勘違いが勝手に進むこともあることを知った俺は、佐々木との距離を取ることにした。
周りから妙な勘違いをされたくないのもそうだし、佐々木本人からあらぬ疑いを持たれるのも嫌だったからだ。
ここんところ色々あったせいで、のんびりとゲームをする時間がなかったが、久しぶりにゲームをする時間があった。
特に意識をしたわけではない。
いや。
多少は意識した。
俺が小学生くらいの頃にやっていたゲームを手に取る。
『もしかしたら、このゲームにもユイがいるかもしれないな……』
そんな期待……
ゲームは王道のRPGゲーム。
そのどこにもユイの名前はなかった。
「バカだな……」
俺はゲームのコントローラーを放り投げ、気絶したかのようにベッドに倒れ込んだ。
俺はずっと、ユイの面影を探している。
過去から逃げているくせに……
●
俺がずっとユイの面影を探していることを改めて自覚してからというもの、あらゆることが手に付かなくなった。
宿題を忘れ、教科書を忘れ、弁当を忘れ……
それれらを意に介さない程、心がどこかへ行ってしまっていた。
おかげで放課後に、誰も使わなくなった美術準備室の掃除を言いつけられてしまった。
「くっそー。どうしちまったんだよ俺は」
重い椅子を動かしながら悪態をつく。
どーせ誰も聞いていないんだから、この際ぶちまけてもいっか。
「何考えてるかわかんねーよ!」
「誰が?」
返事がした。
誰もいないと思っていたのに。
「し……白石?」
何でここに?
「や。たまたまキミの声が聞こえてね」
一応は声をかけたと白石は言うが、考え事をしていた俺には聞こえない。
なんのやる気も起きていない俺は気づけない。
「あ。あぁ……別に……独り言話してただけだし……」
「うん……そっか……」
大丈夫だよな?
俺、さっきの言葉以外口に出してないよな?
「……」
なんだ? 何で黙ってる?
というか。何でここに?
廊下を通っていたら、たまたま俺の声が聞こえたからか?
「手伝おっか?」
「え?」
「キミ1人でこの広い教室の掃除をするのは大変でしょ?」
そりゃ。手伝ってくれるのは嬉しいが……
でもいいのか?
俺とは距離を取りたいんじゃないのか?
「さっさと終わらせちゃお」
ホウキを手に取り、教室の隅へ移動する。
「あ。あぁ……」
俺は無意識に反対の隅の掃除を始めた。
●
作業は黙々と進められた。
俺との距離を取りたいはずの白石が、わざわざ掃除を手伝ってくれている。
この異常事態に理解がおいつかない。
これは、佐々木に
掃除をしながらも白石をチラリと盗み見る。
何も変わったところはない……
「ん?」
視線に気づいた白石がこっちを見る。
慌てて目を逸らす。
やましい気持ちなんてないはずなのに、心臓が高鳴る。
「なぁーにぃー? なんかついてるー?」
キョロキョロと自分の制服を見る。
「何にもついてないじゃーん」
もぉー。と怒ってくるが、別に制服に何かがついているわけではないし、もちろん下心があったわけでもない。
「で? さっきの話しは秘密なわけ?」
「さっき?」
「何考えてるか分かんないって言ってたじゃん」
もちろん白石のことだけどな。
「ゲームの話しだよ」
「ふーん? どんなゲームしてるの?」
「まぁ。色々?」
「前のキミはよくゲームをしていた印象だけど、少し前には全然ゲームをしなくなってたよね?」
「まぁ。色々忙しかったしな」
「……」
白石は暫く俺のことを見た後、何も言わずに掃除を再開した。
一体何なんだ?
本当に白石はよく分からない。
●
「終わり」
掃除が終わると、白石はそれだけ言って帰って行ってしまった。
帰り際に言われた言葉が胸に残る。
「私もキミのことが分からないよ……」
「いや。俺も分からないんだけど?」
「なにが?」
ギクリとした。
出て行った白石が戻ってきたのかと思ったからだ。
声の主は佐々木だった。
俺は学校では悪態もつけないようだ――
