君だけが俺をユイと呼ぶ~第9話 白石の変化~

君だけが俺をユイと呼ぶ

「ねぇ聞いてる?」

「あ。あぁ……」
「ごめん。何だっけ?」

「さっきからずっと上の空だね」

 白石の口からため息が漏れる。

 それからもなぜか、俺と白石は昼飯だけは一緒にご飯を食べている。

 白石は昼飯の時間になると、義務的に俺の机の近くに来る。

 俺はこの関係がなんだか気持ち悪い居心地の悪さを感じていた。

 周りからは、羨む目で見られるが、決してそんなんじゃない。

「いや。少しは期待してたのかもな……」

 思わず本音が零れた。

「え?」

「あ。いや。何でもない」

「私の話しを聞いていない原因は、何か考え事をしているから?」

 箸を置いてむすっとする。

 一瞬、白石がコンになった気がした。

 同時にクラス中の空気が変わった気もして、辺りを見渡す。

 女子が口元に手を当てて、男子が間抜けにも口をポカンと開けている。

 白石に視線を戻すと、いつもの白石に戻っていた。

 クラスの異変からも分かる。

 さっきのはコンだった。

「白石さ……もしかして無理してる?」

「してない」

 即答だった。

「それよりも、私の話しは聞いてくれるの? くれないの?」

 なんだ? 白石ってこんな表情するのか? コンでもないし……

 小悪魔的な笑みを浮かべている。

「あ。あぁ。聞くよ聞く。なんだっけ?」

 ●

 白石の話しは単純だった。

 放課後に暇になることが多く、趣味探しを付き合ってほしいというものだった。

 それよりも目下の問題はこっちの方だ。

 クラス中のみんなが、俺の席にやって来る……

「すげぇーなお前!」

「ねぇ朝倉くん! どうやったらあんな表情を引き出せるの?」

「朝倉! 頼む白石の連絡先を教えてくれ!」

 俺は目立ちたくないし、ひっそりと学園生活を送りたいとずっと思っていたのに。

 白石が転校してきてから、全てが変わり始めていた。

「朝倉くん。ちょっと来て」

 俺がクラスメイトに囲まれているというのに、有無を言わさず、尚且つ他の者はついてくるなと言わんばかりに白石が言う。

「な。なんだよ?」

「さっきの趣味の話しなんだけど」

 あぁ。その話しか。
 別に今じゃなくてもよくないか?

「私ね! 不思議な体験とかを聞いたりするの好きだし、オカルト研究ってわけじゃないけど、そういうのを聞いて回ってみたいなと思ってるんだけどどうかな?」

 目をキラキラ輝かせている。

「い……いいんじゃないか?」

 なんにせよ。

 これで白石の趣味探しも解決。

 白石と俺との関係も終わり――

 そう考えると、胸が締め付けられるように痛んだ。

『俺は白石との関係を終わりにしたくないのか?』

「じゃあ。これからもよろしくね!」

 にこりと微笑んで手を差し伸べてくる。

「は?」

「私1人で不思議を探すのは大変でしょ?」

 大変でしょ? って確かに大変だろうよ。
 でも俺も一緒に?

 ……まぁいいか。

 俺はどんな形でもいいから、白石と一緒に居たいようだ……

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