君だけが俺をユイと呼ぶ~第35話 間違いだった好き~

君だけが俺をユイと呼ぶ

 俺に結婚を迫ってきたのは吉岡だ。
 無理やり頷かせたのも。

 それを同意したとか約束したとか言ってやがる……

 やはり吉岡は自分勝手で、絶対に俺が好きになるタイプではない!

 そうはっきりと理解すると、俺はベッドから起き上がった。

「はるくん。また私から逃げるんだね」
「言っておくが。俺は絶対に吉岡のことは好きにならないぞ?」
「それなら私は、何が何でも私のことを好きにさせてみせるわ。もちろんズルいやり方もね」

 ベッドに腰掛ける吉岡を無視して俺は、保健室から出て行った。

「あ」
 そこには、白石が居た。

「ずっと待ってたのか?」
「心配……だったから……」

 白石。
 震えてる?

「この前」
「おー。いたいたー」

 白石が何か言おうとすると、遠くから声がした。

 落合と佐々木と塩田だ。

「いきなり倒れたって聞いてびっくりしたぞー」
 落合が肩を組んでくる。

「大丈夫?」
 塩田が本気で心配している。
「この様子なら平気でしょ」
 俺が答える前に佐々木が答えた。
「何で佐々木が答えるんだよ」
 みんなが爆笑した。

 ふと。俺は決意した。

 特に理由があるわけではない。

 成功するなんて思わない。

 けど俺は、今の気持ちをはっきりと佐々木に伝えようと思った。

 ●

「で? 改まって話しって何?」

 その日の夜。
 俺は佐々木を呼び出した。

 佐々木は、さむ。とか言って体をさすっている。

「もうすっかり冬だな」
「タイムカプセル早く埋めないとねー」
「すっげー。星がきれーだ」
「冬になると星がよく見えるよね。ほら、あそこの星とあの星とあれで、冬の大三角」
「夏は知ってたけど冬もあるんだ?」
「だねー」

 少し前なら秋の虫が鳴いていたかもしれない。

 しばらくの沈黙の後、俺は口を開いた。

「俺はたぶん……佐々木のことが好きだと思ってた……」
「だろうね」
「けど……」
 真っすぐに佐々木の目を見る。
「よく分からないでいる。迷いがあるような」

「そりゃあそうでしょー」

 俺が真剣に言った言葉に対して、佐々木は意外な言葉を俺にかけた。

「朝倉の中にはずっとかおるちゃんが居るもん」

「白石か……」

「そ! んで、叶いそうにないから。現実逃避したいから、近しい私のことを好きって勘違いしてるだけ。ま。私も好きな人いるからどっちにしろフラれてたけどね」
「なんだと!」

 俺と白石は最後は笑い合いながら別れた。

 フラれたのにスッキリして、自分の気持ちを再確認できた。

 俺は白石のことが気になっている。

 けど、今の俺は白石にふさわしくない。

 まずは自分の過去を受け入れる。過去をしっかりと知る。
 しげのことも……

「一度白石と話さないといけないな。吉岡とも……」

 ●

「白石」

 翌朝、早速俺は白石に声をかけた。

「なに?」
「相変わらずの白石モードだな。お前が何でキャラを使い分けるのか知らないけど、俺の前では普通でいろよ」
「普通? 普通ってなに?」
「え? いや。ちょっと待て。俺はただ」
「ただって何? 自分の普通を押し付けないでくれない?」
「私は今私のままでいるのに、朝倉くんはそれを否定するんだ?」
「いや。否定じゃなくて」
「私のこと何も知らないくせに簡単なこと言わないでよ!」

 終わった。
 俺は完全に白石に嫌われてしまった。

「一体どうしちまったんだ朝倉?」
「どうって?」
「突然わけのわからないことを白石に言うから。そりゃ白石も戸惑うんじゃねーか?」
 ぽん。と落合に肩を叩かれるが、わけのわからないことじゃないんだ。
 本当の白石は。
 本当のコンは……

 俺しか知らない?

 思わず白石を遠目に見た。

 あの日、白石が転入して来た日、俺は人目で白石がつまらなそうにしていることに気づけた。

 それはきっと俺にしか分からないものなんだ。

 白石は、それを大切にしようとしてくれている?

 きっとその理由が俺と白石の過去であり、あの草原なんだ……

 俺はもう逃げない!

 ●

 私は。
 朝倉くんが好きだ。

 朝倉くんはきっと白石さんが好きだ。

 それでも諦めることはできない。

 朝倉くん。
 今年のクリスマスを一緒に過ごしてくれますか?……

「あれ? 塩田じゃん」
「落合くん……」
 正直苦手。
 私の心を見透かされているような気がして。

 悪気があるわけじゃないのは分かる。
 でも、たまにデリカシーのないことを言う。

「何してんの?」
「ちょっと編み物の勉強をしようかなと」
「へー? 塩田が編み物? できるの?」
 ほら。こういうところ。

 きっと落合くんは気づいている。
 私の気持ちにも、私が何で編み物をしようとしているのかも。

「んじゃあ、俺にマフラーでも編んでくれよ」
 こういうことを平気で言えるのが羨ましい。

「気が向いたらね」
 これで心置きなくマフラーが編める。

 何だかんだ、落合くんはいいパスを出してくれる。

 クリスマスに絶対告白する!

タイトルとURLをコピーしました