「戦略ってものを分かってないわね。拠点はあくまでも拠点。そこを潰さなくてもその村を潰せるなら拠点は狙わないわよ。拠点攻撃には大きな戦力が必要だしね」

「あ、そっか。拠点をスルーして町の中枢を狙えばいいのか」

 なるほどね。確かにわざわざ拠点に足を運ぶ必要はないわね。

「そゆこと。もちろん、サラダ村を狙うにしろレタス村を狙うにしろ、この拠点に戦力があるということは背後を討たれる心配があるけど、土地を奪い返すのが目的ならばこの拠点は放置でいいわけ。そもそも掌握軍にとってレタス村もサラダ村も不毛な土地なわけだし、大きな戦力を伴う戦闘をしてまで獲得しようと思わないわ」

 人差し指を立てながらクレソンちゃんが説明してくれる。

「だからサラダ村とレタス村の間に作るのは防衛拠点じゃなくて輸送拠点にするの。武器や食糧、人員を輸送する拠点。傷ついた仲間を治療したりもできる最前線の場所にしとく。ただ、私たちの土地は拡大することを見越すから、ベッドとかも全部簡易的なものでいいわ。最終的には備蓄庫として活用するから」

 クレソンちゃんがテキパキと言う。

 物凄く頭がいい。正直怖いくらいだ。

「でも、防衛拠点は必要でしょ?」

 どこに作るつもりかしら?

「防衛じゃなくてただの軍事拠点を最前線に作りましょう。その方が手っ取り早いわ」

 クレソンちゃんが言いたいのは、つまり私たちの領土と掌握軍の領土の境界線である最前線の防御を強固にして、敵から攻めにくくすると同時に物資や人員を集める拠点を作ると言うわけか。

 もはや拠点というより砦だね。

「各町から輸送拠点に人員や物資を定期的に輸送。そこから最前線の軍事拠点へ人員と物資を輸送する流れよ」

 クレソンちゃんの言う通り、最前線の砦化が始まった。

 と言っても、掌握軍と衝突しているわけではないから、砦を作ることは容易だった。

 まずはぐるりと全ての村を囲っている柵の内、一番掌握軍の土地に近い箇所の柵を強化する。

 具体的には何十にも柵を増やすということ。

 更に物資を保管しておく保管庫の作成と水源の確保、田畑の作成をする。

「水は隣の川から簡単に確保できるね」

 川の水を汲みながらクレソンちゃんに私が言う。

 保管庫や田畑も村のみんなが手伝ってくれるから楽だしね。

 ここの拠点が終わったら、後方の輸送拠点の作成に入る予定だけど、輸送拠点を作っている間に私たちは掌握軍に攻め込む予定だった。

「後は宿舎ね。みんなが休む場所と怪我を治療する場所が必要よ」

 クレソンちゃんが次々に必要なものを指示する。

 結局前線の砦は西側が川岸まで広がってしまい、そこから後方へとやや縦長の形となった。

「念のために拠点をぐるりと柵で囲いましょ」

 クレソンちゃんは油断しないんだなぁー。

 あ、そうだ。大事なこともあったね。

「大きめの櫓を囲ってる柵にいくつか作りたいんだ」

「見張るために?」

 私が言うと、すかさずクレソンちゃんが聞いてきた。

 見張りという概念がなかったのにすぐに理解してるのはさすがだね。

「見張りもそうなんだけど、攻撃の支援にもなるでしょ?掌握軍へ攻める時に弓矢で攻撃してもらうの」

 クレソンちゃんは、なるほど。っとにやついた。

 そして何を思いついたのか意地悪っぽい笑みも浮かべた。

「この拠点、かなり強くなるわよ」

 そう言うとクレソンちゃんは、妖精魔法を使って田畑の食物の成長を促し、更に砦の中に小さな林を作り出した。

 砦は北道の終着点に作ってる。つまり、レタス村へ渡る橋の場所だ。

 クレソンちゃんは、隣を流れている川を削って、砦の前面にまで川を作ってしまったのだ。

 もちろん小さな川だけど、その川を砦に引き込んで池を作ってそこを水の貯蔵庫にしてしまった。

 もう凄すぎてよくわかんないレベル。

 その上、作った川の向こう側に溝を作っていた。

「柵、深い穴、川の三重の防壁よ」

 えっへんと胸を張ってるけど、うん。凄いよ。

「こっちから攻めるには拠点の横か後方から出陣することになるけどね」

 唯一のデメリットをクレソンちゃんが言うけど、そんなの問題ないよ。

 むしろ守るべき箇所が東側と南側だけになったのは大きいよ。

「南方と東方に多めの櫓を作ってね」

 クレソンちゃんが村人の大工にそう指示を出す。

「川側の櫓は他の箇所より高くして?」

 私も指示を出す。

 高い方が遠くまで矢を飛ばせるからね。

 こうして私とクレソンちゃん指示の元、軍事拠点が徐々に作成されつつあった。

 これが完成したらいよいよ掌握軍と本格的に戦争が始まる――

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