「ねぇ聞いてる?」
「あ。あぁ……」
「ごめん。何だっけ?」
「さっきからずっと上の空だね」
白石の口からため息が漏れる。
それからもなぜか、俺と白石は昼飯だけは一緒にご飯を食べている。
白石は昼飯の時間になると、義務的に俺の机の近くに来る。
俺はこの関係がなんだか気持ち悪い居心地の悪さを感じていた。
周りからは、羨む目で見られるが、決してそんなんじゃない。
「いや。少しは期待してたのかもな……」
思わず本音が零れた。
「え?」
「あ。いや。何でもない」
「私の話しを聞いていない原因は、何か考え事をしているから?」
箸を置いてむすっとする。
一瞬、白石がコンになった気がした。
同時にクラス中の空気が変わった気もして、辺りを見渡す。
女子が口元に手を当てて、男子が間抜けにも口をポカンと開けている。
白石に視線を戻すと、いつもの白石に戻っていた。
クラスの異変からも分かる。
さっきのはコンだった。
「白石さ……もしかして無理してる?」
「してない」
即答だった。
「それよりも、私の話しは聞いてくれるの? くれないの?」
なんだ? 白石ってこんな表情するのか? コンでもないし……
小悪魔的な笑みを浮かべている。
「あ。あぁ。聞くよ聞く。なんだっけ?」
●
白石の話しは単純だった。
放課後に暇になることが多く、趣味探しを付き合ってほしいというものだった。
それよりも目下の問題はこっちの方だ。
クラス中のみんなが、俺の席にやって来る……
「すげぇーなお前!」
「ねぇ朝倉くん! どうやったらあんな表情を引き出せるの?」
「朝倉! 頼む白石の連絡先を教えてくれ!」
俺は目立ちたくないし、ひっそりと学園生活を送りたいとずっと思っていたのに。
白石が転校してきてから、全てが変わり始めていた。
「朝倉くん。ちょっと来て」
俺がクラスメイトに囲まれているというのに、有無を言わさず、尚且つ他の者はついてくるなと言わんばかりに白石が言う。
「な。なんだよ?」
「さっきの趣味の話しなんだけど」
あぁ。その話しか。
別に今じゃなくてもよくないか?
「私ね! 不思議な体験とかを聞いたりするの好きだし、オカルト研究ってわけじゃないけど、そういうのを聞いて回ってみたいなと思ってるんだけどどうかな?」
目をキラキラ輝かせている。
「い……いいんじゃないか?」
なんにせよ。
これで白石の趣味探しも解決。
白石と俺との関係も終わり――
そう考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。
『俺は白石との関係を終わりにしたくないのか?』
「じゃあ。これからもよろしくね!」
にこりと微笑んで手を差し伸べてくる。
「は?」
「私1人で不思議を探すのは大変でしょ?」
大変でしょ? って確かに大変だろうよ。
でも俺も一緒に?
……まぁいいか。
俺はどんな形でもいいから、白石と一緒に居たいようだ……

